五年目〜玉手箱に入っているもの

Posted on 24 1月 2016 by

2016年1月22日で、Notebookers.jp 5年目でした。
特に、こう、何かイベントや管理人さんからのコメントがあるワケでは【ない】ところが、Notebookers.jp 淡々としていて、いいなあ。
5年目もまた、たくさん得て、失って、孤独の輪郭を研ぎ澄ませて、それを綺麗だなあと見とれるような、そういう1年でありますように。

■ □ ■ □

以前、こういう記事を書きました。
どんな物語を読んでも、わたしのものにはならないので、せめてつなぎとめておきたいと思う、というような記事でした。
この考え方をひっくり返されるような本を読みました。
こちらです>>『生きる哲学』若松英輔 文春新書

わたしは、哲学の方向はあまり(ほとんど)読んでいなくて、中国の思想をちょこっとと、高校の倫理の時間で少し読んだくらいで、さっぱり門外漢でして。なので、わかるかなあと思っていたのですが、これが。
いわゆる哲学者の実存主義や認識論について書かれているのではなく、文学者、芸術家、医者、染織家などなど、彼らの仕事、ひととの出会いと別れ、その嘆き、などから生まれた『哲学』が書かれていまして。
その中でも【知っている】文学者、翻訳者、詩人、心理学者などが何人かいまして、さらには、彼らが影響を受けた作家、芸術家なども【知っている】ひとがいて、目からウロコがぼろぼろ落ちるキモチで読んでいました。
なんでことさらに【知っている】と強調したのかというと、わたしは【知らない】こと、モノ知らずなことにかけてはプロ級なのですが、これほど【知っている】と思えた本に出会ったことって、ほとんどなかったんじゃないかと。

基本的に、わたしのスタート地点は【知らない】【わからない】でして。
ひとと会って話をする(Notebookersなら、なおさら)と、本当にひとつひとつが新鮮で、それこそ心に、記憶に焼き付けられるような思いをしています。
ただ、意識的にこっちに重きをおいていたので【知っている】ことを軽んじていたかも知れません。
わたしの知っていることなどたかが知れている、知っていることなどほんのわずかなことだと、ことさらに軽く思っていた、とそういう自覚はあります。
この『生きる哲学』を読んで、『知っていること』を、なかなか、こういうふうに軽んじるものではないなあ、とちょっと考えが変わりました。

知るべきこと、とか、出会うべき言葉は、すでに自分の手に握りしめているのだそうです。
それは、例えば、絵を描くひとなら構図や色などで、音楽をするひとならメロディであり、歌詞であり。
すでに埋もれているものを掘り出す、掘り起こす、見つける、発見すること、それが『生きる』ことだと書かれていました。
Notebookersなら、その掘り出す手助けとなるものがノートブックではないかと思います。

ツイッターで、#2015年の本ベスト約10冊 というタグでつぶやいた時、著者の若松氏から、このようなツイートを頂きました。


書き写した言葉はもう、その人が生み出したもの

なんとも力強い言葉を頂きまして。
(なので、上記、「わたしのものにならない物語云々〜」は、わたしのものにならない、どころの話ではなく、それさえも、自分の内側から生まれたものだった、という本当にコペルニクス的展開クラスの発見で)
ページに考えを書きなぐる、スケッチする、メロディラインを書いてみる、必要であればハサミでざくざく切ってみる、『ノートブックそのものより、ノートブックを使うひとが面白い』のは、本当にその辺りかと。

なので。
「ノートブックに何を書いていいのかわからない」こともあるかと思いますが。
こういう記事も書きましたが、こういうものは本来不要なんだなあ。足がかり、手がかりくらいのカンジで充分かと)
ノートブックに書くべきことは、Notebookers ひとりひとりの中に、もうすでに『在る』(はずな)ので、それを探るキモチで、発見するキモチで、ガリガリ書いてみてはいかがでしょうか。
そして、新ライターさんたち(新ライターさんじゃなくても)も「Notebookers.jpの記事、何を書いていいのかわからない」という時もあるかと思いますが。
これもまた同じことで、自分の中に『すでに在る』ものを探して、掘り起こしてみてください。
掘り起こす、その過程を楽しんで、ノートブックに書いてみてください。

ようこそ、5年目のNotebookers.jpへ
エッジの効いた孤独を、楽しんでいきましょう。

■ □ ■ □

だって玉手箱から出てくるものは、僕らが入れておいたものなんだから。
(『ソクラテスよ、哲学は悪妻に訊け』池田晶子)

生きる哲学&ソクラテスよ、哲学は悪妻に訊け

五年目もこういうカンジで。

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Profile: あなたと一緒に歩く時は、ぼくはいつもボタンに花をつけているような感じがします。

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