此処から東へ東へ、東の最果ての断崖に、明治のはじめに造られた白亜の灯台が立っている。碕の高さと塔の高さを合わせると51mにもなるその灯台の灯は、海から見るときっと、星のように見えるのだろう。 灯台は ”フォグホーン” を備え、周囲を霧で閉ざされた時にはそれを鳴らしたという。過去の記念に残されたサイレン、今はもう、その音が海に放たれることはない。
キャラメル
朝、駅までの途中のコンビニでキャラメルを買って、ポケットに入れた。
キャラメルは、旅の支度の最後、仕上げに持つ旅行には欠かせない携行品の一つ。 長い旅であれ短い旅であれ、旅行は刺激と緊張の連続だ。ちょっと疲れた時、ちょっと気分を変えたい時のための、キャラメルは旅の友。人混みの騒々しい音や匂いとか、自分にとって好ましくない刺激で息苦しく感じた時に、空気と時間を自分に戻すおまじないのキャンディでもある。
夜の匂いから朝の匂い
6:00、いつもの通勤とは逆方向の電車に乗る。休日なのでそれなりに空いてはいるけれど、乗客の半分くらいは朝まで都心で遊んでいたらしいぐったりした人達で、車内は夜の電車の匂いをひき摺っている。
駅に着くたび、ふらふらと一組降り、二組降り、途中、何本かの線が混じる駅でほとんどの “夜組” が降り、代わって乗ってきた人々で車内は平日の通勤電車を薄めたような朝の匂いに変わった。
ターミナル駅
6:50、千葉駅着。次の総武本線の乗換えまで20分と少し。
持参の魔法瓶のお湯でコーヒーを飲めないかと駅構内のコンビニに入ってみたのだけど、紙コップも紙コップ入りのインスタントコーヒーも見つけることができなかった。そうか、コンビニといっても駅のキオスクの派生種だ、売ってるものもそういうことかと、自分なりに納得して店を出る。
窓からの景色
これから乗る総武本線のホームに降りると電車はもう着いていて、ぽつんぽつんと疎らに乗客が座っていた。
車両の座席は通勤電車と同じロングシート。ちょっと残念に思いながら何処に座ろうかとゆっくりホームを進んで行くと、先頭車両でボックスシートを見つけた。いそいそと乗り込む。ボックスシートだけじゃなくて、特急列車のような大きな窓もある。通勤電車と観光列車(?)を合わせたようなおもしろい車両。大きな窓に面したボックスは少ししかなくて、そのうちのひとつに座る。
こんな大きな窓がついているのだから、景色も良いに違いないとスマホの地図(以下『地図』) で線路をたどってみる。……海が見えるわけでもなく、千葉から成田の南を通って銚子まで進む、どう考えてもただの千葉(失礼💦) だけど、いやいやこんな大きな窓がついているのだから、何か見るべきものがあるはずなんだと、どんな景色が見えるのかソワソワしながら発車時刻を待つ。
車窓 ─ 藤と白鷺
7:15。モノレールの線路を見上げながら、千葉市のよくある地方都市っぽい景色で出発した列車。ここから2時間、各駅停車でトコトコと進む。
市街部を抜けてしばらくすると、景色は千葉の郊外らしいものになってきた。いや、といっても、わたしは関東の生まれじゃないし、昔、外房の方に何度か行ったことがあるのとあとは成田空港しか行ったことがないくらい千葉には縁がないので、これが本当に “千葉らしい” のかどうか、本当のところは分からないのだけど、何となくわたしの中で千葉の内陸の地形はこんな感じと思っている景色、“想像上の千葉” の景色が車窓から見えはじめた。そうだ、南総里見八犬伝はこんな感じじゃ…!と思ったところで、南総はもっとずっと南ではないかと気付く(お、おぅ💦)
平坦な広い土地に、水の入った水田が連なる。今はちょうど田植えの季節のようで、小さな稲苗の明るい黄緑が、たぷたぷした黒い田んぼの水からちらちらと連なって見える。畦道の途中にはところどころ大きなこんもりした木があって、こういう木の下で、畑仕事のお昼にお弁当を食べたりするのかなと想像する。
田園風景を囲んで、山と言っていいのか森といっていいのかよくわからない鬱蒼とした緑の台地。山、というほど盛り上がりはなくて、延々と平たく高さが続いている。電車はその森の中を抜ける。あちこちに、柔らかな紫の、大きな野生の藤が見える。森の切れ間に、水田をそろそろと歩く大きな白鷺も。
白鷺はこの先もずっと、大きいのから小さいのまで、銚子の手前あたりまでけっこう見た。何だろう、千葉って白鷺の土地なんだろうかと思ってちょっとググってみたら、県のサイトでサギ被害(詐欺被害ではな(ry) のページを見つけた。▶︎千葉県:サギ類についてhttps://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/soudan/sagi.html
総武本線の単線区間
ふと、窓に迫る緑を感じて「あれ?」と思う。「線路脇の木、近過ぎじゃない???」
東京から千葉までの線を「総武線」という。千葉から先、銚子までの線は「総武本線」。総武線は首都圏有数のぎゅうぎゅう詰め通勤線でもちろん複線(詳しくは、上り下りそれぞれに複数の線を持つ『複々線』というらしい) なんだけど、その総武線の続きの総武本線なんだからこれも当然複線だろうと思ったら、総武本線は途中から単線になっていた。後で調べたところによると、佐倉から銚子までが単線区間と……ほとんどが単線じゃん(;`ω´)
総武本線の単線区間は、ローカル線のような雰囲気がある。何となくまだ都会の電車の気分をひきずっていると、時々「え?」と思うくらい、森の中にぽつんと出来たように見える小さな駅が出てきて驚く。
単線の幅しかないので周囲の樹々は電車に迫っている。「何かよくわからないけど千葉の方の電車に乗ると木が近くてびゅんびゅんする」と思っていた原因はこれかーと気付く。
朝8時、成東駅
東金線で外房方面に行く人が降りたのか、電車はガラガラになった。そして10分程度の停車。電車のモーターも切られて、周囲の音がよく聞こえる。鳥の声と、水の入った水田にいるカエルだろうか、リーリーリー、コロコロコロ、という柔らかい鳴き声。開け放ったままのドアから、朝の湿った植物の匂いがする。少し肌寒い。
霧の町
8:53の飯岡を過ぎたあたり、地図で見ると九十九里の弓の上端、海がくいっと食い込んで総武本線が一番海に近付いたあたりで、景色に霧がかかってきた。
今回の目的地である犬吠埼灯台では、10年くらい前まで、霧信号所が稼働していた。霧で視界が悪くなった時に、灯台の光の代わりに霧笛を鳴らして音で船に灯台の位置を知らせる設備。そうか、霧信号所があるということは霧の出やすい地域ってことなのかもと、車窓の霧で白っぽく霞んだ景色を見ながら思う。(霧信号とはすべての灯台に備えられていたものというのでもなければだけど)
わたしは霧がとても好きだ。霧を見ると、クリームのような重い霧が身体にまといつく様子が浮かぶ。すぅ、と温みのない重く湿った水の匂いも感じられるようなのに、それが現実の記憶なのか、夢なのか、想像で作った景色なのかはよくわからない。
小さな頃の車での旅行中、山道を走ってるうちに車の鼻先が見えないほどの濃い霧に包まれてしまった時のこととか、旅先での宿を発つ時のまだ夜明け前の朝霧のかかった感じとか、海と川も近い実家で早朝に時々町が靄っていたこととか、キャンプの朝の湿った匂いとか、水に入れたドライアイスのもったりと重くて冷たい煙の感触とか、何年か前にメゾンエルメスで体験した「グリーンランド」の霧のインスタレーション とか、たぶんそういう幾つかの記憶と人から聞いた話を合わせて出来た自分の中の霧の景色があって、それが霧を見るたび浮かんでは、また新しい霧が加えられて、ますます深く重たい霧の景色が作られ続けているような気がする。
何となく霞んだ白っぽい町の景色を眺めながら、9:10、銚子駅に到着。元々予定していた時間よりも1時間程度遅い。こんなに霧の降りるところなんだったら、のろのろ布団に埋もれてないで、やっぱりもっと早く出ていればよかったと思う。早く着いていればもっと霧深い景色を見られたかも、と思う。
銚子電鉄
ホームに降りて「そういえば、JRと銚子電鉄ってどう繋がってるんだろう?JR駅から遠いんだろか??」と、乗り換えの案内板か、もしかして銚子電鉄の駅舎でも見えないかとぐるり周囲を見まわしてみ……あった。いま自分が降りた電車の後ろ(というか電車の進行方向の先、車止めの先)に、何やら栗みたいな屋根の小さい建物があって、その奥から水色のかわいい電車がちらっとこっちを覗いている…
何がどうなってるのかよくわからないまま、人もそのあたりにわらわらいるので近づいてみると、やはりそこが銚子電鉄の乗り換え口(?)だった。ICカード用ターミナルが立っているのでそこでピッとタッチして、そのまま、先のホームの銚子電鉄の電車に乗り込む。座って出発を待っていると、車掌さんが回ってきて切符が云々…言われていることの意味がわからなくて「そこでSuicaでピッとしてきたんですけど(※東京近郊の電車の乗り換え口は一般にICカードタッチ1回で退場精算と入場記録ができる) 、どうすれば???」と訊くと、ICカードは使えないんです、今ここで行先を言って(買って)くださいとのこと。おお、想像もしなかった切符の買い方である。
荒波
9:30 銚子電鉄「犬吠」駅着。
有名な犬吠埼灯台なんだから行くまでの道標が出てるだろうと思って駅を出たら、ない。地図を出して方向を定め、少し歩くと、犬吠埼灯台傍のホテルの看板が出ていたので安心してそれに従い進む。ひどい方向音痴のわたしでも迷わない程度の、それほど難しい道ではないようだ。
駅から灯台までたいした距離じゃない筈なのに、何故か歩いてる人はいない。車通りも少なくて、地図を見ながら慎重に歩く。地図上で道々の要所の標にしていた海岸へ降りる脇道あたりに正しくそれらしい道があって安心する。「この先は海かー」と思いながらその道の先を見下ろしてみる。……目を疑うような景色。道の先の正面、黒い大岩があって、そこに真っ白な波がぶちあたってザッパーンと砕けている。
「え?あれ、もしかして海?????」←波が荒れることを知らない瀬戸内の民
さっきのは本当に海だったんだろうかと首を傾げながら、本来の灯台への道をもう少し進むと、下の方を見下ろせる小さな展望台があった。
犬吠の今宵の朧待つとせん
高浜虚子の句碑と、白亜紀浅海堆積物という周囲の地層に関する説明板がある。そして眼下には、轟音と、荒々しい海。
う゛…、本当に海だ(怖)
オヤジの海ですかこれは…
犬吠埼灯台に登る
映画の始まりに出てくる三角形のロゴの背景みたいな海にドキドキしながら歩いていると(※あのロゴの背景の海は本当に犬吠埼の海なのだそうだ) 、いつのまにか灯台のそばに着いていた。空が白いので白い灯台に気がつかず「わー、灯台が見えた✨」という感動がないまま、灯台に着いていた。
四角く囲まれた灯台の敷地の入口で、入場料200円を払って中へ。
灯台と、灯台の台座部分にある資料室。別棟の資料館。納屋だかあずま屋だかのような口の開いた建物にはベンチが並んでいる。霧笛舎。あとは灯台の本来の仕事用らしき立ち入り禁止の建物とレーダーのタワー。とりあえず敷地内の建物の数を確認して、先ずは灯台に登ってみることにした。
塔内の狭いらせん階段をくるくる回りながら99段登りきると、灯台の灯の下のベランダのように張り出した外周路に出るドアが開いていた。暗くて狭いところから、明るい外へ。わー、白い、わー、高……わー~~~!!!!!!!?
一気に登った階段で脚の筋肉ががくがくしていることとか、高いところでスマホを持ってる時にいつも感じる緊張とか、霧っぽく霞んで視界が悪く足元は見えるけど遠くの水平線は見えないこととか、見えるところまで目を遠くにするとめらめらのたうち荒れる海が見えてその轟音がゴーゴーと聞こえてるとか、強い風に煽られてるうち自分が風に飛ばされてしまうイメージが浮かんできて、さらに手摺ごと、もっとさらに灯台ごと、このままこの強い風にもっていかれるんじゃないかと想像が一気にどんどん膨らんで混じり合って、外に出て数歩進んだところで突然凄まじい恐怖に襲われる。手摺を持つ手に力を込める、と、手摺が外れて落ちてゆくイメージが浮かび、慌てて灯台の壁の方に手をあてる、と、灯台がふにゃふにゃと頼りなく柔らかく揺れてるように感じ、そのままガラガラと崩れて落ちてしまうイメージが浮かぶ。その場にしゃがみこみたくなるのを必死で堪えて、すっかり足がすくんで、数歩先のドアまでガクガク震えながら戻った。
自分の中ではまさに「命からがら」という感じ。予想してもなかったところでいきなりぴよっと飛び出してきた恐怖。今までの人生で一番の高所恐怖体験になってしまった。 (ちなみに過去の最高ランクは吊り橋と観覧車とロープウェイ、あ、そういえば石廊崎灯台の断崖絶壁もかなりキタのを思い出した。灯台のあるような場所はだいたい怖いのかもしれない…気をつけよう…)
外周路の内側のちいさな踊り場に入ってしばらく息を整える。風の当たらない内側に入ると大分安心するけど、時々ふっとこの小室の外はさっきの風か吹きつける空中なんだという事実が浮かび上がってまた恐怖が襲ってくる。
捕らわれてしまった怖さから気を逸らすために、階段を登ってくる人たちに注目する。階段をひょいひょい登ってきた人の視線につられて上を向くと、レンズ室への上り口の細い階段が続いていた。が、当然といえば当然か、立ち入り禁止のプレート。怖くなってここで休まなかったら、この上り口には気づかなかったなーと思いながら、気も逸れてきたのでそろそろと降り始める。少し混んできた様子で、どんどん人が登ってくる。
灯台から降りてもさっきの動揺でまだ少し震えていたので、灯台に登る前に見ていた納屋のような休憩用と思われる建物に入ってしばらく休む。
人が増えてきたとはいえまだ10時で、それほど混雑はしていない。このベンチがある建物にもわたし以外は誰も居ないし、出入り口の四角い枠から見える白い灯台の壁と入口がとても美しい。綺麗だなあと思っているうちに、恐怖のイメージも薄らいできた。
白い空の霧信号所
この犬吠埼灯台で、本当は、一番楽しみにしていたのは霧信号所の建物だ。何で霧信号所を見たかったのか、理由は自分でもわからないような、とてもよくわかるような。
先に書いた自分の中にある霧の景色、そこに、断崖絶壁の白い霧の、空(くう)に向かって鳴る霧笛舎の姿を映したい。それとも、現実の霧笛舎の鳴らないラッパに、空想の、クリームのようにねっとり重たく冷たい霧の中で稼働している霧信号所の姿と音を重ねたい。
犬吠埼灯台の周囲には、崖の植物を観察したりするための遊歩道がある。その遊歩道から霧笛舎のラッパを見上げ、ラッパの向いている海の果てを眺めた。
見上げる灯台、波はホクサイ
遊歩道の途中から下に続く階段を見て、海まで降りてみようと思いつく。このひどく荒れているように見える海(外房の波は高いと聞いたことがあるけど、もしかしてこのくらいの波はこの辺りでは普通だったりするんだろうか?) を間近で見てみたいという怖いもの見たさもある。
ゆるい階段をてくてく降りるとあっという間に海で、上から見下ろした感じよりもずいぶん近く、また、波も案外怖さを感じない。ちょっと拍子抜けしながら灯台を見上げる。四角い崖の上に立つ白い灯台と、緑灰色の草と岩の景色が、どこか最果ての、日本の景色ではないように見えてくる。
立ち入り禁止の看板のあたりまで海に近づいてみる。この角度からだとやってくる波がよく見えて、葛飾北斎の絵の波の形をしていることに驚く。←波は高くても山型しか知らない瀬戸内の民
灯台と照射塔
11:30。そろそろ、もう一つの目的であるお午から開く日帰り温泉に移動し始めてもよい時間。
9時頃には霧っぽく白く霞んでいた空も、昼近くなって晴れてきた。ずいぶん遠くまで、水平線もぼんやり見え始める。眺めているうちにも霧が解けて、遠くの景色が濃くなってゆく。
灯台の高台から浅い湾を超えて南、朝来た時には見えなかった東に向かって伸びる平たい岬と、その先の岩がちな小島が幾つも見えた。よく目を凝らすとその平たい岬にすっくと立つまっすぐな塔。あそこにも灯台があるのかな?と調べてみたら、長崎鼻一ノ島照射灯という、灯台ではなく照射灯といわれるものだった。暗礁等の危険な場所(この場合は一ノ島?) を照らすものらしい。
近くまで行ってみたい気もするし、ここから眺める限り距離的にもそう遠くなく行けそうな気はするんだけど、自分の距離感覚と方向感覚の無さにはちょっとした自信があるので無理はしないことにして、温泉に向かう。
犬吠埼観光ホテル
家で地図を見ていた時には灯台のある岬から遠く離れているように思えた犬吠崎観光ホテル。現地を歩いてみると、駅からホテルと駅から灯台までの距離はさほど変わらない(そして駅から灯台までも大した距離じゃない)ようなので、温泉はここに行ってみることにした。海沿いの高台を走る道路から浜の方に降りたところにある海辺の観光ホテルだ。
12:00過ぎ、喉が渇いて水を買うために犬吠駅に寄り道したりしながらとろとろ歩いてきたので、ちょうど狙った通りの時間に着いた。玄関を入ってロビーに進むと、すぐに案内の人が「日帰り温泉ですか?」と声をかけてくれる。案内に従って切符を買い、切符を渡すとふかふかのタオルを貸してもらえる。
お風呂場はそう広くなかったのだけど、昼も早い時間で、泊まりの人たちもチェックアウトした後の空白の時らしく他のお客さんはほとんどいない。遠慮なく手足をダラーっと伸ばしてのんびりお湯に入ることができた。
そして、ここに来た一番の理由、海を臨む露天風呂。蒸々して暑い浴室から、露天風呂のテラスに出る。と、海からの風がふわっと身体にあたり、潮の香りがする。お湯は少し塩っぱくて、海の岩場から湧き出る温泉を連想する。正面には波が打ち寄せる太平洋、下は砂浜、そして左手には犬吠埼と灯台。
たっぷりのお湯でぷかぷかしながら、朝は恐々眺めていた海と波と灯台を眺める。灯台には薄く陽があたり、薄曇りの空のところどころに青空が透ける。もうそんなに怖くない程度に海も青くなり始めている。
昼間なので黒い崖の上に立つ白い灯台が見える。夜になったら崖と灯台は見えず、灯台の投げる灯りが見えるんだろうと思う。なんて贅沢なんだろう。
犬吠か外川か、駅までの距離
13:00。お風呂にも入ってじゅうぶん満足したので帰途につく。
地図で現在地を見ると、来た時に降りた犬吠駅よりも終着駅の外川駅の方が “直線距離だと” 近いようなので、そちらから帰ってみることにした。道路をたどると少し犬吠駅の方が近いようにも見えるけど、今日のところ、だいたいこの辺りの距離感は「思ったより近い」ので、遠かったところで大して差もないだろうと。
何の問題もなく駅に着いたので先にここで結果を書いておく。観光ホテルから外川駅と犬吠駅、「大して変わらない」だった。(但、わたしのアテにならない感覚値による)
ちなみに、家に帰ってスマホの歩数計で1日の歩いた距離を見てみると、かなりうろうろ無駄に歩いたにもかかわらず全部で7km程度。犬吠あたりは健康な人なら歩いて散策できるエリアだと思う。
海抜19.9mから
犬吠埼から長崎鼻の方に向かう道路は海面から少し高いところを走っている。外川駅方面に向かうためにその道路から逸れるところ、ちょうど長崎鼻の上にあたるところに海抜19.9mというレベル表示があった。何となくイメージしている高さの数字よりも低い。こんなに低いものなんだろうか?いやでもわたしの距離感覚ヒドイからな…と、低くなってゆく道の先を眺めていたら、正面に白い筒…あ、あれはもしかして…さっき行ってみたいと思ってた長崎鼻一ノ島照射灯?見に行かなくても見えた!しかもこんなところから!と何だかうれしくなってすっかり満足する。
ふかふかの電車と素晴らしい魔法瓶
外川から乗った銚子電鉄は少し混んでいた。それで少し、帰りの電車は人気(ひとけ)を避けたくなって、銚子駅にいた特急しおさいに乗ることに。行きはずっと普通列車で、終わりの方にはお尻と背中が痛くなってイゴイゴしていたので、特急のふかふかのシートにふかふか!!と感動する。
切符を買い、何だか時間が無いような気がして(ほら、わたし時間感覚もアレなんで…) 飲み物も食べ物も買わずに乗り込んでしまった。車内販売はないかと期待するも、この特急しおさいも既に車内販売が廃止されていた。旅の友キャラメルも、行きの電車と灯台の後で食べきってしまっていた。ああ、と、思い出す。ああ、魔法瓶にお湯があるよ!!
愛用のタイガーステンレスボトルは、注ぎ口が広くて直接口をつけられるマグタイプなんだけど、保温性能がすごく高くて、朝沸かして入れたお湯がお昼を過ぎてもまったく冷めず、難なくお茶を淹れられるくらいの熱湯を保つので、とてもじゃないけど直接口をつけて飲むことは出来ない。(可能であることと適していることは違うのである) そのために朝、紙コップか紙コップ入りのコーヒーを買いたかったのだけど買えなかったし、移して冷ますものがないので仕方なく、蓋をあけ放しにして普通のマグカップのように持って、時々鼻に湯気をあてて温かいものを飲んでるような気分を味わったり、時々飲むのにチャレンジしてやっぱり舌を火傷しかけたりしつつ、ふかふかの電車で揺られて銚子から東京に帰った。
旅装を解く、雨
駅に着いたら雨が降っていた。しばらくはフードを被って歩いていたのだけど、どんどん雨足が強くなってきて、とうとう折り畳み傘を出した。ここのところ雨続きで、予報でも雨が降りそうな感じだったのでバックパックに入れて一日中持ち歩いているだけだった傘を、最後の最後にひらいた。