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アンナのペン

Posted on 23 2月 2016 by

またやってしまった。

最近、ボールペンの衝動買いがやたらと多いDutchです。
世間には、性能が良く手頃で洒落たペンが溢れていますが、選択肢が多すぎるというのも困りものですね。「もっと良いものがあるのではないか」とついつい手に取ってしまう。

理想のペンの姿を思い描くにあたって、いつも思い出すのはゴダール「女と男のいる舗道」のワンシーン。美しくて愚かで身勝手な女性が堕落していくというストーリーは、観ていると心底イヤーな気分になってくるのですが、主演アンナ・カリーナの美しさは、数あるゴダール作品の中でも随一です。

劇中でアンナの演じる主人公がカフェで手紙を書くシーンがあり、手元をクローズアップした映像が数分間続きます。見ようによっては退屈なシーンですが、白い紙をバックにしなるペン先の動きとシルエットが映える、美しい場面です。

そこで使われているのは、おそらくボールペンでも万年筆でもなさそうで、くれ竹のようなごくごく細いフェルトペンの一種の様に見えます。
そこそこ太いペン軸はいかにも持ちやすそうで、60年代の映画ですから、ノック式ではなくキャップがあるのでしょう。
その日暮らしの娼婦の持ち物なら、それほど高級なものではないはずですが、ともすれば幼稚にも見えそうな丸みのある筆記体にシャープな描線が繊細さをもたらします。

あのペンが欲しい。
ジーン・セバーグのセシルカットでもカトリーヌ・ドヌーヴのトレンチコートでもなく、アンナ・カリーナのあの何の変哲もないペンが、わたしにとっての「フレンチ」の象徴なのです。

ゆっくりと時間をかけて、わたしの手元にはいくつかの「アンナのペン」が 揃いつつあります。
100円程度の安物から、ちょっと贅沢なものまで、色も形も様々ですが、それらは全て「アンナのペン」。映画で使われているそのものではないのですが、わたしにとってそれを思い出させるものをそう呼んでいます。

仕事の段取りやロジカルな思考をするためのものではなく、ただ好きな映画のことを思い出してうっとりする楽しみのためだけにある、大切なペンたちです。
stylo

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