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岩波文庫これくしょん -岩これ- を始めた話 lemonade_air

Posted on 05 7月 2016 by

-岩これ- を始める

岩波文庫を購入してから到着までの間、過去に出版され現在は品切れになっているものを整理してみようと軽い気持ちで「岩波文庫これくしょん -岩これ-」を始めたのだけれど、これが沼であった。一世紀近い歴史を持つ文庫が沼ではない筈がない。

念のため。岩波文庫には基本的にはすべて「著者番号」と呼ばれる一意の番号が振られ、カバーの背表紙下側の色によって分類分けがされている。ちょうど図書館の日本十進分類法(NDC)のような分類を一つの文庫が持っている。これって結構すごいことだ。例えば夏目漱石であれば、

緑 (日本の近現代文学) 11番 として 緑11 というコードが与えられている。
私が今回棚買いした本をコードで表記するならば青の900番台(自然科学)となる。

細かなルールはWikipediaにある分類の説明が素晴らしい。
岩波文庫の歴史は古く最初の発行は1927年である。1927年といえばリンドバーグが大西洋を無着陸横断した年だ。その1927年から2016年までの間、岩波文庫の著者番号は何度か大きな変更が加えられ、再販、再番号割り当て、例外処理など、長期間運用されたデータベースにありがちな混沌をすべて兼ね揃えることとなる。加えて私が今回集めようとしているジャンルは自然科学の分野である。文学の性向が強い岩波文庫で何故自然科学を収集することはマイノリティである他ない。情報が少なく、品切れの本は稀少性が高い。収集前から沼の香りが漂う。

欠落した情報

手始めに岩波ブックサーチャーと呼ばれる本家のデータベースを利用し、検索条件に「岩波文庫」「自然科学 [青]」だけを選択し検索する。このブックサーチャーの素晴らしい点は現在販売されていない[品切書目]も同時に表示してくれることだ。Spreadsheetに吐き出して整理してみる。すると幾つかの情報の欠落に気づく。まず、検索結果として表示されている発行日フィールドに値が無いものが2冊ある。

青902-1: 科学と仮説 1938年2月 発行
青912-3: ビーグル号航海記 全三冊 下 1961年2月 発行

戦前に発行されている「科学と仮説」は情報がはっきりしない可能性はもちろんわかる。けれども「ビーグル号航海記 全三冊 下」は戦後になってからだ。色々と調べているうちに岩波書店が岩波文庫の目録として「解説総目録」という本を3巻セットで発行していることを発見する。品切れのためAmazonで古本を注文し、これらの本を検索してみる。発見。

科学と仮説 1938年2月25日 発行
ビーグル号航海記 全三冊 下 1961年2月25日 発行

共に2月25日であった。興味深い一致だ。次に著者番号順で並べてみると著者番号「青911」「青921」「青932」が欠番していることを見つける。ブックサーチャー側の単なる情報欠落かもしれないので、購入した解説総目録の自然科学を総当たりで調べて見る。「青932」は発見。

IMG_1449

青932-1: 雑種植物の研究 メンデル/岩槻 邦男,須原 凖平 訳 1999年01月18日 発行

生物の授業でも習ったメンデルの「優性の法則」について書かれている本だと思われる。Amazonで検索すると書籍自体は15年くらい前に再販されている。単純に岩波側のデータベースから欠落しているようだ 現時点(2016-07-05)では正しく表示されました。解決。問題は「青911」と「青921」である。これは解説総目録にもなかった。これに関しては現在私は「再番号割り当て」などで欠番しているケースを検討している。例えば解説総目録上は自然科学分野として分類されている、

青614-1: 科学論文集 パスカル/松浪 信三郎 訳 1953年12月05日 発行

という本は青614-1という番号が割り当てられている。現在の分類でいけば青600番台は哲学だ。こうした例から、元々は青900番台(自然科学)に当時は整理されていたものの、何かの理由で別分類に移行された著者ではないかと推測している。目録を総当たりで探すことも検討したのだけれど、この場合範囲が広くなり現在のところ保留中だ。

青921-0 (追記: 2016-07-26)

適当に書いたエントリだったのだけれど、予想に反し投稿を頂いた。

“「大学図書館なら、岩波文庫は出版時に購入してそう」と思ったので、大学図書館の本を探すことができるCiNii Booksで…青911はわからなかったのですが、青921はファーブル昆虫記 きんいろおさむし その他 じゃないでしょうか。第20分冊とあるので、ファーブル昆虫記だけで20冊はあったようです。…すごい。” – chidorix

早速CiNii Booksで検索を実施する。発見。

きんいろおさむし その他
岩波文庫, 青-88, 630-631, 青(33)-921-0, 第20分冊, 岩波書店, 1962.3

確かに921-0と番号が振られている。そういえばファーブル昆虫記はこの番号の近くではなかったかとSpreadsheetを見直す。あった。現在は青919-1~920-0までの10巻セットに再配置されている。ここで一本の線に繋がる。ファーブルの昆虫記が元々20巻セットであったならば、著者番号921-0はぴたりと一致する。

919-1~920-0 (1~10巻)
920-1~921-0 (11~20巻)

かつてファーブル昆虫記は上記3つの著者番号を跨ぐ20巻セットであった。
これが再編集を経て現在の、

919-1~920-0 (1~10巻)

に再配置され、結果的に921番が欠番となった。
通常著者番号は1から始まるので、921-1しか可能性を考えずに探していたけれど、実際は前の番号から続く大作であった。見つからない筈だ。当初推測していた「著者番号整理説」ではなかったけれど、とても嬉しい。ありがとう、chidorixさん。一つは解決しそうだ。残るは青911。

ルーサーバーバンク

Spreadsheetを整理しているうちにもう一つ気になる点を見つける。現在品切れになっている「植物の育成」という本が、岩波の自然科学では異例の長編8巻組なのである。一つのシリーズとしてはファーブルの次に多い。私は恥ずかしながらルーサーバーバンク(Luther Burbank)という人物を知らなかった。教科書にも載っていた記憶が無い。私より256倍くらい勉強の出来たであろう同年代の知人数人に尋ねるも、やはり知らないという。俄然興味が湧く。

「日本ではあまり有名ではなく、米国では有名な生物学の人間なのかもしれない」とも考え、高校までを米国で教育を受けた同僚に聞いてみる。

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知らない。英語のWikipediaを読むと、むしろアイルランドの方が有名なのかもしれない。去年泊めてもらった同僚に聞いてみる。

luther burbank is famous for helping with Irish famin

というWikipediaをコピーペーストしたような回答が返ってくる。アイルランドでは有名なんだろう、ルーサーバーバンク。Wikipedia以外に何か情報が無いかなと色々探すけれど、残念ながら日本語はどれも疑似科学に近い内容なのでここには記さない。Wikipediaの英語版が今の所一番素晴らしい。日本語情報が少ないだけに再販されないかなと少し期待する。

ルーサーバーバンク、彼はボタニスト(植物学者)だけれど、最近で一番有名なボタニストはおそらく映画オデッセイ(原題:The Martian)に出てくるだろう。映画が人気の頃にこんなこともあったのだから、同じタイミングで再販していればボタニスト繋がりで盛り上がったかもしれない。芋と本。檸檬と本を置いた何処かの書店もあったのだから悪くないプロモーションだと思う。

少し長いけれど、本が届くまで楽しんだ-岩これ-の報告でした。

Name:
Profile: No, I am sheep driver.

  • chidorix

    はじめまして!岩これの話、興味深く拝見しました。chidorixと申します。

    で、「大学図書館なら、岩波文庫は出版時に購入してそう」と思ったので、大学図書館の本を探すことができるCiNii Books(http://ci.nii.ac.jp/books/)で青911と青921を調べてみました。
    青911はわからなかったのですが、青921はファーブル昆虫記 きんいろおさむし その他 じゃないでしょうか(http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN04742713)。
    第20分冊とあるので、ファーブル昆虫記だけで20冊はあったようです…すごい。

    CiNii Bookusのデータが間違っていることも無くはないので、現物を見ないと確実なことは言えませんが、参考まで。
    (まぁ、大学図書館の図書登録時に書誌情報は必ず見るはずなので、岩波文庫のような日本中に何百冊とあるものの情報が間違っていることは少ないと思います)

    • lemonade_air

      Chidorix-san,

      初めまして、Chidorix-san。ゲーム会社から訴えられそうなタイトルなのですが、興味をお持ちいただきとても嬉しいです。大学図書館の蔵書を探すデータベースなんてものが存在するのですね。そこを検索することは思いつきませんでした。素晴らしい。

      早速調べてみたのですが確かにありました。

      きんいろおさむし その他
      岩波文庫, 青-88, 630-631, 青(33)-921-0, 第20分冊, 岩波書店, 1962.3
      http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN04742713

      これですね。実はファーブルの昆虫記ですが、現在は青919-1〜920-0までの10巻セットになっています。ファーブルの昆虫記が元々20巻セットであったならば、Noは921の番号に重なります。

      919-1~920-0 (1~10巻)
      920-1~921-0 (11~20巻)

      青(33)-921-0

      として枝番までが推測が完全に一致します。ちょっと鳥肌が立っちゃいました。

      「元々20巻であったものが10巻に整理され、結果921が欠番した」

      でほぼ間違い無いでしょう。本は私の家の近くの上野学園 図書館にもあるようです。たまたま放送大学の科目履修生としてこの秋から不良学生として学ぶこととなりますので「もしかすると」名ばかり大学生ということで上野学園の図書館にもお邪魔できるかもしれませんね。折角ですので機会があれば訪れて実本を見てきます。

      Chidorix-san, もしよければChidorix-sanの名前込みでこのblogエントリーに追記したいのですが大丈夫ですか?

      丁寧にResありがとうございました。

      • chidorix

        思いがけず返信をいただいて動揺しております(笑)。
        追記の件、ワタクシはまったく構いませんので、ご自由にどうぞ〜。

        大学生になられるとのことで、CiNiiを使う機会があるかもしれませんね。
        CiNiiには CiNii Articles(日本の論文を探す)やCiNii Dissertations(日本の博士論文をさがす)もありますので、ぜひ使ってみてください。

        …何だか、じょーほーがくけんきゅうじょの回し者のようなコメントになってしまいました(笑)。
        それでは。

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