8月の星座〜獅子座とヘラクレス

Posted on 15 8月 2017 by

、『カドモスとハルモニアの結婚』を読んでいるのですが。
えー、ギリシャ神話です。作者 ロベルト カラッソ。
すごい。面白い。

話変わりまして。アイルランドのウィリアムトレヴァーという作家がいます。
トレヴァーが書いた話ではなく、彼自身が体験したエピソードで、すごくいいなあ、と思ったものがありました。
トレヴァーの知り合いの郵便配達人が話好きで、よく話をしてくれる、例えば、以前に聞いたのと同じ話であっても、どこかが違う。
細部が微妙に違ったり、エンディングが違ったりする。その話をトレヴァーは喜んで聞いていた、という、そういうエピソードでした。
なにが嵌まるのかわかりませんが、わたしも、こういう「同じだけど、どこかが違う」話がとても好きで、いいなあ、そういうのを聞いてみたい、読んでみたいと思っていました。
それを丸ごと後押ししているのがこの『カドモスとハルモニアの結婚』でした。

ギリシア人は同じ物語が様々に組み合わせられて語られるのを、当たり前のようにいつも耳にしていた。しかも正しい説を知るために参照すべき究極の威光はなかった。ホメロスは、思い浮かぶ究極の名ではある。だが、ホメロスが数ある物語のすべてを語っていたわけではない。それゆえ、神話は多くの面に分かれた扇を広げてみせる。ここでは、異説こそ起源である。(略)そのように枝分かれした物語のひとつひとつに、ほかの物語が反映され、同じ布地の裾のように、すべての物語がわたしたちをかすめてゆく。
(解説より)

異説こそ起源である。
どんなに矛盾があろうと、時間的にねじれていたとしても、それはオリジナル。いいなあ、何とも力強い後押し。

前振り終わり。
8月です。
(やたら注釈の多い)12星座のギリシャ神話紹介、8月は獅子座です。
おひつじ座&おうし座ふたご座かに座でも記事を書きました。よろしければドウゾー)
獅子座もかに座と同じく、春に見える星座だそうです。
獅子座

7月のかに座の記事で、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスについて書きました
えー、今月8月の星座、獅子座のライオンもまた、ヘラクレスの12の冒険に出てくるモチーフです。
豪傑! 英雄! 力持ち! な代名詞のヘラクレスですが、彼は生まれついての苦労人で、ギリシャ神話最高神(※1)の妃(※2)に嫌われ(※3)、無茶な運命を押し付けられ、冒険を強制され、その境遇をシュクシュクと受け入れている、そういう半神半人です。

かに座の記事でも書いていますが。
ヘラクレスは、テバイ王クレオンを助けて、その娘メガラと結婚します。
3人の子供に恵まれ、幸せに暮らしていたのですが。
(思い出したように)ヘラの怒りがヘラクレスに向けられます。
ヘラクレスは狂気を送り込まれ、子供たちを火に投げ込んで殺してしまいます。
正気に戻ったヘラクレスは、人生をやり直すためにアポロンの神殿へ行き、神託を受けました。
「ミュケナイのエウリステウス(※4)王に仕えて、10の冒険をやり遂げるように」と「これからは「ヘラの栄光」ヘラクレスと名乗るように」という内容の神託でした。

その10の冒険ですが。
1)ネメアのライオン退治
2)レルネのヒドラ退治
3)ケリュネイアの鹿を生け捕りにする
4)エリュマンテス山の猪を生け捕りにする
5)アウゲイアス王の牛小屋掃除
6)ステュパリデスの鳥退治
7)クレタ島の牡牛を生け捕りにする
8)ディオメデス王が飼っている人食い馬を生け捕りにする
9)アマゾン族の女王の帯を手に入れる(※4.5)
10)ゲリュオンの三つ頭の牛を生け捕りにする

そしてもうふたつ追加。
11)ヘスペリデスの金のリンゴを手に入れる
12)冥府の番犬、三つ頭のケルベロスを生け捕りにする

となっています。生け捕りが多いのは、やっぱりその方が難しいからかなあ。
そして12個あるのは、そのうちの二つをノーカウントとされたからです(※5)。
このひとつめの冒険(※5.5)、ネメアのライオン退治、そのライオンが8月の星座、獅子座です。

このライオンは、テュポンという怪物(※6)を父に持ち、エキドナというこれまた半人半蛇の怪物(※7)を母に持つ由緒正しい怪物で、その皮は武器を通さず、矢も剣も役に立たず、とにかく強い、とにかく不死身、という設定てんこ盛りの怪物です。
ヘラクレスは、ライオンの住処の洞窟で仕留めようと一計を案じます。
ふたつある入口のひとつを岩でふさぎ、ライオンが洞窟へ戻ったところを襲いかかり、棍棒で殴りつけ、格闘し、ついには絞め殺すことができました(※8)。
ヘラクレスは、そのライオンの皮を剥ぎ(※9)、以後、鎧、兜として被るようになります。
ライオンが、勝利、英雄の象徴となったのは、この冒険からだと言われているようです。
ヘラがこのライオンの戦いを評価して、天に上げ、星座としたのだそうで(※9.5)。

ヘラクレスの冒険は、他にもたくさんありまして。
トロイ戦争に参加した、
アルゴ号の冒険に参加した、
うっかり者の友人(※10)が冥府に捕われていて、別件で冥府に来ていたヘラクレスが助け出す、などなど。
あと、12の冒険に取り組んでいる最中に、ものすごく緊急の別件の案件を抱えていたこともありました。
半人半馬、ケンタウロスのケイロンはヘラクレスの師のひとりでした。
ケンタウロス族とお酒を飲んでいたヘラクレスが、何が原因だか乱闘になって、ケイロンを矢で傷つけてしまいます。
その矢にはヒドラの毒が塗ってあったため、ケイロンは非常に苦しみますが不死身のため、死ねません。
そんで、ヘラクレスはケイロンから、不死の恩寵を誰かに譲ることで楽になれる、死ぬことができると聞かされます。
ヘラクレスはエウリステウスの命じる冒険をこなしつつ、「あーもー! 早く冒険を終わらせたいー! ケイロン先生助けたいーー!!」とばかりに、不死を願う誰かを探すことになります。

そして。
ヘラクレスの最期もまた、劇的であります。
英雄としての華々しい死、戦場での戦士としての潔い死ではなく、えー、非常な苦しみの中で天へ還ります(※11)。
ギリシャの詩人たちは、なぜ半人半神の英雄ヘラクレスに、こういう死に方を与えたのか(※12)、と思ったりします。
なんていうのかなあ。
ヘラクレス、「王に生まれつかなかった者」、「冒険と試練に生きた者」であり、怪力を別にすると、ひととして「より自分たち(ヘラクレスの物語を語る詩人たち、聴衆たち)に近い存在」だったのかなあ、とか。

次回は、9月、乙女座です。わたし的にすっごく楽しみな9月! 乙女座! です!

===以下、注釈===
※1:ゼウス。おまけにヘラクレスの父親。
※2:ヘラ。ヘラクレスというのは「ヘラの栄光」という意味だそうです。
ヘラに嫌われているのに、なぜこういう名前になったかというと、これまた諸説あり。
ざっくりいうと「そう名乗るように神託があったから」。
※3:ゼウスとヘラは夫婦で、えー、ヘラクレスの母親は別の女性のため、えー、ヘラに嫌われた、と。
※4:前の記事でも書きましたが、エウリステウス、ぱっ と見て、この文字列であれば「エリエリ」とか「エリテー」とか読みやすいように読んで頂ければ、と思います。ぜひ。
※4.5:これ、冒険なのかなあ… 帯の代償が「アマゾンの女王と子づくりをすること」だそうで。
や、ヘラの邪魔が入ったので、これまた戦闘になるんですが。
※5:ヒドラ退治と牛小屋掃除がノーカンになったそうです。
ヒドラ退治は、ヘラクレスひとりじゃなくて、甥っ子と一緒に退治したから。
牛小屋掃除は、30年掃除をしていない3千頭の牛がいる小屋を綺麗にするという課題で。
ヘラクレスは、牛小屋の持ち主アウゲイアス王に「1日で掃除できたら、牛の1割をもらう」と言い、力技で1日で片付け、その1割の牛をもらったんですが。それをエウリステウスに「報酬目当ての冒険なんてダメ」と言われて、ノーカンになりました。
※5.5:ひとつめの冒険とされていますが、これはエウリステウスに仕える前の冒険だとも言われているそうです。
ライオン退治ってカッコいいし、冒険に入れようぜー! 的に入れられたのかなあ、と思います。
異説こそ起源である。 起源なんだよ、いいんだよ。
※6:とにかくすごい怪物。巨人とも蛇とも言われていて、造形の設定さえ「とにかくすごい」。
※7:とにかくすごい怪物たちの母親。このライオンや、レルネのヒドラや、ケルベロスも産んだと言われている。
※8:格闘とか、戦いとか、わたしが書くと間延びするなあ。
※9:矢も剣も通さない皮をどうやって剝いだのかというと、ライオンの爪を使ったのだそうです。とんちのようですが、こういうところに、きっちり理屈を通すところがなんだか律儀でいいなあ、と思います。
※9.5:ヘラは「なんで負けるのよ! きー!!」てならずに、(かに座も獅子座も)負けても戦いを評価して星座にする、ところがいいなあと思います。
※10:冥府に降りているだけで死んでいない生者。冥府に降りてきた理由が「冥府の王妃をさらって来よう」というもの。
※11:亡くなったあと、天界に迎えられ神となります。ヘラにも許されてヘラの娘を妻にします(よく許されたなあ)。
そんで星座にもなります。星座になると「ヘルクレス座」と呼ばれます。

※12:ヘラクレスの亡くなり方は、(わたしが読んだ範囲では)バリエーションがありません。ひとつだけです。書き手の足並みが揃っているっぽいです。

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Profile: あなたと一緒に歩く時は、ぼくはいつもボタンに花をつけているような感じがします。

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