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Notebookers 向けな展覧会 garyou

Posted on 22 6月 2015 by

大変ご無沙汰しております。
本日、まことに Notebookers 向けな展覧会に行って参りました。
世田谷文学館で7/5(日)まで開催の「開館20周年記念 植草甚一スクラップ・ブック」です。

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植草甚一については、リンク先に詳しく書かれています。
1908年の生まれで1979年にこの世を去りました。
Wikipediaには「欧米文学、ジャズ、映画の評論家」と紹介されています。
個人的な出会いは、「海外ミステリーについて書く人」としての植草甚一と、でした。
「欧米文学、ジャズ、映画」はもちろんそのとおりですが、膨大な知識量の雑学の人でもありました。

題名に「スクラッププック」とあるとおり、植草甚一の残したスクラッププックが大量に展示されています。
展示されているのはスクラッププックばかりではありません。
植草甚一が使用していたノートも大小取り混ぜ何十冊も展示されているのです。
まるでノートの展覧会のようです。
ほかには晩年よく作っていたというコラージュ作品もたくさん展示されています。

スクラッププックにはスクラップブック用紙以外にはスケッチブックやクロッキーブックに近いものを使っていたようです。
スクラップブックには、洋雑誌や海外の新聞からの切り抜きが多く、雑誌ごとに作ったものもありました。
芝居好きとしては、二代目市川猿之助が松竹から追放されたときの記事をいくつもいくつもスクラップしたものに興味を惹かれました。

ノートとして使われているものはA5やB5の大学ノートが多く、試写会でのメモにはステノグラファーが使われてていました。このステノグラファーは現在のものより細いのです。こんなサイズのノートもあったのですね。
生原稿も展示されていて、中には「Wonderland」誌特製原稿用紙を使ったものもありました。

コラージュ作品はハガキに描いたものがたくさん展示されています。コラージュを本格的にはじめたのは晩年入院をしてからだそうで、つらい内容のものもありました。つらいのに、楽しげに作っているのも印象的でした。

展示室を入るとまず、植草甚一が「洋書をできるだけ読んでそれについて書いていこう」と決意を記したノートを見ることができます。
昭和17年のものだそうです。
このノートが、現在の大学ノートのような罫線のノートで、保存状態が実にすばらしいのです。
このあと、20年のノートになりますと、わら半紙をただ綴じただけといったものに変わります。紙焼けもかなりひどいものです。
これが35年くらいになりますと、格段に上質の紙に変わります。ひょっとすると今のノートよりもいいかもしれません。
別の展示になりますが、いま世田谷文学館では山田風太郎の戦中戦後の日記も展示されていて、こちらもやはり17年くらいの日記はよいノートに書かれています。20年のノートはわら半紙のようなものをただ綴っただけです。
ノートの質のうつりかわりだけでも相当楽しめます。

ノートには読んだ洋書の内容や批評を記したもの、一ページごとに作家について記したもの、買った本の記録や領収書をはりつけたもの、試写会でのメモ、ジャズのレコードについての記録などなどいろんなものがありました。
領収書の中にイエナ書店のものがあって、なつかしくしみじみと眺めてしまいました。
イエナ書店は銀座五丁目にあった洋書店でした。いまはディオールがある場所にありました。
イエナ書店は群よう子のあみものの本にも出てきて、こどものころは憧れの店だったのです。

展示会の最後に、植草甚一が晩年開店することを構想していた「三歩屋」という古書店があります。
三歩屋は実現はしなかったのですが、構想メモなどから再現したとのことです。

文学館のショップには、スクラップブック用に月光荘のスケッチブックなどが販売されています。
ほかにもLIFEのノートや便箋と封筒といった文房具、植草甚一の着ていたものをもとに作ったTシャツもありました。
もちろん、著書もたくさんならんでいました。

植草甚一は、「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」ではじめて知って、その後何冊か読んで、あるときまったく受け付けられない本に出会い、それ以降読んだことはありません。
今回行くことにしたのは、「自分のノートに使い方の参考になりそうだ」と思ったからでした。
ノートの使い分け方とか、そもそもの文字の書き方など、参考にしたいことはたくさんあります。
それ以上に、「これだけ膨大な量を書き綴るなんて」ということが、とても刺激的でした。

展示場に来ているのは植草甚一を知る人がほとんどのようでしたが、知らなくてもノート好きにはとても楽しい展覧会だと思います。
他人のノートをたくさん見る機会でもありますし、是非おいでくださいまし。

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Profile: An experienced novice knitter, crocheter, tatter and spinner. Love Kabuki and tenugui, a kind of long hanky.

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