11月の星座〜さそりの火とオリオン〜笑う英雄と笑わない英雄

Posted on 11 11月 2017 by

12星座(ムダに注釈の多い)紹介、11月のさそり座です。前の記事で、10月てんびん座、11月いて座、と11月の星座、さそり座をとばしてしまったため、前後しての紹介です。
4月5月の牡羊座と牡牛座6月のふたご座7月のかに座8月の獅子座9月の乙女座10月と11月のてんびん座&いて座 があります。よろしくドウゾー)

さそり座、夏の南の空に見える星座です。
Sの字に見えます。このカタチから、日本では、魚釣り星、鯛釣り星と呼ばれていたそうです。
ニュージーランドの神話でも、さそり座は、島を釣り上げた釣り針が天に上がり、星座になったと言われているんだそうです。
もっとも明るい星がアンタレスという一等星で、2世紀のギリシャの天文学者プトレマイオスが、この名前を付けました。
語源は「火星の敵」「火星に対抗する者」を意味する「アンチアーレス」
時々、アンタレスの近くに火星が来ることがあり、ふたつが並ぶと、どちらがより赤いか、競っているように見えるため、この名前がついたそうです。
日本では、赤星、酒酔い星、豊年星(※1)と呼ばれていました。

そして。やっぱり、さそりの星、アンタレスというと。
賢治先生の『銀河鉄道の夜』から。

川の向う岸が俄かに赤くなりました。楊の木や何かもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のように赤く光りました。まったく向う岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗いろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。
「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニが云いました。
「蝎の火だな。」カムパネルラが又地図と首っ引きして答えました。

あと、三等星のμ(みゅー)星というのがあって、これが三等星と四等星がくっついている二重星で、ひとつに見えたり、ふたつに見えたりする。これが、ふたつの星が交互に光っているように見えたので
 相撲取り星
 米つき星
 麦たたき星
と呼ばれていたそうです。
例えば、今、新星が発見されて、やっぱり同じようにふたつの星が交互に光っているように見えたら、何て名前になるだろうなあ。
さそり座星図

えー。さそり座の話です。
神代のギリシャにオリオンという狩人がいました。
海神ポセイドンと妖精エウリュアレ(※2)の間に生まれ(※2.5)、水中を自由に歩く能力を持っていました(※3)。
たくましく成長したオリオンは、冒険を求めて旅立ちます。
すったもんだの末(※4)、クレタ島でオリオンは、月の女神アルテミスと仲良くなります。
月の女神アルテミスは、狩りの女神でもあり、また純潔を重んじる処女神でもあります。
その女神に恋人ができた、結婚するかもしれない、相手はイロイロ問題を起こし過ぎている狩人のオリオン、ということで、ギリシャの神々は「どうしたものか」と色めき立ちます。
そんで。アルテミスのふたごの兄アポロンは、問題の多そげなオリオンが気に入らず、妹がそんな男と(というより、神でもない存在と)結婚することをよしとせず、さそりをオリオンにけしかけます。さそりはオリオンのかかとを針で刺し、オリオンは海の中へ逃げます。
そんで、アポロンはオリオンを光のカタマリに見せかけます。
そんで妹アルテミスに「あの光のかたまり射抜ける?」と(最近、彼氏と遊んでばっかりだしさー、弓の腕落ちてない? などと、嫌味を織り込みつつ)尋ねます。
アルテミスは、海に浮かぶ光のかたまりを見事に射抜きました。
それがオリオンだと知り、恋人の死を悲しみ、医学の神(※5)に生き返らせるように頼みますが、さすがに叶えてはもらえず。アルテミスは、せめても、と、星座としてくれるよう、父ゼウスに祈りました。
その願いは聞き入れられ、棍棒を持ち、ライオンの皮の盾を掲げた(※6)姿のオリオンが天に上げられたそうです。
そして、オリオンを傷つけたさそりもまた、天に上げられ星座になりました。

この太陽神と月神の双子神のエピソード以外にも、オリオンの死因として。
◎オリオンが必要以上に獣を狩りまくるので、大地の女神ガイアが激怒してさそりをけしかけ、その毒針で死んだ。
◎オリオンがとにかくえらそーなので、最高神ゼウスの妃、ヘラが激怒してさそりをけしかけ、その毒針で死んだ。
◎オリオンがアルテミスに円盤投げを挑んで、神と競おうなど身の程知らず! と殺された。
◎アポロンが片思いをしていたオーピスという乙女にオリオンがちょっかいを出して、嫉妬したアルテミスに殺された(※7)。
◎あけぼのの女神エオスとオリオンが仲良くなったのを見て、アルテミスが嫉妬して殺した(※8)。

ヘラクレスは亡くなるときのエピソードがひとつだけなのですが、オリオンはたくさんあるのだなあ。
わたし、ギリシャ神話の登場人物で、好きな順番と言うと
オイディプス>(果てしない距離があって)アキレウス>(更に距離があって)>(やや好きかも)テセウス>(やや好きかも2)ヘラクレス
くらいの順番なんですが。なんだろう、と思って、ああ、そうかとわかったのが「生まれた時から、動かせない悲劇性」なのかなあ、と。
オイディプスもアキレウスも、生まれる前からあんまり嬉しくない予言をされていました。
その予言が成就されないように手を尽くすのですが、その行動こそが予言の完成により近づく、いう皮肉な流れとなります。
オリオンがランキングされていないのは、そういう翳りがないからかなあ、と。

えー、次回ですが。あ、次回は12月のいて座のはずなんですが、いて座はもう書いてしまったから、じゃー、次は1月? 1月はやぎ座ですね(今回はちゃんと調べた)。1月、やぎ座の物語をまた紹介いたします。

===以下、注釈==
※1:豊年星というとおめでたそうなのですが、おとなりの中国では、この星が見えると禍いが起こるとあまり歓迎されなかったようです。
※2:また舌をかみそうな名前ですが、ダイジョブ、この名前はここだけで、もう出て来ない。
※2.5:別の説として。ゼウスとポセイドンとヘルメスが散歩していて、ヒュリアという国に通りかかったそうです。その国王が3柱の神をもてなしました。3柱の神はご機嫌になり「願いを叶えてやろう」と言います。
国王は「跡継ぎが欲しい」と望みます。3柱の神は、牡牛の革袋におしっこをして、それを国王に渡し、9か月地中に埋めて取り出せば子供ができると伝えました。
そこから生まれたのがオリオン、というそういうパターンもあるようです。
ギリシャ語で尿は「ウーロン」といい、オリオンに発音が似ているから? とか。
※3:訓練して歩けるようになったという説もあり。
この12星座のギリシャ神話の記事、初めて読まれる方へ。
ギリシャ神話というのは、ギリシャの、その土地土地でまとめたもので「これが正統派! 本家!」というものがありません。なので、ふつーに「諸説あり」で、その諸説こそが起源、という、すばらしー神話群なのです。
ロベルト カラッソというイタリアの作家が「(ギリシャ神話は)異説こそ起源」と書いていて、この言葉を2017年は積極的に押して行きたいです(あと2か月ないけど)。
※4:結婚した相手が、いきなり最高神の妃の怒りを買って殺されるとか、国を荒らしまくる野獣を退治して王女と結婚しようとして失敗するとか、その時に失明してしまうとか、とにかくてんこ盛りの半生だったようです。
※5:もっとダイレクトに死者の神ハデスに生き返らせるように頼んだという説もあり。
※6:星図などを見ると、ライオンの皮を掲げていますが、えー、神話のエピソードで、わたし、これ、読んだことないのです。※4で、国を荒らしまくる野獣がライオンだったのかな、と。ていうか、ライオンを退治して、それを身につけるというと、ヘラクレスとかぶるから?(ヘラクレスは、冑代わりにライオンの皮をかぶってたのだったな)
※7:アポロンが片思いっていう情報、いる? と思うんですが。太陽と月の双子神は、お互いの恋人という存在にもの申したい、という、そういう機微があるようです。
※8:このあけぼのの女神エオスがオリオンと仲良くなったのにもワケがありまして。エオスの清々しい美しさに戦いの神アレスが懸想します。愛と美の女神ヴィーナスはアレスと事実婚の関係でして、アレスの心変わりに怒ったヴィーナスは、エオスに「誰を見ても恋心をいだくようになる」という呪いをかけます。
エオスとオリオンが仲良くなったのも、この呪いから。(やー、でも、彼氏が心変わりしたら、アルテミスは彼氏を殺し、ヴィーナスは彼氏じゃなくて相手の女性を呪う。アルテミスとヴィーナス、性格が正反対だねー)

しかし私が感動するのは彼の栄光でもなく、二人の幸せでもなく、責苦を受けた男の唇に浮かんだ微笑、つまり、欲望が最も甘美な拷問であったということ、この婉曲な表現に私は心うごかされるのです。
彼らは怨み骨髄といったありさまで天幕の中にとじこもり、死んだ友人を悼んで泣き叫ぶ。占領した町の周りを、敵将の死骸を脚に綱つけて曵きずり廻す。だが、じっさい、『イーリアス』にはアキレウスの微笑が欠けているのですよ。

『東方綺譚』の『マルコの微笑』
マルグリット ユルスナール 訳:多田智満子


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Profile: あなたと一緒に歩く時は、ぼくはいつもボタンに花をつけているような感じがします。

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