TOBIU CAMPで行われていたこと「黒き鳥なり此鳥多きにより名く」

最終更新日

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まず、キャンプの目的は何かというと「都会から離れた人々が都会に何か影響を与えること」である。北海道白老町の飛生(とびう)で行われた「TOBIU CAMP」に参加してきたのだけど、そういった視点で勉強をすることができた。規模に関わらず、大であれ小であれ、キャンプの目的は自然の中に分離した人々が都会に影響を与えることである。アメリカのバーニング・マンのキャンプもそうかも。砂漠の中心に分離した人々は木造の巨人に火を放つ。その炎は都会に住む人々の心を魅了する。

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会場内でモレスキンをぶら下げて歩いていた人を見かけたなら僕です。イベントのMAPやタイムテーブルをノートブックに縮小コピーして貼り付けて持ち歩くと便利なのだ。Notebookers的視点でこのイベントについて書いてみたいと思う。不思議なもので、イベントという言葉が何かしっくりこないイベントなのである。

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TOBIU CAMPについて概要を書くと、北海道白老町の旧飛生小学校を共同アトリエとして30年前に開設し、地域に向けた「飛生芸術祭」を2009年から開始、そもそもは飛生に住む若手芸術家たちの発案によるもの。彼らは同時に「飛生の森づくり」プロジェクトを立ち上げ、地域内外の人々を巻き込み活動を開始している。その飛生アートコミュニティが行っている活動や表現のお披露目として、旧飛生小学校の木造校舎と周辺の森を舞台にしたイベントである。飛生芸術祭の最後の二日間をキャンプとして行い、大きな炎を燃え上がらせ、森のあちこちに隠れた音楽や芸術やパフォーマンスを探しながら森を探検しながら夜通し遊ぶ。

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参加してみて思ったのだけど、地域のお祭りにありがちな閉じた空間ではないことに気がついた。会場内で行動しているスタッフのひとりひとりが何か目に見えない何かを作り上げている。またその活動が、大きく都会の人々に影響を与えていることだと思う。この飛生の森のアーティストたちが行っている行動が都会に住む人々にちゃんと届いていて、また別の芸術家やアーティストに何か少し変化をもたらしている。都会から離れた人々が都会に影響を与えている。

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音楽フェスであると考えて参加しているとガツンと頭を殴られたような衝撃を受けると思う。
何が違うのかうまく言えないのだけど、このイベントは森づくりや森を楽しむ行為がまずあって、音楽と芸術を先頭に持ってきているのではなくて、森を夜通しふらりふらりと歩く行為の最後に音楽や芸術が置かれている感じがする。

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特設のステージは森のあちこちに設置されているものの、目に見えない場所や人が歩かないような場所にアートの作品が小さく設置されていたり、樹木を高く見上げてみると高所に大きな黒い鳥の羽の彫刻が設置されていたり、ふと見えない影で何か音がするなぁと思って覗いてみたら、ウクレレを隠れて弾くパフォーマーが校舎の中庭にいたり、森の中に子供達に囲まれながら大きなシャボン玉を作るパフォーマーがいたり、突然暗闇の中で生演奏をBGMに人形劇が始まったりする(お楽しみ劇場ガウチョスさん最高でした。

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二人であの生演奏、人形操作、場面展開、セリフすべてをやっているというのがすごい。しかも最後には人形劇を見ていた人には素敵なプレゼントが!大人も楽しめる夜の人形劇)。

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音楽のパフォーマンスは、国境のない無国籍な雰囲気の音楽が終始流れている感じがした。森の奥深くから管楽器の音が聞こえて来る光景が忘れられない。

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今年は僕の大好きなリトル・クリーチャーズの青柳拓次氏が参加していた(もちろんモレスキンにサインもらった)。彼はミュージシャンと名乗らない。たしか「ミュージック・アクティヴィスト」。彼が今まで活動してきた音楽的な活動のそれぞれがまさしく国境のない雰囲気を持つ活動であり、音やことばが国境を乗り越えてじわりじわりと広がっていく姿勢を持っている。それらがこのTOBIU CAMPの雰囲気に妙にマッチしていた。彼が今回TOBIU CAMPで行ったパフォーマンスも、歌詞はどこの国にも属さないことばを使い歌い上げて、観客と一緒に音楽をつくりあげていくものだった。

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今回、TAIKUH JIKANG(滞空時間)の河村亘平斎氏も参加していた。いやーこの人、影絵と音楽のすばらしいパフォーマンスだった。すっかりファンになってしまって、YOUTUBEでもたくさん動画見てみましたが、ガムラン奏者でもあり、インドネシア的ダンスやら歌やら、影絵やら多方面での表現をされているらしくて、異国のことばを使うMCや、ガムランをサンプリングした音楽で踊る影絵のダンスでぐいぐい心を引きつけられ、猿のニシオカさんとカエルの山田さんのかけあいで笑わせるという最強の表現をされていました(笑。

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これ見逃した人マジでもったいない。早い時間は愉快なパフォーマンスで引きつけて、夜間にはアイヌのぞっとする物語をアイヌのサハリンロックことOKIさんのトンコリやマレウレウのかけあいと共に影絵で表現して、インドネシア音楽とアイヌミュージックで異国の世界に皆を連れていってた。

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夜深くには、タイのバンコクで北海道出身の日本DJでオーガナイズされているパーティ「GIANT SWING」をそのまま飛生小学校の体育館に再現して皆をがんがん踊らせていた。これがまた、無国籍な音楽をサンプリングした音作りで最強にカッコよかった。しかもめちゃくちゃ音がディープで深くてよかった。

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関東圏の方々もこの前は別な会場で目にしていたと思うけれど、浅井祐介氏の巨大な泥絵の壁画が会場内体育館の壁面を埋め尽くしていた。6種類の泥絵の具をボンドを混ぜて塗っているらしくて、スタッフの方々も触っても落ちませんよ安心してください⭐︎と子供達に声をかけていた。その名も「種をたべた獣たち」、種を食べてにょろにょろと伸びていく大きなけもの。圧巻。

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森の中を歩くと作品が点在している。石川大峰氏の「topusi」は竹で編んだトンネルで、近くにビールが売っている場所が2件あったので、お酒をもって頻繁にくぐっていた。異国への入り口のようで、森の中の雰囲気にマッチしていた。潜り抜けるたびに小人国に紛れ込んだりするような気分だった。もしくはトトロが昼寝している場所。

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くぐり抜けるとその先には、国松希根太氏の「topiuの羽」が樹木に突き刺さっていた。樹上の高い場所にあったので、この作品に気づいた人わりと少ないのではないかなと思う。そして森の中を歩くと森迫暁夫氏の不思議な形をした巣箱があちこちに設置されていた。ちなみに「飛生」はもちろんアイヌ語が語源となっているのだけど、由来は「ネマガリダケの多いところ」そして「黒き鳥なり此鳥多きにより名く」という二つの解釈がある。そのためかこれらの作品は対を成していると思う。

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ダンスパフォーマーが踊っていた舞台も作品の一つである。そのステージは葉っぱが敷き詰められ、異国情緒漂うダンサーたちは葉っぱを巻き上げ(食べている人もいたw)泥だらけになりながらフラフラになるまで踊っている姿が印象的だった。

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TOBIU CAMPのクライマックスでもある大きな大きなキャンプファイアーは、腹のそこからズシンとくる太鼓のパフォーマンスと、当日出演したダンサー全員が点火前の薪の周囲をぐるりと廻るダンス。リード太鼓のお姉さんの真後ろにいたものだから、その歌声と太鼓がズムズム体にしみ込んだ。そして炎に点火して大きな炎、燃え上がる炎の周りでアイヌの方々と歌いながら皆で廻る。これがまた最高に面白かった。

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ウコウクという輪唱に合わせて踊るのだけどアイヌの輪の周り方(リムセというのかな?)は、手を打つと同時に左足を体側面に動かして、左回りをするそうで、けっして左を向いて歩いたり、右には回らないとのこと。最初は教えてもらった通り廻るんだけど、みんなお酒も入っているのでだんだんと好きな感じのダンスになっていって、僕も最終的にはその日初めて会った人々と自然と手をつないで笑いながら好きなように踊っていた(笑。

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みんながみんな、ダンスや歌が自然とつながっていく、大きな炎は天高く燃えて、小雨の降る会場を暖めて、そしてアイヌの言葉が会場内に響き渡り、心の底からここちよくてトリップ状態になる。

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イベントの最後では札幌のアーティスト富士翔太郎氏とCHUVA CHUVAと地元の竹浦小学校のこどもたち「ほしのこどもたち」によるライブ!大雨の中での演奏だったけれども、最高でした。小学生のみんなが直立不動で元気いっぱいに歌う姿に感動した。音を楽しむことがものすごく大事で、音程なんか気にすんな。大きな声で歌い上げる姿は本当にすばらしい。ほしのこどもたちメインボーカルの中学2年生のさっちゃん、ものすごくまっすぐでいい声してましたね。

中でも「Akasha」という曲がこのイベントを代表しているような曲で、印象的だった。この曲は富士翔太郎氏が白老町に滞在制作しながら竹浦小学校のこどもたちと「みんなが世界のスターだぜ」というテーマで一緒に歌を作る過程に大切にしたプロジェクトで作り上げられた曲とのこと。スローテンポで歌い上げるその曲の持っている雰囲気、音を作るという強さを感じた。

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まだまだ書きたかったことはたくさんあるんだけど、ざっと書くとこんな感じだったと思う。このブラックバードの森ことTOBIUの森のキャンプで行われていた行為は、森の中からすこしずつコーヒーカップの雨水のように溢れ出し、世界にじわりと広がっていくのである。大きなものであっても、小さなものであっても、キャンプの目的は「都会から離れた人々が都会に何か影響を与えること」である。このような視点で物事を眺めることから、物事の見方を変えることにつながっていくのである。TOBIU CAMPで行われていることは、都会に住む人々の心に強く影響を与えていると思う。「黒き鳥なり此鳥多きにより名く」一陣の風に吹かれて、大きな羽をもった黒い鳥が心の中の空をすっと横切っていく、そんなキャンプをあなたはまだ見たことがない。ぜひ飛生の森でお会いしましょう。

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帰りに見た支笏湖の夕日
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夜間はあいにく雨だったけどブルーシート一枚で完璧雨対策

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タカヤ

ヒッピー/LAMY・モレスキン・トラベラーズノート好き/そしてアナログゲーマー

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