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ロンドン日記:バックパッカーホステルからケンティッシュタウンへ YOKO

Posted on 24 1月 2013 by

ロンドンに暮らし始めて3度目の冬を過ごしている。「ロンドンの暮らしはどうですか?」と聞かれることがよくあるが、はて、私のロンドン暮らしはどうだっただろうか。ロンドンに暮らし始めた1年目のことを振り返ってみる。

1年目はとにかく家のトラブルがつづき、確か4回引越した。短い期間ではあったけれど、バックパッカーホステルの24人部屋の二段ベッドの1階に仮暮らししていたこともあった。朝起きると必ず右腕か左腕がはみ出してしまう幅の狭いベッドは四方を白いカーテンで覆い隠すことができるようになっており、枕元の蛍光灯をつけた時にだけ、どうにか私の空間を確認することができた。子どもの頃、お布団の中で懐中電灯をつけて秘密を作っていたことが思い出される。「家は見つかるのだろうか?」カーテンのすぐ隣りでこそこそお喋りを続けるロシア人や、いびきのうるさいナニ人かに耳を傾けながら、心細く眠る日々だった。

バックパッカーホステルでの生活の後、私はケンティッシュタウンに暮らすロックミュージシャンの夫婦の家に下宿させてもらうようになった。奥さんのマーゴは、ロックバンドのコンポーザーをしながら大学院で建築の勉強もしているパワフルな人だったけれど、眼鏡をかけて勉強する姿は少し魔女のようだった。旦那さんのゲイリーは、初めての挨拶で「分かってる、僕の名前は日本語で下痢って意味なんだろ?」と飛ばしてくるこれまたロックな人だったが、その一方で、私が朝食の時間に部屋から出てこないと「僕のコーヒーは最高なんだ」と言って、クロワッサンと温かい飲み物を運んでくれる優しい人だった。この家には2匹の猫がいて、1匹は滅多に姿を見せなかったが、もう1匹ー名前をルーピーと言ったが、ルーピーとは英語で「きちがい」の意味ーは毎晩私のベッドにやってきたので、一緒に眠った。バックパッカーホステル暮らしのストレスでカリカリに痩せていた私は、このちょっとヘンテコな家庭に心から癒されていた。

ある日マーゴが、「YOKO、あなた確かブログをしてるって言ってたわね?」と聞いてきたので、モレスキナリーやモレ本のことを話した。「ねぇ、実は私もモレスキンを使っているのよ。ほら」と、マーゴの狂ったようなスケジュールが書き込んであるダイアリーを見せてくれた。私が興奮すると、マーゴは「YOKOに私の宝物を見せてあげる」と言って、レコード盤や機材がぎっしり詰まった本棚の、さらに天井に近いあたりから分厚い本を引っ張りだしてきた。「これはね、デジタル時代が来る前のものよ。私が1970年代に南米を旅した時の記録なの・・・」

そこには、ベネズエラから始まり、コロンビア、ペルーと南米を回っていったマーゴの膨大な旅の記録が残されていた。その頃にも建築の勉強をしていたマーゴは、調査したことの全てを書き込んでいた。その他にも、チョコレートの包み紙や、読書リスト、(ゲイリーではない)恋人と一緒に写った若いマーゴの写真。「このページはね、夜、テントの中で、恋人に私の家系図について説明した時のものよ。」マーゴはどこまでさかのぼったのだろう、見開きいっぱいに広がるファミリーツリーは、その夜、2人がこの話でどれだけ盛り上がったのかを想像させた。私がマーゴに、この素晴らしい旅の記録をモレスキナリーに載せていいかと尋ねると、「もちろん!」と言って、にっかり笑ってくれたのだった。(それが2010年9月28日の記事です)

マーゴとゲイリーの家から引越して一人暮らしを始めるようになってからも家の問題はつづいたけれど、以前のようにストレスに感じたり、痩せてしまったりするようなことはなくなった。家探しを通して土地勘も養われたし、家の契約の云々はとても詳しくなった。1年目に経験した4回の引越は、ロンドンで暮らす ための心身の土台を築き上げてくれたのだった。

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Profile: モレスキンファンサイトmoleskinerie.jp[モレスキナリー]の管理人です。Twitter: @YOKOnotes 著書『モレスキン「伝説のノート」活用術』『モレスキン 人生を入れる61の使い方』(ダイヤモンド社)。モレスキンノートブックをお供にロンドンに暮らし始めて今年で4年目になりました。私の旅の話を書いてみたいと思います。

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