クリスマス・モレスキン裏話「かんざし」の話
最初に告知!
多様な変化を見せるクリスマス・モレスキンは久しぶりに東京に帰ってくることになった。
Notebookersのライターである@midori9binさんと@kotori1982さんの二人展の会場内で設置して頂けることが決定!!
「アートライフ2人展」
日時:8/18(Sat)〜8/26(Sun) 11:00-17:00
場所: 河の手ギャラリー 神奈川県海老名市河原口(かわらぐち)1丁目21-20 厚木駅下車徒歩2分
TEL: 046-235-8446
※詳細は@midori9binさんブログまで: http://ameblo.jp/tukurinbo/
※メールでの問い合わせ:midori9bin@gmail.com まで
改めて「クリスマス・モレスキン(通称:クリモレ)」について書く。
当サイト管理人ことタカヤは、クリモレのオーガナイザーである。
そのため、このノートブックを遠くから常に見守っている。
クリモレは、旅をするモレスキンノートブックに「クリスマスの思い出」のことを書き続けていこうというコンセプトの元 生まれたノートブックである。主にカフェに設置されたり、各国の担当者といっしょに旅をして様々な人々に出会っては、暖かなメッセージやイラストレーションや切り絵やコラージュ多種多様な思い出が書き込まれている。
今では、ぶ厚いのが3冊になってます。
札幌から出発して岡山・大阪・東京・兵庫・ロンドン・イタリアのモレスキン本社・再び東京・再び札幌・京都・エジプト・ドバイ・福岡・ベルギー・バンコク〜と旅をしていて、最近はカナダのバンクーバーでお世話になっている。すこし自分の分身のような気分がしているので、このノートブックが遠くで旅をして多くの人に出会うことは本当にうれしい。まるで自分が旅をしているような気分になるのである。少なくとも、このノートブックに奇跡的に出会って、そこに何かを書き残した人は同じように感じているのではないかと思う。
さて裏話。
昨年9月にダイヤモンド社より出版された「モレスキン 人生を入れる61の方法」の著者をさせていただいたのだけど、そこにクリスマス・モレスキンについて書いたページがある(194ページ)。実はこのページは最初クリスマスモレスキンのゆかいな旅について触れようと思ったのだけど、何回か原稿を書き直しているうちにやめてしまった。
いろいろと考えた結果、最初にトルーマン・カポーティの「あるクリスマス」の引用をして、クリスマスのことを書いて、最後にほんの少しクリスマス・モレスキンに触れただけにしてみた。
自分の中で、このノートブックについて、説明をしきってしまうのがあまり好きじゃない。
昔からの古い友人で、世界の数カ国を旅する友人の女の子がいる。
札幌に立ち寄った時に必ず声をかけてくれて、いつも軽く一杯やるのだけど、その度にみやげ話が楽しい。彼女がひとつの場所に滞在して、そこから場所を移動する理由はただ一つで「知り合いができて、その町を案内できるようになってしまったら悲しいけれどその場所から去り時なの」という。
時折赤い布を引っ掛けたマサイの男が槍を持って、ライオンのいる草原を一人で歩いていくのをよく見かけたらしい。現地の言葉で話しかけてみたところ彼は「ライオンなんて怖くないぜ」と言い「毎日、ただ普通に暮らしてるだけさ」と彼女に向かって熱心に話した。
いろんな町の空を見続けるのが彼女の旅である。そんな話を聞きながら、軽く嫉妬する。
「クリスマスの思い出」を書き留めるというコンセプトのノートブックが、世界の多様な人々に触れる度にそのコンセプトを保ったまま、同じく多様な姿に変わっていくのは、まるで一人の人のようだなぁと思った。遠くでだれか友達を作って、その人の孤独にほんの少しだけ触れて、また旅をするために立ち去る。そんなかんじ。一人の旅人について、語り尽くすというのは難しい。一人の旅人について、説明するというのは難しい。
「クリスマス・モレスキン」というノートブックは、軽やかなステップで移動して、いろんな町の空を見続けていて、いつも軽く嫉妬している。
このノートブックには、ほんの少しだけ仕掛けがあって、開いた人だけが知ることのできるサプライズを含んでいる。最初の1冊目の数ページを読むとそのサプライズについてわかるので、いつか出会ったときは味わってみてほしい。
遠くの誰かを喜ばす「サプライズ」というものは、とてもとてもしあわせなことだ。
このとてもとてもしあわせなことも、地平線の向こう側の誰かが、ひとりのときにふと考えたことで、これも孤独の一種である。このノートブックを目の前にしたときの遠くの誰かの孤独は、姿を変えて、遠くの誰かをとてもとても幸せにする。ふしぎなもんだ。
クリスマス・モレスキンの中にはいくつも秘密があって、そのうちのひとつに「かんざし」がある。
これは僕の仕事の関連で、札幌のかんざし職人ツバクロさんに出会ったことがきっかけ。
世界を旅するクリスマス・モレスキンについて説明したところ、モレスキンラージサイズにぴったりのしおりとして使うことのできるかんざしを作ってくれた。彼は、札幌のとあるスープカレー屋さんのマスターであり、かんざし職人という変わった経歴を持っており、 スープカレー屋さんのカウンターで話し込んで、自分の経歴も話して意気投合。モッズの姿でヴェスパを乗り回し、ボー・ディドリー風の四角いギターを愛用し、ジャポネスクを愛するかっこいい兄さんなのである。深夜の公園や居酒屋で、何度かの打ち合わせ(飲み会ともいう)を行い「クリスマス」をイメージしたデザインでかんざしを作ってくれた。
彼のかんざしの製法として、一枚の真鍮を削りだすところから始まる。
たまにお店に顔を出すと、カウンターの奥でお客さんのいない時間にヤスリで愛おしそうに金属を削っている彼の姿を見かけることがあった。何日も何日も、この一本のかんざしの前で時間を費やしてくれたのを知っていたので、麻の布で丁寧に包まれたものを紐解いて、現れた姿に驚いた。緑と赤に彩色された玉の部分は黒檀を削って丸めて、日本画で使われる鉱物から作った顔料で、クリスマスをイメージして緑と赤で彩色したと聴いた。絶妙なのはその全長で、ちゃんとモレスキン・ラージのサイズにぴたっと挟まってブックマークとして使えるように長さを調整してくれたとのこと。
たった一枚の真鍮の板から、このような面をもった一本の曲線を削りだすというのは、どれくらいの時間がかかるものなのだろうか?そういうことを考えながらかんざしを眺めると、とても愛おしく見えた。
完成した一本のかんざしを受けとった時に、以下の言葉が添えられていた。
かんざしは、旅先でじっさいに使ってくれると嬉しいです。
旅先で、誰かの姿に留まることができたなら、とても幸せなことです。
その後、京都にクリスマス・モレスキンが滞在した時に、担当してくれた@riccasnowさんから一通の写真が届いた。
着物姿で、「モレスキン 人生を入れる61の方法」の発売日に、着物姿でお出かけして写真を送ってきてくれたのである。
※色っぽいうなじにも注目。
ツバクロさんは続けてこのように語る。
「一本の細長い棒には神が降りると信じています」日本では古くからそう信じられ、簪の由来でもある。邪気をも払うその道具は豊かな気候風土に恵まれるこの国で、感謝し培った感覚を形にし 発展してきた日本人のきれいな心で目の前に在る物と接していたいという気持ちが簪に現われているそうです。
簪の形のモチーフに耳掻きというのがあります、旦那様を膝枕して耳も掻ければ尖った先端で喉も突ける、この話しを聞いた時、女性の「情念ある道具」だなと簪という物に興味を持ちました。
19世紀中頃のヨーロッパにおけるjaponismeには日本のデザインの構図、生活と思想について取り入れるという動きがありました。彼らの目には新鮮で斬新、静粛さと落ち着きを持ち合わせた不思議な国と映った様です。日本の核心に触れようと真摯に向き合い取り組んだ 文化に富んで美に長ける国々に感謝と感銘を受けます。まさに今 私たちが日本について知るべきです。簪作家 ツバクロ 1974/5.21
kanzashi簪tsubakuro 代表
「クリスマスの思い出について書き留める」
そのように始まったクリスマス・モレスキンだけど、多くの人に出会って多彩な変化をしている。
あなたが出会ってそのページをめくる時、多くの言語で書き込まれ、多彩な方法で書き留められたページに驚くかもしれない。
日本に帰ってくるのは本当に久しぶり。そしてわずかな期間での東京滞在となるので、ぜひ河の手ギャラリーに足を運んでみてね。
海外の人からみたクリスマス・モレスキンはどのように映ったかな? 日本の雰囲気も伝わっただろうか。
自分もふたたびこのノートブックに再会して、書き込まれている内容をゆっくりと見るのを楽しみにしている。
クリモレはまだまだ秘密が隠れています。
クリモレのゴムバンドに留められた「黄色い小鳥」の冒険についても書いてみようかな。