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Note of the note ―ノートの調べ p.7 金子みすゞさん 二冊の抜書き帖

Posted on 02 9月 2018 by

はじめに

「Note of the note -ノートの調べ」 と題した不定期シリーズ。
このシリーズでは、著名人のノート、手稿、手帳、日記などを紹介し、そこに込められた作法と思いを検証していく。

第7回目は、金子みすゞさんの、二冊の抜書き帖を紹介する。

出典

別冊太陽 日本のこころ122号
生誕100年記念 金子みすゞ 幻の童謡詩人の世界へ 監修 矢崎節夫
2003年4月25日初版第一刷

金子みすゞさんのこと

(母ミチが日頃からみすゞに言っていたという言葉)
「ひとつのことを見たら、多くのことを考えなさい。雲を見るでしょう。そうしたら、白い雲、綿のような雲、ようなをとって綿雲、それにスワン雲……というふうにね」(出典書 p.104)

(瀬戸崎尋常小学校四年生時の担任ヒデ先生の言葉)
「ふとテル(みすゞ)のノートに目をやると、特別手を上げたりしないテルのノートに、あれも調べてある、これも書いてある、ということがあって驚かされた―」(出典書 p.106)

(大正五年 大津高等女学院時代、学校まで40分の道のりを一人で歩いて通っていたみすゞが、いとこに語った言葉)
「皆と行くのは楽しいけれど、たまには誰かのいやな話しを聞かなならんしな……。一人の方が安気でええ」

三冊の童謡集

ただ一枚のみ残ったみすゞの着物と、遺稿集となった三冊の童謡集。
右より「美しい町」「空のかみさま」「さみしい王女」。

博文館のポケットダイアリーの紙質見本に書き留められたもので、弟の正祐に託された。(出典書pp102-103)


「こだまでせうか」


「巻末手記」
三冊の童謡集の最終巻「さみしい王女」につづられた巻末手記

二冊の抜書帖

これから紹介する二冊の抜書帖は、どちらも彼女の詩作制限期に編まれたものである。

始めの「琅玕集(ろうかんしゅう)」は、雑誌への詩の投稿を差し控えていた、大正14年から翌15年にかけてまとめられた。

次の「南京玉」は夫に全ての詩作を禁じられていた、昭和4年頃から翌5年2月まで書かれた。

私たちも、文章や言葉の抜書は、日常的に行っているが、どのような時、どのような感情や、意図に突き動かされて、抜書をするのだろうか?

資料を読みながら、私はずっとそのことを考えていた。

琅玕集

1925年版博文館ポケットダイアリー紙質見本。天地を逆にして、右開きで使用。

大正13年。敬愛する西條八十が、渡仏により雑誌「童謡」の選者を離れている間の、大正14年から翌15年にかけて作品の投稿を控え、「赤い鳥」「コドモノクニ」「婦人倶楽部」をはじめとした二十三種もの雑誌などから気に入った詩や童謡を自ら選び出し、一冊の小曲集を作ることに没頭した―(出典書より)

目次

北原白秋、堀口大學、野口雨情、室生犀星、もちろん西條八十など、101人、178編を記す。(出典書より)

冒頭

南京玉

13cm×8.7cmの小さな手帳。
昭和4年頃から翌5年2月9日までの間、愛娘ふさえ(三歳)の言葉のひとつひとつを書きためた。(出典書より)

冒頭

言葉には全て番号が付されている。形式は、
前書、一~二三〇、「お正月」、一~六四、「二月」、六五~八九、九十は番号のみ。一~二五、二月九日のみすゞの言葉 となっている。
(出典書より)

本文

この時期、みすゞは夫に全ての詩作を禁じられていた。

この二月、夫と離婚が成立。娘のふさこを、みすゞが引き取ることで話をまとめ、母の元へ身を寄せるが、ほどなく夫側が心変わりし、3月10日に娘を連れに行く、との手紙を受け取る。

その、昭和5年3月10日未明。睡眠薬にて自死。(享年26)

空白の九十

みすゞは、娘を母の手元で育てることを強く望む遺書を残し、結果、その通りとなった。(出典書より)

おわりに

あたりまえのことを、いろんなふうにみてみたら、ありのままがみえてくる。そうすると、あたりまえはあたりまえじゃなくて、ありのままがあたりまえになる。あたりまえのありのまま。ありのままのあたりまえ。

金子みすゞさんは、こんな抽象的なものは書きませんが、私は金子みすゞさんの「詩」を読んでいると、「ありのまま」を「あたりまえ」に感じてしまう人だったのだろうなと、思います。

「いろんなふうにみる」というのは技術で、科学的方法はその一助となるものですが、「詩人」であるということには、「あたりまえ」に汚染されない強い無垢さが備わっているように感じます。

色即是空。空即是色では、「命味」に欠けますが、この世界に命を燃やす全ての存在にたいする共鳴を歌った人。そんな感じがしています。

抜書しておきたいノートです。

以上

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