Archive | 4月, 2020

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『美しい痕跡』手書きへの賛歌 読書メモ

Posted on 27 4月 2020 by

美しい痕跡 手書きへの賛歌 フランチェスカ・ビアゼットン著 みすず書房

Francesca Biasetton (1961-)
 ジェノバ生まれのカリグラファー、イラストレーター。

本書の第10章(p.92-)からはカリグラフィーに関する内容。なのでこの記事では第9章までの内容についてのメモ。

手で書かれたものは動いた跡であり、手が筆記具を介して媒体に痕跡を残す。何世紀もの間、人間はさまざまな道具や文字、媒体を使い、書くことで考えや知識を記録してきた。
 私たちはいま、速さという誘惑に身を任せ、質や唯一性、物語といったものを犠牲にしている。

同書 裏表紙

私は、書いた「距離」が分かる筆記具が欲しいと、常々思っている。痕跡は「文字の連なりとしての意味」以外の「意味」をもつ。距離もその一つの要素だろう。
 p.18での「サインは手書きだからうれしい」という指摘は腑に落ちる。それは質であり唯一性であり、物語という「体験」の証となる。
 「質や唯一性、物語」とは、つまりは「個人の存在」ということだ。効率重視は多様性を許容し難い。

紙は私たちの思考のさすらいを語り、私たちはノートやメモ帳を前や後ろに繰り、書き留めたことを探す。そして紙たちはカサカサと音を立て、馴染んでいく……

同書 pp.8-10
本書の抜書及び感想メモのページ

手書きが非常に繊細な「運動」であるということは重要だ。それは書くことでしか体験し得ないもので、ディスプレイをにらみながらキーボードを叩くという運動とは全く別の技能だ。そして、その運動のフィールドの広さ(狭さ)も、両者では、まるで異なる。それは腕や指の使い方のみならず、認識し判断を迫られる空間そのものが異質だということだ。

「書くこと」は文字を書くという以外に、模倣する、空間を必要とする、アイデンティティを明らかにするということでもある。(…)そして紙に向かうこと、紙の一部になるということでもある。

同書 p.14

文字を手で書くとき、私たちはひとつの空間、つまり紙の空間を構造化しようとし(…)

同書 p.8

どのようにノートを書くか? それはどのように「考える」かと同じだ。フォーマットに則って考えること。考えによってフォーマットを決定すること。いずれの場合も、それは身体内部をかけめぐる「思考」の、おそらくはとびきり不正確な「手探りよりはマシ」という程度の地図であり、巨大な洞窟へたった一本の蝋燭を灯しただけで進んでいくようなものだ。

字を書くとは具体性と秩序とを与えるささやかな行為なのだ

同書 pp27-28

そのとき探索しているのは、自らの身体内だ。

手書きの文字は紛れもなく身体性を前提とし、そして内包している。つまり、文字自身が書く身振りの視覚的な形跡なのだ。

同書 p.8

「文字」を書こうとすること。書いていること。
「文章」を書こうとすること。書いていること。
「考えていること」を書くことと、何かを「書き写す」こと。
これらは全て「別の体験」を感覚させる。だが重要なのはその「違い」ではなくむしろ「共通性」だ。

(…)線や図を書くというのは広い意味では紙の上に思考を移すということである

本書 p67 (リッカルド・ファルチネッリ『ヴィジュアル・デザインのポータブルクリテッィク』p.272)

身体機能や肉体そのもの退化や鈍化、劣化といった影響は別として、自分が充実した時間を過ごせているか(過ごしたか)、自分が豊かな体験をしている(した)と感じられるか、こそが重要なのだと思う。手書きノートを書いた後で、私はそれらをはっきりと実感できる。確かな何かが身体に残った、と感じることができる。ノートを書くことはインプットで、キーボードを叩くことはアウトプットだ。

別の本の読書メモ

手で書く時間は考える時間だ。いま、これを書きながら、考える時間は緩やかに流れている。緩やかであればあるほどいい。手で書く時間は、考える時間を尊重する。むしろ手で書いていると、考える時間が作られ、そこから表現が生まれる。

本書 p.40

 手書きは思考に追いつけない。それはキーボードでも同じことなのだが、キーボードは追いつくことを強いる。それはジムにあるランニングマシンのように、走ることを強いるが、自然の中を実際に走る体験とは全くことなっている。
 手書きは思考に追いつけない。ならば共存すればよい。競争は身体と思考とを分裂させ、書くことを「作業」へ貶めかねない。
 そのように急ぐ私は、一体、何をしたかったのか?

かつては考えたことを書いていた。今日では書くことを考える。この論理の逆転は、書くことも考えることも乏しくさせる。

本書 p45 (パオロ・クレペット 『ネットの外でキスして』(p.16))

しかし、時間を「失う」ことがそんなに問題だろうか? 本当は、時間を「失う」ことこそ最良の仕方で時間を使うことなのではないだろうか?

本書 P.31

「手で書くこと」と「考えること」とは同じ。だが、そんなまどろっこしいことをしている暇はない、と思うこともある。
 思考はサビだけをよく知っている歌のように叫ばれていて、その全部を歌うことができる気になっているせいで、それが膨大な量だと思い込んで思考の全てを慌てて書き写そうとして、実は大部分の不明瞭な部分を、勢いで上滑りして、継接ぎしてしまいかねない。
 ならば、蜘蛛が腹から糸を繰り出すように、その不明瞭な何か、漠然とした予感のような思考の糸口を、丹念に手書きすればいいと思う。
 それこそが書く=考えるという「体験」だ。それを一刻も早く「経験」にしてしまおうとなどせず、心ゆくまで「体験」を味わっていたい。
 と、思った。

4月27日 世界バクの日

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航海日誌

Posted on 24 4月 2020 by

世界がこんな形で閉じられる少し前、貨物船に乗船しブリスベンから横浜へと渡った。船内で交わされる殆どの情報は電子化されていたけれど、日誌だけは航海士によって手書きで記されていた。

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大人になりきれてなくてもおススメの「大人の塗り絵」

Posted on 24 4月 2020 by

Stay Home, Stay foolish ということで皆さん、自粛ライフ楽しんでますか?家にずっといるとストレスが溜まってきますよね。ストレスが溜まる→自律神経が乱れる→心を病むというスパイラルに陥ります。そこで、自律神経を整えるおススメの方法が「大人の塗り絵」です。ゴールデンウィークはおとなしく家にいることが重要になってきますが、家でできることの一つに塗り絵をやってみては?というのが今回のテーマです。

大人の塗り絵は子供用の塗り絵と違って絵柄が大人向けで色使いが複雑で、子供にとっては大人げない塗り絵です。大きい書店だと1コーナーが様々な大人の塗り絵で占められています。例えば花や動物、風景や東西の名画、コロリアージュなど様々な題材が用意されています。一度本屋をのぞいてみるとびっくりしますよ。

で、塗り絵なんて幼稚園以来だという人も久しぶりに色鉛筆を握ってみませんか。おすすめの色鉛筆は36色セットのものです。これだけあればとりあえず色々な色(洒落ではないです)が塗れます。24色で重ね塗りをしてもいい味出せますが素人には難易度がちょっとお高めです。筆者は数年前に衝動買いして眠ったままのuniの100色セットを持っています。

ゴールデンウィークを前にフェルメールの塗り絵を買ってもらったので休みに入ったら取り組もうと思います。ほかにもゴッホやルノワールも刊行されています。名画シリーズに限らず、完成形の見本があるほうがとっつきやすいです。とりあえずはオリジナルの配色を気にしなくてもそっくりそのままの色使いをしていったらいいのですが、対象となる絵のほうをじっくり見ていくと画家の複雑な色使いを実感します。普段何気なく見ていたのでは分からなかった細かいところがよく見ることによって画家の力量を知ることができます。

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とりあえずマスクバージョンの真珠の耳飾りの少女を描いてみました。

家で自粛が必要なので本屋に行けない/本屋が閉まっているという場合はネットでフリー素材の塗り絵をダウンロードしてコピーして使ってもいいでしょう。ググれば色々なものが出てきます。期間限定でミュシャ財団のサイトでミュシャの塗り絵があったり、プリンタのメーカーのサイトにも凝った塗り絵があります。筆者は今流行りのアマビエ様(ミュシャ風)をダウンロードして完成したものを100均で買った額に額装して部屋に飾り、疫病退散を祈願しております。

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塗り絵を一度やってみたら無心に色を塗る行為に時間がたつのを忘れ、自粛ストレスも緩和し、塗り終わったら結構な達成感も味わうことができ、いいことだらけです。これを機にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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ぼくのかんがえたさいきょうの手帳スケッチ

Posted on 10 4月 2020 by

何気ない日常が幸せだったと思う今日この頃です。そういう日々を手帳に書き留めて数十年が経ちました。そして最近絵心がなくても簡単かつ上手に手帳スケッチができる方法を編み出しました。それが、”トレース台”を使ったスケッチです。

トレース台とは何ぞや?ということで、別名”ライトボックス”とも呼ばれるこの代物、板状またはボックス状のものでライトを照らして全面を明るくする機器です。結論から言うと、描こうとしている紙の下に描きたい絵や写真を敷いて、下からライトを照らせば絵が透けて見え、その元絵をなぞり描きするだけで元絵そっくりな絵が描けます。

筆者が手に入れたのはA4サイズで薄さ4mmのトレース台です。USB接続で電源を供給するLEDタイプのもので1500円くらいでした。A6サイズの手帳に描くのでこれくらいのもので十分役に立ちます。

そして、元絵を用意するのですが、描きたい元絵をコピー用紙にコピーするか、画像を取り込んでコピー用紙に印刷するのがいいと思います。あまり厚い紙にするとなかなか透けないのでコピー用紙くらいがいいんじゃないかと思います。筆者がよく使うのは取り込んだ画像をエクセルのシートに貼り付けて拡大/縮小して使います。A4の大きさのシートで印刷プレビューにしてみた場合、手帳のページがA6なので、A4を4分割したエリアに収まっていれば手帳のページにも収まります。適当に縮小/拡大して自分の描きたい大きさを探ってみてください。

そして印刷した元絵を切り抜き、手帳の裏にマステで固定します。その下にトレース台を敷いて照らし、浮かび上がった画像をなぞり描きします。そのままペンなどで描いてもいいのですが、筆者はおなじみのフリクションペンで下書きして、コピックライナーで清書してからドライヤーで温めて下絵の線を消します。この時点でペン画としてかなりのクオリティで仕上がりますが、お好きな画材で彩色するのもいいです。筆者は呉竹のクリーンカラーリアルブラッシュを使っています。トモエリバーの紙と相性がよく、裏抜けしないので愛用しています。

これで絵心がなくても絵が下手でも上手に描くことができます。”ぼくのかんがえたさいきょうの~”って言っていますが、お絵描き業界では常識なのかもしれません(胸を張って言ってないがプロの人も使っていると聞きます)しかし、手帳スケッチにこの手法を取り入れたのは筆者が初めてかもしれません。

下絵をなぞるだけの簡単な手法なので上達までの訓練がいらず手軽に始めることができ、やってみると楽しくなってはまります。A4サイズを買ったのでいつかは大作を描いてみたいなと思っております。この方法で描いた絵をインスタなどにUPしたら(この方法は内緒にして)たくさん”いいね”がもらえるかもしれませんね。

この春は自宅で過ごすことが多くなりますが、絵を描いて時を過ごすというのもいいかもしれませんね。って言ってる場合ではなく、

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