Posted on 08 5月 2019 by konama
お久しぶりのkonamaです。
先日コーヒーのお供として食べたいもの……という話をしていて、 「チーズケーキ、それもベイクドの甘すぎないやつ!」 と声をあげたのですが、ふと小さい頃ってチーズケーキってレアチーズケーキだった気がする…?あれ、でも家で作るようになったのはベイクドが先だよなあ……そもそも家でチーズケーキを作るようになったのっていつ頃だろ?という疑問が沸いてきました。
小さい頃、ケーキ屋さんで買ってくる定番といえば、ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン、たまにチーズケーキ(もちろんベイクド)というラインナップで、レアチーズの気配は感じないのに、なぜ家で作ったイメージが強いのだろう。そもそも、いつごろからチーズケーキって作れるようになったっけ?というわけで、私のお菓子づくりの歴史(!)を思い返してみました(下の図)。小さい頃一番最初に作ってみるお菓子って、ホットケーキだと思うんだけど、みなさんちがうのかしら?
思いつくままに書いてみたけれど、ホットプレートからトースターにいって、オーブンがつかえるようになるとか、既成のミックスから、自分で粉を量り、バターを摺り混ぜるみたいな、難易度のグラデーションに沿って、何となく作るお菓子の種類が増えていくんだなあ。
ホットケーキが作れるようになって、似たようなクレープとかお好み焼きとか挑戦したりして、おたまからタネをこぼして台所をべっとべとにしながら作っていた気がします。最近だと玩具のお料理セットとか有るのかもしれませんが、思いっきり普通にガス台のわきでホットケーキミックスを混ぜて、火が強すぎて半分焦げた焼きムラのある物体をせっせとフライ返しでひっくり返してどや顔してる写真が残っていたような…。
そうそして見つけましたよ「クールン 」!一番下の「プリンエル 」とか「ゼリエース 」のルートです。インスタントプリンとかゼリーを作ってみたあとに、同じ売り場にある、「クールン」に気が付いたんでしょうねえ。作ったなあ。たしか、タルト台があるバージョンの別製品もあったきがするのですが、クラッカーの台とレアチーズの部分をそれぞれ作るインスタントレアチーズケーキの素。中にアルミでできたお皿がついてるんだよね、確か。
クールンはなかったけど、令和時代の我が家にもプリンミクスがいた
濃厚とは程遠い感じのお味だったけど、冷やしとけばできるお気楽なデザートで、何回か作った気がします。これがきっと、私の中にある初期の「レアチーズケーキ」なんだろうなあ。
面白がって図を書いてみましたけど、みんなどんなふうにお菓子をつくるようになるのかなあ、というのが気になってきました。こういう図って、たとえば「私がファンタジー読みになった経過説明図」みたいなのも書けそうだなと、ちょっと笑っています。まあある種のマインドマップ過去編みたいなものかしら。
大人になった今では、もっとチーズくさいチーズケーキが好みなのだけど、それでもたまに、あのクラッカーの台の冷蔵庫で固めるチーズケーキも懐かしく思うのです。一番上の好きなチーズケーキの文には「クラッカーの台はちょっと」ってかいてあるのにね。
Posted on 04 5月 2017 by Kyrie
西日本は穏やかに、というか厳しい日差しがさんさんと降り注ぎ、日焼けして痛いくらいです。
ピクニック気分も盛り上がりますね。
おむすびに卵焼き、という定番メニューもいいですが、パンとオリーブ、ワインとお茶かコーヒー、そして素敵なチーズを持っていくのはどうでしょう?
私が出会ったチーズで「ああ、これは素敵!」と思ったのは、写真の8個入りチーズです。
味はナチュラル、ハムみたいなのが入っているもの、パプリカなどの野菜が入っているもの、そしてバジルの4種類。
これに粉の味がしっかりうまい焼き立てパンをナイフで切って一緒に食べると楽しいです。
味が4種類、というのがいいですね。
それもどれもちょっとしたカナッペ気分になれそうなものばかり。
これにオリーブもつまみ、ワインを飲んでいい気持ちになり、そうだ、果物もほしいなぁ。
それもナイフで切り分けましょうか。
りんごならそう、オレンジなら手で皮がむけますね。
そして食後のコーヒーか紅茶。
私は紅茶が好きですが、あのコーヒー豆をごりごり挽いたり、ぷんと立つ香りが独特だったり、すっごい真剣な顔で口の細いポットからお湯を注ぎ入れるのを見るのは好きです。
こんな素敵なチーズですが、探し方がよくないのか、こういったものをスーパーで見かけません。
残念ですが、缶ビールを片手にふらついても、川べりのベンチに座ってごくごく飲むのだって、素敵なピクニックです。
チー鱈をお供にするのもいいかなぁ。
では、よいピクニックを。
Posted on 25 7月 2016 by konama
こんにちはkonamaです。
先月、今月と海外出張が続き、ちょっとお久しぶりになりました。
今日は珍しくトラベラーズノートのお話です。(いつも最近チーズの話しかしてないって?)
ここ数年、基本的に自分の相棒はモレスキンのハードカバースクエアードラージで定まっているのですが、旅の時だけはトラベラーズノートを持っていきます。それもレギュラーサイズ。パスポートも挟み込んじゃうので、パスポートサイズの方が良い?いえいえ、やっぱり搭乗券のサイズは欲しいのです。ちなみに相棒のモレスキンはちゃんと別に持っていきます。こちらはお仕事と雑記用。じゃあトラベラーズノートはトラベルログ用?残念ながら、お仕事のときってほとんどログを書く暇がないんですよ。ほとんどトラベル用のガジェットとしてイレモノとして使っております。
今回はそんな海外旅行中の私のトラベラーズノートの様子をお伝えしようかと思います。
【旅の支度】
最近はほとんど航空券もスマホ上のバーコードで済んじゃうご時世ですが、色々と面倒なこともあるわけで、充電切れちゃたらとか、降りてすぐローミングがうまくいかなかったらとか、シンプルにその後の精算のためとかの理由で今のところやはり紙も必要です。旅行会社で一括でとってるときはそれを持っていけばいいわけですが、今回みたいに複数の案件が重なって移動や追加のフライト、宿泊の変更なんてものが重なると自分で何とかするしかないわけで、地図付きの宿のクーポン、フライトのE-チケットのバーコード、乗る予定の鉄道のタイムテーブル、仕事の登録証明、会う予定のある人からのメールのプリントアウトなどなど、大量のA4版の紙をもって歩くことになりマス。
で、どうするか。まずせっせと案件ごとに3つ折りにします。で後ろから順番にトラベラーズノートのゴムにはさみこんでいきます。このとき3つ折りなので、適当に左右に散らして厚みのバランスをとりましょう。おそらく一番上が飛行機のチケット、あるいは成田までのチケットになるはずです。
トラベラーズノートにはあと2冊のリフィル、重いので二分の1バージョンとか軽量紙版とかさしておきます。ポケットには切手、常備薬、絆創膏。あと忘れずにマステをヒト巻き。ポケットにパスポートを差し込むような形ではさんでおきます。
トラベラーズノートとは関係ないけど、ヘッドフォン(イヤホンじゃなくて)とアイマスク持ってるとわりと快適に機内で眠れることが分かったので、最近はその二つは忘れずに機内持ち込みに入れてます。
【旅の間】
で、そのあとはどうするかって?それはもう簡単。順番に使ってくだけです。今回のケースだと1枚目は成田行きのバスのチケット。引っ張り出して、半券をもらったら、リフィルにマステで貼り付けます。飛行場についたら、荷物をドロップして、搭乗券にクレイムタグを張り付けて挟んでおきます。飛行機に搭乗したら、搭乗券はリフィルにマステで貼っちゃいます。ついでにEチケットもリフィルに貼っちゃいます。帰りに必要な場合は帰りの順番のあたりに紙をさしなおしておきます。次はおそらくホテルのクーポンですが、その前にタクシーにのったなら、そのレシートもリフィルに貼っとく。ホテルでチェックインしたらそのクーポンも終了、抜いてリフィルへ…ってな感じで予定表からそのまんま時系列順に証拠書類を張り付けてく方式です。この貼り付け方式は、搭乗券の半券をなくすと旅費の精算ができないことから、しょうがない始めた習慣で、昔は半券をマステでパスポートに貼るという荒業に出ていました。最近は搭乗券だけじゃなくて、泊まったホテルのキーカードのケースを出せとまで言われるので、もう端から貼っちゃうことにしました。ただ、提出することになるから、かならずマステで貼ること、基本的に時系列を守ること。
旅の間にチャームやシール、ピンズなどを買ってトラベラーズノートをカスタマイズしていくのもちょっとした楽しみです。今回はそもそも使ってるトラベラーズが成田で買ったやつだし(もともと茶色のレギュラーにセットしてきたのを、成田で差し替えたw)、スウェーデンのダーラナホースのキーホルダーを買って、チャームにしました。ちなみに今回はストックホルムで、ノーベル賞博物館なるところに寄ったので(中身はそんなに面白くなかった)、そこで限定モレスキンと各ノーベル賞のチャーム(私は医学生理学賞の)を買いました。
【旅の終わり】
そうやってどんどん、旅程をこなしていくと、ついに真ん中の紙がなくなる日がやってきます。ちょっと寂しいですが、リフィルはぶくぶくに太っています。ちょっとした地図や、気に入ったかみなんかも貼ったりするともっと大変。余裕がある旅ならば、張り込み用じゃないノートにログやらスタンプやら色々書いたらいいと思います。夜の会食があったりするとなかなかそれもままならないもの。無理しない範囲で、メモなどに使っています。精算はリフィルから、必要書類をはがして貼ってあげれば大丈夫。無事ひらひらと紙を落とさずに帰ってこられました。
というわけで、こんな風に使ってるよーという超自己流のトラベラーズノートのご紹介でした。
ちゃんと部活もやってますのでご心配なくw。
Posted on 30 5月 2016 by ふね
ちょっと前から気になりながら、手を挙げる勇気が持てなかったけれど・・・
この前あまりにおいしいものを食べて、誰かに伝えたいと思ったので、ここで勇気をだしてチーズ部、入部したいです!
スペインのアンダルシア地方で食べたヤギのしょっぱいチーズ。
軽く温めてあってとろーんとしています。
そして、チーズは甘いはちみつの上に乗っかっています。
チーズがかなりしょっぱくてクセがあるのだけど、はちみつと食べることで口に入れると2つの味が主張しまくりながら混ざって、脳天と舌がしびれるような、ついついもう一口と食べてしまう一品でした。
私は残念ながらお酒はほとんど飲めないのですが、多分きっと赤ワインとこれ食べたら本当はもっとおいしいんだろうなあ。
イタリアもチーズが有名ですが、今まで食べて印象深かったのは、水牛のミルクのモッツァレッラ。(ブッファラと呼ばれます)
このチーズで有名なナポリの近くの町に親戚がいる人が、会う前日に親戚のところで調達し、木のバケツのようなものに入った水に浮かんだチーズをもってきてくれて、「1日経った今が食べごろだから早く食べてー!」と。
結構なんだかんだブッファラはスーパーでも売っているので食べたことがあったけれど、この時のブッファラのおいしさと言ったら・・・!
今晩は、シチリアから届いた唐辛子入りの辛いチーズを夕飯に食べました。
見た目結構赤かったのだけど、味は見たまんまかなり辛かった。
一緒に、シチリアで肉屋を営む親戚から届いたフェンネル入りのソーセージも食べました。
こってりした豚肉にフェンネルの清々しい香りがするのは最初変な感じがしたけれど、慣れるとこれまた癖になる。
また、おいしいチーズと出会ったら報告します!
Posted on 13 5月 2016 by konama
こんにちはkonamaです。
この間から、少しづつ「食べる世界地図」という本を読んでいて、いろんなところに垣間見える変な話にニヤニヤしながら読み進めています。とりあえず、
冷蔵庫がからっぽのとき、パスタをバターとマーマイトで和えて黒胡椒をかけたものが、今でも私のお助けメニューだ…それに二日酔いのときも。
高い+脂っこい+鴨はかわいい=個人的に鴨料理は気が進まない
とか書いてある本です(グルメ本とはちょいと違う方向性?)。
まだ読み途中なのですが、最初のフランス、ノルマンディ地方のセクションに「ベイクド・カマンベール」というレシピを見つけました。
なになに、カマンベールのあたまにフォークで穴をあけて、カルバドス(リンゴのお酒)をかけて、ローズマリーと塩コショウ。そのまま8時間おいて、オーブンで20分!美味しそうではないですか。そして簡単じゃないですか。
というわけで、電車にのって少し良いチーズを買いに輸入食材系スーパーに出かけたのでした。最近マイブームのつるすヒモがついてるスペインのサラミもちょうどなくなったのでしっかり買いこみました。ちなみにマーマイトも売ってたよ。
やってきましたチーズ売り場。そんなにたくさん食べられないし、小さいやつがいいかなあと見て回ると、こんなチーズを発見。
左にあるの、リンゴのマークがついてる。よく見ると、CAMAEMBERT AU CARLBADOS って書いてあるじゃないですか。裏を見るとリンゴのお酒を入れたチーズとあります。なんだ、出来合いのものがあるんじゃない。でも焼いて食べろとは書いていない…。風味をお楽しみください的な説明のみ。うーむ、しかしなんかこれをこのまんま焼くのもなんだかチガウ気がする。そこで小さいひとくちカマンベール(写真右)をかって、こっちはレシピ通りに作ってみることに。カルバドスも高くないほどほどの奴を購入。さて、どうなりますことやら。
しかし、このリンゴのブランデー…ちょっと臭いんですよ。好みは色々だと思うんですが、シードルの類って辛口系は意外と呑みにくい印象があります(私の好みですが、イギリスで初めて飲んだサイダー(と呼ばれるリンゴ微炭酸アルコール)はちょっとびっくりするくらい美味しくなかった。今は好きな銘柄を見つけましたけどしばらくは手をだせませんでした)。
というわけでさっそく、穴開けてマリネ。こんなに小さいので、ローズマリーはベランダの苔玉から拝借w。夕飯までしばらく放置です。
で、一番上の写真が、カルバドス入りチーズを食べるぞというところなわけなのですが、まずは生でぱっくり。うーん、ちょっと臭い。ちょっとたくあん系。まずくはないが、なんか漬物系の匂いだよー。カマンベールなのに白カビじゃないようなちょっとしたくどさがあって、お酒飲むのにはいいかな。気を取り直して、自作の方をオーブンから取り出して実食。
うん、こっちの方が良かったです。ちょっと癖のある香りがぷーんとするのはその通りなのですが、焼いてある分まろやかで良い感じ。
って、アルコール分の苦みがもんだいなのかも…という気がして、おもむろに出来合いの方のチーズも焼いてみた。
味は…やっぱり臭いよ。そして味が温まった分強烈に(笑)。そんなわけで、ウィスキーをお供にチーズ、サラミ等々いただいた晩でした。
本当はこうやるというのがあるのかもしれませんが、これだけでも大冒険。とても楽しかったです。こんどは普通サイズのカマンベールで、バケットを準備して臨みたいと思います。
Posted on 02 4月 2016 by konama
またまたkonamaです。
さて、わりと綺麗にまとめたNotebookers Map編 に続いて、忘れないうちに、食べる事大好きチーズ部の皆様に捧げる、チーズ部編をお届けします。
素敵カフェ、ノートライフからは少々逸脱したものになりそう…そして北海道美食旅にもならなさそうなので、あしからず。また、味についての感想などは個人の物ですので、さらりと流していただけると幸いです。
@lemonade_air さんがカムリマス で想像してたようなNotebooker風旅人じゃなくてすいません。むしろカムリマス派です。
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Posted on 27 2月 2016 by konama
こんにちはkonamaです。
先日のKyrieさんのチーズ部の記事 で紹介してくれた長田弘の詩集「食卓一期一会」がとっても素敵で、毎日ニコニコして少しずつ読んでいます。
食べ物のことばっかりの詩たち。なにやらそのままレシピのような、でもちょっと人生のスパイスがピリリと。
その中に「キャラメルクリームのつくりかた」という詩があります。
「用意するもの、
コンデンスミルク一缶と
アガサ・クリスティ一冊。」
で始まるこの詩は、要は缶ごと鍋で煮はじめて、本を読んで事件が解決したら出来上がりというレシピでもあります。
これを読んで、はっと
「ああ、私はこの手の料理してる間にやることがかいてあるレシピって、いつもぴぴっときちゃうんだよなあ」
と思ったのでした。
まあ大体こんな感じのレシピだからラフなものが多いし、出典もよくわからないけれど、
スムースジャズ系のCDをかけてからエプロンをかけろとかいてあるシチューとか、
サルサを2回踊り切るまで煮込む豆料理とか、
ある曲を2番まで歌ってからふたを開けるハンバーグとか、
なぜか妙に頭に残っているし、実際作ってみることも多い(サルサは踊ってないけど)。
おしゃれな料理本、カフェ本だと食べるときにこんな音楽をっていう本はたまにあるけど、そうじゃなくて火にかけてる間にかける音楽が書いてあるレシピはそんなにない。
まあある程度時間を指定してる意味もあるわけだけど、歌とか踊りとかそんなの選ぶものによるし、人によってテンポも違う。ましてや本を1冊読むなんてそれはやっぱり、単位じゃなくて空気なんだろう。
料理の間にやることで、なにか物理的に味が変わるようなことはないのだけれど(踊るとうまくなるのか?)、料理する人に「こんな感じ」というのがするっと伝わるのかな。
村上春樹がスパゲティをゆでる間に読むのにちょうどよい小説の意味で 「スパゲティ小説」という言葉を使っていますが、料理の間に料理の味とは関係のない作業が入るのって、ちょっと色っぽいなとおもうのです。
プロではなくて、自分のキッチンで誰かのためにちょっと腕まくりして、鼻歌を歌うような感じでする料理。できれば適当なコップに入れた料理用も兼ねた赤ワインでも飲みながら。
ちょっといいでしょう?
Posted on 18 2月 2016 by Kyrie
いつも美味しそうなやりとりをしている二人がいる。
本当に参る。
美味しい写真を見せびらかしているわけではないのに、この二人のやりとりを読んでいると、中学だか高校だかの英語の授業で習った、「お口の中はよだれでいっぱいだ」という直訳を思い出す。
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Posted on 10 1月 2016 by たね
小学6年生の時の担任の先生は、わたしたちが最後の生徒になる大ベテランの先生だった。大ベテランだからかそれとも元々の性格がそうなのか、とても風変わりで我が道をゆく自由な人で、先生が担任だった一年間、学年全体で決めらていた夏休みの宿題以外、わたしたちのクラスだけは日々の宿題を出されることがなかった。
先生の専門は社会科で、課外授業として近くの古墳に連れて行ってくれ、音楽の授業では教科書には載っていない各地の民謡を歌った。星が好きで夏には星の観察会をし、旅が好きで昔の教え子達と一緒に旅をしたり、旅から帰ってきた元教え子達が先生を訪れて一晩中語り合ったりしていたようだった。
わたしたちのクラスには宿題は無かったけれど、授業から遅れてしまった生徒や、授業に退屈してどうも勉強に身の入らない生徒が、自由参加で勉強を教え合う放課後の時間があった。
学校という場が性に合わず、勉強も好きではなかったわたしがその放課後の補習にちょいちょい顔を出していたのは、先生の話してくれる見知らぬ世界の色々な事柄を1つでも多く聞きたかったから。息が詰まりそうに窮屈な子どもの世界から、もっとずっと広くて大きな世界をちらと覗き見るような、素敵なちょっとしたお話を1つでも多く聞きたかったからだった。
放課後の常連にトオルという男子生徒がいた。小柄な優しい男の子でクラスの皆から好かれマスコットのように可愛がられていたのだけど、勉強が得意でなく、それから注射とチーズが大の苦手で、学校生活で必ず行われる色々と闘っては跳ね返されて泣いているような男の子だった。
ある時の放課後、トオルとわたしと、あとクラスメイトの誰か1人か2人、いつものように先生と教室に居て、補習の時間を過ごしていた。
どういう流れでそうなったのか、先生がふと席を立ち、教卓の後ろにある木の戸棚の一番高い物入れの奥をごそごそと探って丸いクッキー缶のような容れものを出してきて、勉強のために寄せ合っていた私達の机の上に置いた。
二重か三重かに包まれた紙をそうっと開くと、中から現れたのは黄色っぽい乳白色の、元は円かったと思われる塊。もう大分削られていて、円は半月のようになっていた。何?と皆で興味津々覗き込んでいると、
「本物のチーズ、食べてみるか?」と、先生が言った。
5年生から6年生になる時クラス替えがなかったので、トオルのチーズ嫌いは皆が知っている。6年生になって担任が先生に変わる前は、給食の時間が終わっても目をうるませながらチーズを前にじっと座っているトオルの姿を見るようなことが頻繁にあった。もしかしたらその時、(よくは覚えていないけど)給食のチーズの話をしていたのかもしれない。先生の言葉はトオルに向けられたもので、私達は彼の表情を見た。
「無理はしなくていい。でもいつものチーズとは違うぞ」
そう言いながら先生は、半月の丸い塊を毛玉のついたセーターの腕に抱え、ナイフをたてた。
いつもの給食のあの白くて柔らかいチーズではなくて、レストランのグラタンに乗ってくる匂いのすごいチーズでもなくて、ハイジで見たストーブの熱でとけるチーズでも、トムとジェリーの穴の開いたアパートみたいなチーズでもない。とてもとても硬そうで、頑丈なナイフでぐりっと削るようにして取る見知らぬ外国の食べ物。
「食べてみる」
「トオル、大丈夫?無理してない?」
「無理してない。食べてみたい」
“本物のチーズ” は、チーズが苦手なトオルだけじゃない、そこにいた誰もにとって生まれて初めて見、口にする食べものだった。ナイフで削りとられた薄くて硬い一片を先生からもらって、お互い他の子達の様子を伺いながらおそるおそる囓った。
「……あ、美味しい!」
「美味しいねえ」
「うわー、美味しい」
「これだったらチーズ好き!」
硬い硬いハードタイプで、旨味のぎっしり詰まったチーズだった。よく熟成したコンテの皮の近くの硬いところとか、じゃりっとした旨味の塊のあるパルミジャーノ・レッジャーノみたいな感じ。何処の国のチーズなのかたぶん先生は教えてくれたと思うけど、今も当時もまったく覚えていない。とにかく “本物のチーズ” なるものがこの世にはあって、世界の何処かでそれは作られていて、それは同じ “チーズ” という名前が付いたものであっても普段泣くほどチーズが苦手なトオルですら食べてみたい、美味しいと思うくらい魔法に満ちた素敵な食べもので、先生の戸棚の奥はその “本物のチーズ” を作る世界の何処かに繋がっている。
紙に包まれた戸棚の奥の硬いチーズと、抱えこんだチーズの塊を削り取るナイフとたくましい腕と、星を眺めながら旅の話をする年の離れた友人達。
先生のまわりのあれこれは、見たことも食べたこともないものだらけの、自分の知らない広い広いおとなの世界。想像しただけで目の前の壁が取り払われてゆくような気持ちになったし、おとなになったらそんな広い世界のひとりになりたいと心から思った。
きらきら光る小さなショーウインドウの輸入雑貨屋にあった変てこなイラストのキャンディやカエルのグミや、
アメリカから遊びにきた親戚がくれた茶色いクラフト紙の袋にざばっと入った歯が折れそうなくらいかたくて旨みの濃いビーフジャーキーや、
フランスかぶれで有名な、10代の終わりに通っていた画学校の校長先生のフレンチローストのコーヒー豆の香りと、砂糖をたっぷり入れてお汁粉のように甘くするコーヒーの飲み方。
同じ画学校のキッチンで「あなたも食べる?」と一切れもらったこうばしいフランスパンに甘くて濃いジャムをのせた一切れに、
スーパーで売ってるヨーロッパから来たカカオの香りのしっかりするチョコレートや、洞窟で作られたブルーチーズ、塩っぱくて歴史のある羊の乳のチーズ。
わたしにとって食べものは、自分のまわりの狭くて窮屈な世界から、自由で広々とした世界の存在を教えてくれる小さな目印で、地図とコンパスにもなるものなのだと思う。
すごい方向音痴だからはじめに思った目的地に着くことはなかなか無いし、旅だって実際はそんなに行けるわけでもないけれど、今暮らしてる毎日の中にもある小さな世界の覗き穴、迷子になりながら行き当たりばったりで見つけた美味しいものを、今度はわたしが誰かに教えてあげたいと思っている。
世界はずっとずっと広い。
大丈夫だよ。
Posted on 11 12月 2015 by konama
こんにちはkonamaです。
先週末の日曜日、東京でのNotebookers Meetingで沢山の方(その実、私は全員初対面でした)にお会いして、色々お話して、そしてお話したりずに興奮冷めやらぬ今週です。
ノートブックタワーを作ったり、Loftでモレスキンのワークショップに出たり、色々こうメインイベント的なものが色々あったわけですが、
そちらの方はAkaneさんの記事 やたぶんこれから書かれるであろうたくさんの記事とタカヤさんのまとめなどにお任せして、なぜあの日の朝モレカウインザハウスTOKYO(ハヤテノコウジ師匠 命名?)にチーズが出現するに至ったかをお話しようと思います。
でもって、意外とみんなチーズ好きなんじゃないの?ってことでここにノートブッカーズ、チーズ部を設立したいのであります。エヘン。
ちなみにこの傑作はエハガキ華さんが飲み会の席でナプキンに描いてくださったスティルトン!華さん、ありがとうございます。
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