どこにもない場所 ~エル・パパガヨ・リブレリ konama

Posted on 30 1月 2016 by

こんにちはkonamaです。

今日は物語の中にでてくる場所についてのお話です。

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時折、本を読んでいて、その物語上さほど重要でもないのに、ものすごく頭の中に残ってしまう場所というのが私にはあります。

物語の舞台、というと何か劇的なことが起きたり、例えば歴史的にその場所であることが必然出会ったり、作家のふるさとであったり、その本を読んだ人がその物語といえば…と話せば必ず出てくる地名。いうなれば巌流島や関ケ原(たとえがなんですが)。

そんなすごいところではなくて、行数としても数行でてくるかどうか、物語における重要性は様々だけれど、なぜか頭にこびりついている地名。

それは不思議な語感であったり、その時浮かんだ鮮やかな連想であったり、よくわからない思いこみだったり色々なのですが、これが結構数十年単位で覚えているのです。

今日はそんな場所をひとつ勝手にご紹介しようかと思います。そしてあってるかどうかわからないけれど、Notebookers Mapにそっとマーカーを立てようかと思うのです。

【おおむ書店 ―おばちゃまは飛び入りスパイ】

ドロシー・ギルマンの楽しいスパイ小説、ミセス・ポリファックス・シリーズ(別名おばちゃまシリーズ)の1作目、「おばちゃまは飛び入りスパイ」(The Unexpected Mrs. Pollifax)を読んだのは今から20年くらい前だろうか?手元にある集英社文庫は1994年7月25日第19刷とあります。オリジナルの初版は1966年。アメリカのボランティアに熱心な未亡人、子供もそれぞれ独立して手を離れ、ふとやりがいのない人生にため息をつくミセス・ポリファックス。医者の「いつかやってみたいと思っていたことはありませんか」の一言で、CIAにスパイのボランティアを申し出た!というお話。このシリーズは以降、14冊、元気なおばちゃまが世界を駆け巡る本当に大好きなお話。

その記念すべき第一作、おばちゃまは様々な偶然が重なって、無邪気な観光客に見える運び屋としてメキシコに行くように指示を受けます。その受け渡し場所がおおむ書店、エル・パパガヨ・リブレリなのです。

エル・パパガヨ・リブレリ(おおむ書店)

カイエ・エル・シグロ 十四番地

メキシコシティ

店主 セニョール・R・デガメス

良書販売業

20年以上たった今でもこのエル・パパガヨ・リブレリという言葉が頭にこびりついているのです。おおむ書店っていうのもなんかチャーミングだし、なんたってパパガヨだよ!(語感にやられている私)

こんな風に住所が書かれている場所。探すのは簡単かと思いきや、Google mapやネットでさがす限りにおいてはCalle el Sigloという通りは出てきません。もちろんEl Papagayo Libreriも。

そうなると、物語の中から情報を拾ってくるしかないわけですが、

おどろいたことに、その通りはホテルからすぐのところにあった。もうすでに、カメラを首からつるした観光客の姿も見え、結構人通りも多い、こざっぱりした裏通りだった。

通りの半ばを過ぎたころ、向かい側におおむ書店が見え、彼女は思わずどぎまぎして、目をそらせた。が、ちらっと見ただけで、その本屋は、彼女が勝手に想像していたようなうらぶれた店ではなく、かなり立派なシャレた店であることがわかった。

つぎの日の午後、宮殿を見たあと、例の二人の友達とホテルへ帰る途中、いつの間にか道に迷ってしまった。そこでミセス・ポリファックスは、カイエ・エル・シグロ通りまで先に立って歩き、これはホテルへの近道だと、すまして言った。

その週は、熱心にメキシコシティを見て歩き、ほとんど毎日のようにおおむ書店の前を通った。わざとその道を通るようにしたわけではなかったが、ホテルに戻るのにその道が便利だったのである。

とあります。うむ、ホテルと宮殿がキーワードになりそうです。ちなみに宮殿はメキシコシティに結構あるので、オリジナルをあたったところNational Palaceと出てきたので、国立宮殿らしい。

じゃあホテルは?というと、「ホテル・レフォルマ・インターコンチネンタル」にチェックインしてくださいというセリフがあります。

で、Hotel Reforma Intercontinentalで検索をかけると、そのものずばりのホテルはありません。ただ、名前からして、レフォルマ通りに面したインターコンチネンタル系のホテルだろうということになります。すると、INTERCONTINENTAL PRESIDENTE MEXICO CITYというのが出てくる。おお!これじゃない?ミセス・ポリファックスも

ホテルはミセス・ポリファックスがそうぞうしていたよりも、ずっとぜいたくなものだった。彼女の好みからすれば、もっとメキシコらしいところがよかった。でも、自分で選んだわけではなかったことを思い出し、ここは観光客が泊まるところなのだと納得した。

といってます。なんかそれっぽいじゃない。

ところが、肝心の宮殿とインターコンチネンタルの徒歩ルートを検索すると約7km、1時間半の道のりと出ます。うーん、これはちょっと歩く距離じゃないよねえ。そしてサイトを見る限り建ったのが1977年。あれ、これは1966年初版ってことはまだ建ってなかったってことだ。うーん、メキシコオリンピックが1968年だということを考えると、1960年代のメキシコシティって、もっとおおらかな場所だったのかもしれない。とはいえ、キューバ危機が1962年、このお話もカストロがとかキューバがってな話がいっぱい出てきます(まあCIAだからね)。ではどうやってホテルを探し当てればよいだろう?1960年代のメキシコの古地図を色々見て見たけど、そんなことがわかるほどの解像度の地図は見つからない(1932年の地図のこんなのとか。でもこれはこれで楽しい)。

仕方がないのでそこは割り切って、レフォルマ通り沿いのそれらしい感じの名前で、宮殿から30分―1時間くらいの場所で探してみる。すると、Hotel Imperial Reformaというのがちょうど徒歩30分くらいのところにある。創業も1890年。建物が歴史的建造物を使っているのというのが”メキシコらしい”に該当してしまうかもしれないけれど、割とエレガントなヨーロピアンスタイルのホテル。小さすぎず、良い感じ。ただ、このあたりにEmporio Reformaというホテルもあって、名前のそれらしさも創業・徒歩圏内というのも合致してる。しかし、今知りたいのはおおむ書店であって、ホテルではない!と割り切って、大体あの辺ということにする(地図のブルーのエリア)。ちなみに「その通りはホテルからすぐのところにあった」の「すぐ」はオリジナルではwalking distanceなので、隣の通りとかではないということになります(さすがにそうだったら、そう書くだろう)。ホテルに戻るのに便利というわけですから、ホテルの近くであることは間違いない。さらに裏通りって書いてあるくらいだから、公園や大きな劇場とかに面しているとは考えにくい。と考えると仮想のホテルエリアの周囲の大通りに面していない場所(地図上緑のエリア)を考えてみる。このエリアをよく見ると上半分(宮殿への直線ルートより)は内務省とか公園とか広場とかそういうものが多いから、どちらかというと下半分側なんじゃないかと思う。このへんになると仮想に仮想を重ねているのでもうなんだかなあですが、そんなものさと思ってください。

このエリアに絞って考えると、明らかにそれ臭い場所が一か所。地図上で裏通りくさい表示なのは、ブリュッセル通りとリスボン通りのクロスしているあたりだ(赤いエリア)。早速グーグルマップに飛んでストリートビューを眺めてみる。ああ、車が入れないっていうのはこういうルートなんだ。もちろんグーグルの車も入れないから直接のストリートビューは見つからない。しかし、現在でこんなに静かな感じの場所だとすると、1960年の頃って、逆にこざっぱりなんてしてない超裏道ルートだったんじゃないか?という疑念がわいてきました。そこでまさかのあの1932年の絵地図再検討。よく見えないけれど、目印になるのはReloj Chino de Bucareli(白いモニュメントみたいな時計台が古地図にも見える)と大通り。ちょうどそのあたりは道が書いてあるけれど、主要道路の色がついてない。とするとちょうどよく裏通りといっていいのではないかしら?

というわけで、ながながと書いてきましたが、ブリュッセル通りの14番の付近にマーカーを立ててみました。メキシコに足を踏み入れたことはないけれど、地図にストリートビューにと”旅をしたなあ”という気分です。

elpapagayomarker

そんなの完全に架空のものでしょう、まったくなにもないところに作家が創作したかもしれないじゃない、とおっしゃるかもしれませんが、それでいいのです。

村上春樹がかつて、1973年のピンボールで書いたラジエーターのよく故障するフォルクスワーゲンに、その時代のフォルクスワーゲンにはラジエーターはないから間違っているといわれた時の

「あ、そうか、これはVWビートルにラジエーターがついている世界の物語なんだ!」と思って小説を読んでいただけると、僕はとても嬉しいです。(村上朝日堂の逆襲)

というお答えのように、そんな風に楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

追伸:現在のNotebookers Mapがこちら。”夢見るNotebookers”にピンを立てました。皆さんの”おおむ書店”をそっと教えてもらえるととても嬉しいです。

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Profile: こなま。趣味を仕事に持ち込んで、仕事から趣味を増やしている毎日(←結局好きなことしかやっていない)を過ごす、ざっくり人間。おいしいお酒のあるおしゃべりは大好物。一応モレスキンユーザー。現在Notebookers Mapプロジェクト進行中です。 年に数回更新するブログ Chips with everything

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