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文庫版を待つ楽しみ konama

Posted on 27 9月 2015 by

数日とおかずにkonamaです。

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前回、ハードカバーを買う楽しみで色々愛を叫んだkonamaですが、じゃあそんなにハードカバーが好きなら文庫版はしょうがなく買っているのか?というとそんなことはありません。

最近は文庫書下ろしも結構ありますからね。必ずセットでということでもなくなるのかもしれません。ハードカバーから文庫化するまでかなり早くなって、いち早く読みたくて買ったのに積んでるうちに文庫になっちゃったなんてことも最近では珍しくありません。

とはいえ、それなりに時間をおいての発売。色々なオマケがついてくることがあります。再校正されているのはもちろんですが、あとがきや解説、年表や注、著書目録などなど。文庫用書下ろし短編なんてものがあったりして、ハードカバー版を持っていても、買わなくっちゃってこともままあります。

カバーデザインが異なるというのも魅力の一つ。ハードカバーほど自由度がない(サイズも紙も統一だし、背表紙は作者ごとに色が決まっていたりする)わけですが、ハードカバーとまったく異なるデザインの場合もあって、違う装幀家なら同じ内容を読んでのインスピレーションの違いみたいなものを楽しめるし、同じ人ならサイズダウンにどう応えたか、というのも見どころ。たとえば三浦しをんの「風が強く吹いている」はハードカバー文庫版も山口晃氏の絵ですが、まったく違う絵を使っていて、それぞれ独特の良さがあります。

そんなわけで、今回は文庫版を待つ楽しみを教えてくれるいくつかの本を紹介します。

【思わぬ解説?の追加 ―グアテマラの弟 片桐はいり】

『グアテマラの弟』は片桐はいりさんの2作目のエッセイで、グアテマラに移り住んだ弟を訪ねる旅行記・エッセイです。とにかく飽きない文章を書かれる方なのですが、1冊目の『私のマトカ』(映画『かもめ食堂』撮影後にフィンランドで過ごした時のお話)を読んで大変気に入ったので、『グアテマラの弟』は出てすぐにハードカバーで購入して、相変わらず面白いお話にホクホクとしていたのでした。読み終わって、現在も使っている「読書メーター」というSNSで「家族への愛情が詰まった、素敵なお話。ゆったり時間が流れるグアテマラで弟の家族と暮らす日々が落ち着いたはいりさんの視点から語られている。弟から観たお話はこれと全然違うのだろうけれど、いいお話でした。また書いてほしいな。」と感想を書いています。これが2009年10月。その後読書メーターでお気に入りにしている方が文庫版を読まれたようでその感想に「弟さんの解説が…」とあるではないですか!ちなみにこの弟さんは作家でも芸能人でもありません。それは読みた過ぎる!と本屋に走ったのが2012年の3月。2年半もたってそのストーリーと弟さんの話を読んだのでした。本文にある「姉からみる弟の暮らし」はもちろん弟の視点ではまったく違う風が吹いていて、そのことでかえって姉の気遣う気持ちが浮き彫りになってなかなか良いものを見せてもらったなあという気分になりました。

【また傑作を書いてしまった ―あとがき大全 夢枕獏】

『グアテマラの弟』のハードカバー版にあとがきがなかったように、多くの場合ハードカバーにはあとがきや解説がないことが多い気がします。もちろんないわけじゃないけれど、そういう作家さんは文庫化した際には「文庫版あとがき」というのを書くことが多い。そんな中で夢枕獏はあとがき書きまくりなお方であります。どの本だったか忘れたが、確か「また傑作を書いてしまった」で始まるあとがきを読んだ時には思わず吹き出してしまった覚えがあります。「この物語は絶対に面白い」という結びは結構よく出てくるフレーズ。それに、他の出版社で出す自分の本の話などをふつうにする上に、あとがきが他の本のあとがきの続きだったりすることまであるのです。そんなハチャメチャなあとがきですが、なんと「あとがき大全 ―あるいは物語による旅の記録」という本、つまりあとがきだけまとめた本!が文春文庫で出ているのです。この本は1990年までの収録なので、最近のものは入っていませんが、キマイラから飢狼伝、陰陽師まで、登場人物への愛から本来のストーリーの予定まで、盛りだくさんの内容で楽しめます。

あとがき大全

【異なる結末 ―エンジェルエンジェルエンジェル 梨木香歩】

バージョンの違いで起こりうる一番の違いは…そう結末が違う場合。この『エンジェルエンジェルエンジェル』という小説は突然一緒に暮らすことになった要介護のおばあちゃんと孫が、飼い始めた熱帯魚の水槽を眺めながら、それぞれの想いをクロスさせる不思議な物語。ちょっとお話としては暗ーい感じです。梨木香歩さんは私にとって今では新刊がでるととにかく買う作家さんになったけれど、その当時はまだ読み始めたころで、新潮文庫の緑色の表紙の文庫を端から読んでいました。このお話も文庫でまず読んで、なんかこれはハードカバーで読むべき本だったなあという感想。テーマがやっぱり強烈なのと、構造が複雑なので、何らかの重みみたいなものが重要な気がしたのです。しばらくして、実はハードカバーは結末が違うという話を耳にしました。それはそれはと、さっそくハードカバーを手に入れて読んでみました。ストーリーは基本的に変わりません。全体の表現の仕方が変わっている(文庫の方がちょっと柔らかい)のと、最後の見開きの主人公の独白がカットされています(文庫版の方が)。個人的にはハードカバーの終わり方の方が好きかなと思いますが、それに気づかされたのも文庫の解説を読んだ部分も大きいなと思うので、やはり両方読んでよかった、ということなのでしょう。

太宰治の辞書

芥川の『舞踏会』の結末が初出と単行本で違うという話が『太宰治の辞書』(北村薫)には出てきます。この本は長らく新刊が出なかった『円紫さんと私』シリーズの最新刊なのですが、この本がいろんな意味でハードカバー・文庫版それぞれの良さを汲んでいる不思議なつくりなので、最後にご紹介したいと思います。そのタイトルの通り、芥川龍之介、太宰治の作品の一節の由来や意味について推理していく不思議な推理小説なのですが(文学オタク系でない人からはこの巻は蘊蓄コメすぎということで大層評判が悪い)、ちょっと面白い作りになっています。このシリーズは長いこと創元推理社から出ていたのですが、今回は新潮社から出ています。違う出版社からの出版にもかかわらず、表紙が字体など変えてあるものの、同じ高野文子さんの絵でまとめられており、すっと同じシリーズだということがわかる装幀になっています。そして何より楽しいのが、この本の最後には「新潮文庫の目録」が載っているのです。新潮文庫は作品のあとに、作者あるいは関連する作品の出版リストが付いています。まあある意味宣伝ですね。この本はハードカバーなのに新潮文庫と書かれたリストが載っていて、それが作品中に登場する作家の作品リストなのです。こういった遊び心はいつでも、なにか宝探しをしているみたいでワクワクさせられます。本の中身についての愛の叫びは私のブログをご覧くださいませ。

そんなわけで、2回にわたって本についてお話してみました。

 

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Profile: こなま。趣味を仕事に持ち込んで、仕事から趣味を増やしている毎日(←結局好きなことしかやっていない)を過ごす、ざっくり人間。おいしいお酒のあるおしゃべりは大好物。一応モレスキンユーザー。現在Notebookers Mapプロジェクト進行中です。 年に数回更新するブログ Chips with everything

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