Archive | 11月 20th, 2016

2016 – トウキョウ、昼

Posted on 20 11月 2016 by

お昼の中華料理店。この店に来たのは2回目。20年くらい前のロック少年みたいな、真っ赤なTシャツを着た日本語のおぼつかない青年が1人で店番をしてる。

昼の賑やかなテレビ番組がかかっていて、店内はわりと広いし清潔だけど、薄暗くて殺風景で寂れた雰囲気。料理は結構美味しいし暖房もしっかり効いてて暖かいけれど、寂れてる。客は時々静かに出たり入ったりして常に2〜3人。テレビショッピングのガサガサした甲高い声と、1人じゃない客達の小さなお喋りと、カチカチサラサラと茶碗や皿に箸の当たる音が聞こえる。

テーブルに置かれてる水差しから水をコップに注ぐ。新鮮な水。
広さと薄暗さと静けさと手書きの張り紙と物静かで微笑みをうかべた金髪のロック青年と清潔さが混在しながら密度が低くて、ちょっと何か、異世界に来たみたいな不思議な雰囲気。

ここから厨房が見える。水色のタイルと、ステンレスの調理台。酒とか何か調味料が並んでいるけれど、人の気配はない。脂ぎってはないし、埃をかぶってる感じもない。こざっぱりした普通の、ちょっと休憩中みたいなレストランの厨房。だけど今はランチタイムの営業中で、なのに調理人の気配がなくて、時々、ここから見えない奥の方から、ジージー、カシャカシャとか、飛行機のサイン音みたいなポーンとか、レストランとは場違いな小さな機械音だけが聞こえてくる。

注文を取ったあと、青年は黙ってカウンターの向こうのデシャップらしき場所に引っ込む。厨房に声をかける様子はない。しばらく経つとインターフォン越しのようなザラザラした音の「……△※◆?!」と何語かわからない女性の怒鳴り声が聞こえてきて、青年が料理を持って出てくる。ちゃんと温かくて出来たて。美味しい。

1人の客が食事を終える。デシャップに入って姿の見えなかった青年が、するっと出てきてレジに向かう。支払いを済ませた客が出てゆき、青年は見えない場所に戻る。

しばらく時間が経つ。

姿の見えなかった青年が、するっと出てきて店の入口に向かう。と、新しい客が入る。青年は周囲のテーブルをゆらゆらと拭きながら、客の注文が決まるのを待つ。

客が声をかける必要はない。必要な時に、必要な場所で、顔を上げるとそこに青年が立って待っている。

薄暗くて殺風景な店と、このとてもタイミングがよく気の利いた物静かな青年のことを考える。何となく、昔の村上龍の小説を思い出す。外に出たら昼間の東京の古いビジネス街で、今時は珍しい色ガラスの嵌った喫茶店や中華料理店がたくさんあって、時々街宣車が通って、きっと、ちょっと夢の中のような、夢から覚めたばかりのような、現実の時間と空間から切り離されてしまったような気分がするんだろう。

それから厨房の奥の機械のことを考える。店全体が実は大きな機械で、いま自分は機械の腑の中で食事をしてるのかもしれない。青年が注文を聞いてるように見えるのはそう見えてるだけで、客の小さな囁き声も、テーブルの上のメニューを辿る視線も、実は全てモニターされていて、客が頭の中で考えてる注文を先取りされているのかもしれない。宇宙ステーションでひとり暮らしながら仕事をする古いビデオゲームと、また別の物語の「お前、そりゃタリスマンってやつさ」という台詞を何故か思い出す。

先ほど入った客の注文を聞いた青年が、テーブルの横を通ってゆく。
デシャップに向かって歩きながら俯く金髪の覗き込む手もとを見ると、町の中華料理店には似合わないクリーム色のPOS端末があった。

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譜面は演奏しないとね

Posted on 20 11月 2016 by

黙読はしたことない 声をださずに読んでいるだけ
黙考もしたことない 声をださずに考えているだけ
つまり 二十四時間日常生活脳内ミュージカル状態

note-of-what-i-says

話し言葉をきちんと記録したいのなら五線譜がいい
口伝は リズム テンポ ハーモニーが大切だから
あらゆる符号を駆使 絶対音感ある人うらやましい

ボーカロイドメイコで 日記を書こうとしたけれど
気分と声とが ぴったりこないと のらないからね
譜面があれば 好みの声で 指揮者冥利の脳内演奏

the-world-is-a-one-story-house

書き留めたいのは 知識じゃなくて 気持ちだから
いつ どこにでも もっていけるモノ じゃなくて
いま ここでしか 巡りあえないコト なんだから

時を移ろいゆく音楽のように 寄せては返す感情を
天日干ししたり 塩漬けにしたり 煮詰めたりして
いつどこででも取り出せるようにしては いけない

譜面は変わらないけれど演奏は変わる 指揮者次第

                      (仕掛)

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