夏至といえば konama

Posted on 23 6月 2015 by

DarkCamesRising

こんにちはkonamaです。

本日は夏至(って間に合ってないですが)。世界の仕切りが薄くなる日。ケルトのお伽噺では妖精が人をさらいに来る日でもあります(正しくは前夜のようですが、シェークスピアの『真夏の夜の夢』みたいな感じ)。

ファンタジーにおいても夏至は特別な日として登場することが多く、ゲド戦記、指輪物語なんかでも重要なイベントの日だったりします。比較的最近読んだ作品だとマギー・スティーフベーター の 「ラメント (妖精の騎士に捧げる哀歌) 」なんかも最後が夏至祭のシーンだったはず(ロマンス小説っぽいが、がっつり妖精が取り込みに来てる話)。

そんな中で、夏至と聞くと私がすっと思いつくのが「樹上の銀」という本です(というかこの本はスーザン・クーパー「闇の戦い」シリーズの完結編)。ケルト、ファンタジーと来ると、私なんぞより語る方がNotebookersにはいっぱいいらっしゃるのは重々承知ですが、割と有名な本だけどたぶんこの本が一番最初に来る人はいないんじゃないかな、と思うので、ちょっと紹介してみたいと思います。あらかじめ言っておきますが、子供向けです。

「イングランドのチルターン丘陵にある夏至の木だ」メリマンは言った。
「生命の木、世界の柱だ……。この国に七百年に一度出現し、その上に、その日一日だけ銀の花をつけるヤドリギが寄生している。つぼみが開ききった瞬間に花を切り取る者は形勢を逆転し、いにしえの魔術と荒魔術とを操って、あらゆる競争相手をこの世から、そして〈時〉の中から追放することができるのだ」

700年に一度の夏至の日、樹そのものですらなくてヤドリギですよ!(気分はFF10に出てくる”語ってもよろしいですかな”爺さん)

【闇の戦いシリーズ ”The dark is rising” sequence】

簡単なあらすじとしてはイギリス人の少年ウィルは11歳の誕生日を迎えたとき、不思議な力に目覚め、自分が”古老”と呼ばれる存在であると知る。そして光の古老として闇との戦いに巻き込まれていく、というお話。アーサー王伝説を下敷きにしています。最も若い古老”ウィル”を教えるのは最古の古老”メリマン”…そう魔法使いマーリンが最初っから登場してくれます。

闇の寄せ手が攻め来る時
六たりの者、これを押し返す
輪より三たり、道より三たり、
木、青銅、鉄、水、火
五たりは戻る、進むはひとり

こんな感じの予言の詩が提示されていて(上のへたくそなカリグラフィが全文)、それをヒントに戦いに勝つというお話なので、まあある意味お約束ファンタジーなのですが、このお話の斬新なポイントは現代のお話だ、という点につきます。最初に能力が目覚める部分など、ラジオに近づくとなんかすごいハウリングする!みたいな兆しで始まるのです。色々と不思議なことや技は登場するのですが、それは決して誰もたどり着けない不思議の世界ではなくて、遠い昔という設定。だから、ある意味このお話における魔法はタイムトラベルの魔法ともいえます。義経伝説と同様、アーサー王にちなんだ地名、史跡はイギリス全土に散らばっていて、どう考えてもアーサーが生涯ずっと旅をしていたとしても回り切れないほどですが、戦いは現代のそれらの土地で起こっているのです。

シリーズは5作からなっていて

  1. コーンウォールの聖杯 (コーンウォール、夏休み?)
  2. 光の六つのしるし(ハンタークーム、バッキンガムシャー、冬至―クリスマス)
  3. みどりの妖婆 (コーンウォール、復活祭)
  4. 灰色の王 (ウェールズ、タウィン~カドヴァン、ハロウィン)
  5. 樹上の銀 (ウェールズ→イングランド、チルターン丘陵、夏至)

という構成です。実は、主人公であるところのウィルは「光の六つのしるし」からしか出てきません。日本では、コーンウォールの聖杯のみが学研で出されていて、残りが評論社からでています。実際、初めて読んだときは2-5まで読んで、大分たってから1を偶然図書室で見つけて読んで、「あれ、登場人物同じ!」と驚いたのを覚えています。おひざもと英国でも同じ扱いらしく、一昨年イギリスに滞在した際に久々によみたくなって、あちらで英語版の「光の六つのしるし(The Dark is rising)」を読んでいたら、仲良くなっていた掃除のお姉さんがそれを見つけたらしく、これから読めと何度も読んだらしい「コーンウォールの聖杯(Over sea, Under stone)」を手渡してくれて、とても嬉しかった思い出があります。

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今読み返してみると、かなり荒っぽいストーリー展開ではあるのですが、幼い頃はろくにアーサー王伝説なぞ理解していなかった(なぜか湖に剣を返すシーンだけ妙に覚えてた)ので、とにかく読んでそこにあらわれる圧倒的な景色に夢中になったことを覚えています。詩の謎がとけてふっと場面が変わるシーンこそが一番この小説の魅力的な場面だと思います。大人になって読み返してみると、かなりがっちりアーサー王伝説が組み込まれていることがわかって、これはこれで楽しかった。王国の危機に復活すると信じられている死に臨んでアヴァロンへ船出した伝説の王はタリエシンの竪琴で目覚める。すべての戦い、そしてしるしを探す旅は実はアーサーの最終勝利のためのものなのだ。この現代舞台に散りばめられたたくさんのキーワード(聖杯、聖剣、失われし都、ペントラゴン)がなんとも魅力的なのです。

最初に述べたように、この本のカテゴリーは一応子供向け。イギリスの本屋さんでもファンタジーの棚ではなく、ティーンエイジの読物の棚にありました。イギリスのアーサー王伝説を聞いて育って、地名にも明るい少年少女にはさぞや大興奮な読物だったろうなあとうらやましく感じます。しかし一方で、ストーリーの本質は結構人間の脆さ、汚さ、怖さなんかもどんどん出てきていて、大人が読めば大人の読物になる要素に満ちています(ストーリーは結構荒いので、そこは心して読んでください)。なにより光と闇とも両方とも結構ひどいのです。もちろん人間の弱さ・恐れにつけ込む闇は定番のおぞましさですが、正しいことのために犠牲を強いる光もなんとも傲慢なものです。結構人間を道具扱いしているのがまざまざと見えて、うへぇと思うと同時に、いずれも人間であるのだなと腹に来ます。そういう意味で読むたびにいろんなものを見せてくれる私にとっては大事な本です。

【映画は見なかったことにしたい】

さて、この話は一応映画化されています。右の写真の帯にもあるとおり。しかーし、しかしですよ。私はまったくもって映画はおすすめできません。特に原作信者っていうわけでもないつもりですが(まあこの話について思い入れはすごいが)、映画単体が面白ければそれでいいと思っています。しかし、この映画については、いいところをことごとくつぶして、続編の可能性までつぶしておくという念の入れようで、褒めようがありません。その点の怒りについては昔書いた私のブログ記事を参照していただければと思います。

そんなわけで、思い付きでどわーっと書いてみました!

 

 

 

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Profile: こなま。趣味を仕事に持ち込んで、仕事から趣味を増やしている毎日(←結局好きなことしかやっていない)を過ごす、ざっくり人間。おいしいお酒のあるおしゃべりは大好物。一応モレスキンユーザー。現在Notebookers Mapプロジェクト進行中です。 年に数回更新するブログ Chips with everything

  • ko-ri

    私も持ってます!子供の頃、図書館から何度も何度も借りて、大人になってからようやく手に入れました。昔の表紙はもっとダークなイメージでした。この本を好きな方と初めて出会えました。嬉しいです!

    • konama

      ko-riさん
      わーい、ここにも仲間が!私も昔の装幀の方が好きでした。新装版が出たときに大人買いして、全巻そろえましたよ。意外とファンタジー好きの人でも、あんまり反応ないことが多いので、ko-riさんが喜んでくれてうれしいです。
       みどりの妖婆にこころせよ。ですよね。greenwitchをみどりの妖婆と訳したセンスはすごいなあと思います。私は山々歌い、老婦人来る、のところが好きなので行きたいのはウェールズかな。

      • ko-ri

        大変お恥ずかしい・・・妖婆でした。慌てすぎです。
        昔の表紙はホラーっぽく、タイトルも子どもっぽくないため、小学生ながら借りずらかったです。あの頃は本屋さんにない本を買う手だてもわからなかったし。
        ナルニアも小説の方ではまりましたが、子どもの頃の創造力で築きあげたイメージが、映画でがっつリ落とされるのは、ダメージ大きいです。
        読んでない人に「小説はね、もっと面白いんだって!本当だよ!」って言っても、信じてもらえなかったりして。
        闇の戦いシリーズは、大人になった今も、読みだすと夢中です。
        Konamaさんの記事で、この本を手にとってくれる人が増えたらいいな。

        • konama

          あ、全然その間違いには気がついてませんでした。
          たしかに映画になっちゃうとなあ…というのはありますよね。

          ナルニア国は断然小説でしょう!そして今思えば翻訳の語感が素晴らしかった。だってヌマビトですよ(銀のいすが結構好き)。ナルニア国も大人になってから読み直しました。あと私は当時の順番どおり魔術師のおいから読んだので、ちょっと映画には違和感あったのもありますね。あとジブリのゲドをみて、本を手に取らなかった人がいたら叫びたいですね。ゲドのいいところは最初から読まないと!

          そう、あのころ欲しかった本、闇の戦い、ナルニア国、ミスビアンカの冒険とか(金持ちのお転婆お嬢様ネズミのお話)、何度もかりて読んでた記憶があります。それで大人になって読み返すと、これまた色々大人の伏線が読めてこれはこれで面白い。闇の戦いのアーサー王伝説みたいに、宗教観とか歴史観とかが読み取れるとまた、新しいお話になりますからね。

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