Define it, Observe it and Discuss it、なのだ。 konama

Posted on 16 3月 2015 by

こんにちはkonamaです。

先日、Notebookersのお題で、Smell it(匂いを嗅げ), Hide it(隠せ), Alcoholize it(アルコール漬けにせよ), Discuss it(議論せよ), Oscillate it(振動させよ), Water it(水をやれ)、で始まる3つのツイートがでましたけど、その中からDefine it(定義せよ)のお題をいただいて、「Is That a Fish in Your Ear?: The Amazing Adventure of Translation」という本を紹介しつつお話しますね。

hyousi

【 Define it! Observe it! Discuss it! 】

職業柄、これらの言葉は日常用語。学生さんに向かって言う言葉の大半はこれに関わるといっても良いでしょう。他人に誤解の余地がなるべくないように言葉を選ぶ為には少々訓練が必要です。もちろんこちらの言葉の意味だって100%伝わるはずもなく、お互い斜め上に向けてことばを発することになる訳です。自分も学生の頃には「同じ日本語を話していて、意味を共有できないなんてあるわけもない」と意味もなく信じてましたけどね。

その昔、「私の緑とあなたの見ている緑は全然違う色かもしれない」ということに感動して道をあやまり、この儲からない商売をやってるわけですが(今現在そういう研究をしてるわけでもないですけど)、 実際問題同じ波長の光を返すからといって個人の持っている感覚器官が同じように受け取っているかなどわからないわけで、ましてや相手が全くもって同じ定義の元でその言葉を使っているなんてとても思えない。読書や映画なんかもほんとに個人的な経験だな、と思うのはその人がどのような人生を送ってきたかによって、勝手に作者の意図せぬ強調やスルーがあるわけで、コメディなんだけど親が死ぬシーンがあると問答無用で涙がでてしまうなんてことになります。まあだからこそ、お互い本について語り合ったりすることがこんなに楽しかったりするのですが。

で、なんでこんなにグダグダ前置きを書いているかっていうと、「母国語以外で書かれた翻訳に関する本を読む」っていうのはちょっと本当のところどうなのよ、という疑念が自分にあるからなのです。少なくとも自分は感心して、内容を楽しんだし、色々と新しい知識を得たわけなんですが、みなさんにご紹介できるレベルなのだろうか心配でもあるのです(自分の英語は我流だし、自分の楽しみのために読んでいるのでメモをとったりもしてない)。ま、そこは日本語ですら伝わらないのだから、しょうがないさあ、と開き直ることにしてしまいましょう。

ちなみにペンギンなのに、こんな風に日本語が書いてあったりします。(英語のTranslationに用いられる言葉が日本語にはこんなにたくさんある
ということを書いてるページ。ちゃんと最後に超訳がシドニーシェルダン込で説明されているところがお茶目)

honnbunn

【 翻訳は偽物なのか? 】

この本はまさに翻訳とは何だ?からスタートしてかなり網羅的に翻訳についてのトピックを扱っていくので全部を紹介はできませんが、印象に残った話をいくつか取り上げてみたいと思います。
翻訳について人々のいうこと、という話で、「翻訳は本物じゃない(代用品になりえない)」。オリジナルからすれば、一語一句対応して置き換えられているとは限らない、読み手がわかりやすいことわざや地名に置き換えられているし、それによって損なわれている部分も少ないとは言えない。たしかにこれまで私自身「翻訳ものは読まないと決めている」というひとにたくさんあったことがあります。理由は本物じゃないから。自然な日本語じゃないから。あとホントに読みたかったら原書で読めってやつ。この本ではそもそも代用品って言葉の定義が…と混ぜっ返したあと、結局どの側面・レヴェルでの代用が効くのかということを考えるという話になっています。で、ここで私が思ったのは原書で読めばわかるのか?という問題。さらに日本語で書いてあるなら、みな同じことが読み取れるのか?

以前映画「千と千尋の神隠し」を何度みても意味が分からないという学生さん(日本人大学生)と話したことがあります。彼は「結局ハクってなんなの?なんで龍なの?」と聞いてきました。え、水の神様だから龍神なのでは、川にゴミが捨てられているシーンとかあったでしょう?と答えると「なんで水だと龍なの?」との返事。あれ?さてこれはどうやって説明したものか。竜宮城とか色々説明してはみたものの、あまり納得してくれなかったようです。もちろん、それがわからなければ映画を見ても無駄だというつもりもないし、楽しめればそれでいいと思うのですが、ここで「オリジナル」とは何なのかということがとても相対的なお話しであるのだなと考えさせられました。もちろん日本語が達者な外国の方が読む場合だって、同じような事が起きるでしょう。たとえばヨーロッパではドラゴンはむしろ火と結び付けられているもの。それが全体の筋を損ねるかどうかはわかりませんが、原書を読めばオリジナルだ、とはなかなか言えないだろうということはわかります。

たぶん、有名な話だと思うのですが、翻訳上の言い換えで大好きなエピソードがあります。ナルニア国物語の「ライオンと魔女」に出てくる氷の女王が、人間界から迷い込んできた兄弟姉妹のひとりエドマンドを甘いお菓子でたぶらかそうとするシーン。小さいころ読んだ記憶ではたくさんプリンが詰まった(湧いて出る?)箱をもらったと書いてあった気がします。幼心にプリンはおいしいけど、そんなにたくさん食べられるかしら?すっごい小さいプリンなのかなと思った記憶があります。オリジナルではなんて書いてあるかというと、ターキッシュデライトがたくさん詰まった箱と書いてあります(映画ならもちろんターキッシュデライトでしょう)。確かにターキッシュデライトなら、小さいし子供が夢中になって食べるシーンが思い浮かびます。 ただ、私の知る限りターキッシュデライトってイギリスではとってもポピュラーな食べ物だけど、ローズ味って石鹸っぽい後味で日本人好みとはとても思えないし、初めてこの本が訳された時代日本でターキッシュデライトがなんなのか知っている人(特に子供が)ほとんどいないことを考えれば、プリンというのはなかなか面白い書き換えのように思うのです。

その他に、「聖書がどのように翻訳されてきたのか」「EUには7つの公用語がある(実質公用語はない)」「グーグル翻訳が与えたショック」などなど、様々な切り口でとても楽しく読みました。

 【 大丈夫この魚を耳に入れればいいんだ 】

で、この本のすごいところは、 結局なんやかんやいって言葉なんて、なんだかよくわからない自分の精神活動を翻訳して人に伝えているに過ぎないってところまでいっちゃうところ。Translationとは言葉そのものだってことになる。これを読んだ時、あー、ノート書くってことも自分の気持ちや考えの翻訳作業なのかもなあ、と思いました。書かれた文字を読んでまた”オリジナル”が変化したりして、日々インタラクティブな翻訳を続けているわけです。

この本のタイトルの「Fish in ear」はどうやらD・アダムスの「銀河ヒッチハイクガイド」の耳に入れとくと通訳してくれる魚のことらしい。私も「大丈夫この魚を耳に入れればいいんだ」くらいの呑気さで英語が話せるといいんだが。

実はこの記事書きかけてたときにちょっとNotebookers 向きでないかなあとおもって、消しかけてたのですが、せらさんのリトルプレスを読んで、こういう事に興味あるひともいそうかも、と書くことにしました。せらさんきっかけをくれてありがとうございます。今回はほんとに「あったはずのシーン」が多くて困りました(笑)。

Name:
Profile: こなま。趣味を仕事に持ち込んで、仕事から趣味を増やしている毎日(←結局好きなことしかやっていない)を過ごす、ざっくり人間。おいしいお酒のあるおしゃべりは大好物。一応モレスキンユーザー。現在Notebookers Mapプロジェクト進行中です。 年に数回更新するブログ Chips with everything

  • せら

    こなまさん

    ワタシがNotebookers.jpで読みたかった、読みたいと思うのはこういう記事なんだなあとシミジミ思います。

    ノートブックを使うひとの【内側】を見てみたい、聞いてみたい、知りたい、その答えのような記事として拝見しました。

    洋書多読、というのをじみじみとやっているのですが、コレにもまさしく、この記事のこの部分、

    >ここで私が思ったのは原書で読めばわかるのか?という問題。
    >さらに日本語で書いてあるなら、みな同じことが読み取れるのか?

    ここと同じことがよく言われていて、日本語で読んでいる本を100%理解しているのか、
    原書で読んだパーセンテージより本当により多くわかっているのか、と。
    ワタシが原書で読むのは、その文字を作家さんが【直接】書いたから、その文字列、言葉を書いた(タイプした)から、に他ならないのですが、そういう読み方をしているヤツもいる、ということで。

    素敵な記事をありがとうございます♪

    (そして、あのリトルプレスから、この記事が読めたのだと思うととても嬉しいです♪)

    • konama

      せらさん、
      ありがとうございます。内面が見えるというとカッコイイですが、普段のしょーもない考えが透けて見えちゃった、というところです。
      ことばとか翻訳は昔から興味があって、英語には苦手意識がまだ濃いのですが、翻訳者のエッセイを読むのは結構好きです。柴田さんと村上春樹の翻訳教室や翻訳夜話なんかも面白かったし、英語以外の翻訳の話も好きです。たぶんみんなとても言葉を大事に扱っていらっしゃるからかな。私の大好きな作家アガタ・クリストフが母国語でないフランス語を使って小説を書いていたというのもオリジナルや言語に興味を持ったキッカケですね。
      私が原書で読むのは、海外の友人達と本の話をしたいから、オリジナルの語感を楽しみたいから。だから翻訳原書どちらでもその時に欲しい方を読めばいいとおもっています。
      この本にも日本は翻訳者を大事にする素敵な文化があって、
      柴田さんの名前を冠した全集が出るなんてスゴイ!という話も載っています。是非この本自体翻訳してほしいなあと思うのですが、やっぱり難しいだろうなあ。

Photos from our Flickr stream

See all photos

2017年5月
« 4月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

アーカイブ