「もっとゆっくり見なくちゃわからんよ」〜『モレスキンのある素敵な毎日』を読みました。

Posted on 28 9月 2016 by

彼岸も済んだのだから、もう少し涼しくなって欲しいなあと思うのですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

えー。
アメリカの作家 ポール オースターの『オーギー・レンのクリスマスストーリー』という短篇があります。
煙草屋のオヤジ、オーギー・レンは、毎朝決まった時間に、自分の店を撮影しています。
その撮り貯めた写真を、知り合った作家ポール ベンジャミンに見せるシーンがあり。
ポールは「同じものがたくさんあるなあ」と思いながら、どんどんアルバムのページをめくるのですが、それをオーギーが嗜めてーー
以下、引用。

「それじゃ速すぎる。もっとゆっくり見なくちゃわからんよ」
たしかにそのとおりだ。じっくり時間をかけて見るのでなければ、何も見えてはこない。私はもう一冊のアルバムを手に取り、もっと丹念に進むよう自分に言い聞かせた。細部にもっと注意を払い、気候の変化にも留意し、季節が移るにつれて光の角度が変わっていく様子にも気をつけた。するとじきに、車の流れの微妙な違いがわかるようになり、一日一日のリズムのようなもの(略)も予測できるようになった。(略)勤め先へ向かう通行人たち。毎朝同じ人が同じ場所を通って、オーギーのカメラの視野のなかで、それぞれの人生の一瞬を生きている。

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9月18日 モレスキナリーのYOKOさんが書かれた『モレスキンのある素敵な毎日』(大和書房)が発売されました。(YOKOさん おめでとうございます♪)
わたしも読みまして、そのレビューを書こうと思います。
えー、エンリョ会釈なく内容を書いて行きますので、まだお読みではない方はご注意下さい。
以下、ネタバレです。
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本当にネタバレします。あとがきにまで言及しますので、ご注意下さい。
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わたし、オースターで一番好きな長篇は『リヴァイアサン』かなあ。
ソフィ カルをモデルにした女性が出てくるのです。
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オースター長篇、『ブルックリンフォリーズ』もいいなあ。
前書きもものすごく楽しい。
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(『モレスキンのある素敵な毎日』をお持ちの方は、ぜひお手元に置いてお読み下さいー)
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この『モレスキンのある素敵な毎日』には、前回のモレ本2『モレスキン〜人生を入れる61の使い方』の著者三人のかた、堀正岳さん、このサイトの管理人たかやさん、『モレスキンのある素敵な毎日』の著者である中牟田洋子さんご本人のモレスキンが掲載されていまして。
ああ、そうなんだ、と思いました。
この三人のかたは、モレスキンについての本を書いているけれど、それと同時にモレスキンユーザーであり、ファンなんだと改めて実感しました。
この三人のモレスキンについて、えー、感想を書こうと思います。

◯Story20 美術鑑賞ノートを作る
(章立てが “StoryXX” てなっているところもいいなあ)
この章は、YOKOさんのモレスキンの紹介でした。
美術館で見た、忘れたくない作品を、ささっ とメモしよう、額縁と印象的なオブジェクトを描いて、ポイントをおさえる、という使い方。

モレスキンの見開きの画像があります。
男性が三人集まっていて、そのうちのひとりが、背中に花束を持っている、そのページがすごくイイのです。
美術展に来ていたお客さんかな、関係者かな、主催のひとへの花束かな、と、これだけで短編小説みたいで。
芸術品そのものだけじゃなくて、こういう、展覧会で見かけたひと、もの、なども書き込むことで、より、その時の空気を残せるなあ、と思ったり。
わたしも美術館や博物館に行くのが好きなのですが、こういう方向にもアンテナを張り巡らせればいいな、と思います。

◯Story31 フィールドワークの現場を記録する
こちらは堀正岳さんのモレスキンで、北極への46日間の航海記録が紹介されています。
これもまた見開きの画像があるのですが。わたしが見入ったのは海と空の写真が貼られているページでした。
上半分に写真を貼り、下半分は船上生活についてのつぶやきのようなメモがあります。
船の生活のリズムと、最初の2週間がもっとも長くーー と、時間の流れの感覚の変化を魔の山になぞらえています。(Tマンの『魔の山』?)

この二枚の写真が心鷲掴まれました。
この写真の端に、何か書かれていて、わたしは最初、文字かなと思って、角度を変えたりして見てみたんですが、それは文字ではなくて、フレームの外の海と雲のスケッチでした。
写真の内側に収まらない北極の海を、本当に見たひとのペンの跡だと思いました。

◯Story47 A4をポケットサイズに折り畳む
Notebookers.jp 管理人のたかやさんのモレスキンのTips紹介です。
モレスキンに貼っているA4サイズの紙、地図などの折り方の説明でした。
このページを読んだ時に、「ああ、そうか、だから(章立てが)Storyなんだ」と、なんとなく(かすかに)わかったような気がしました。
(取材がメールでのやりとりであったとしても)モレスキンの持ち主ひとりひとりから『聞いた物語』なんだと思いました。

◯おわりに
わたし、この本を初めて読んだ時、何だかどきどきしてしまって、後ろから開いたのです。
なので、最初に読んだのが、この『おわりに』でした。

モレスキンノートの醍醐味、それはあの「厚み」にあります。見せられないページや見られたものではないページがごちゃ混ぜになっていて、その中にはもちろん、特別な思いで書かれたページもあります。

ここを読んだ時、まだ本文、1ページも読んでないのに何だかすごく嬉しくて、ほろりとしました。

モレスキンの厚み。
モレスキンのオフ会などでよく見かける、モレスキンを積む『モレスキンタワー』
お店で売っている時点のフラットなモレスキンなら綺麗に積めるのでしょうが、ポケットに詰め込み、ページにいろんなものを貼付けたモレスキンは、上に積み上げることができないくらい、丸く、分厚くなります。
それを『不良建材モレスキン』と呼ぶことがあります。
コラージュなどをたくさん貼付けて、閉じられなくなって、常に240度くらい開いている状態で、持ち運ぶためにバケツじゃないと入らないモレスキンも見たことがあります。
そういう歴代の厚いモレスキンを思い出しました。

その厚いモレスキンの中にある『特別な思いで書かれたページ』
日常の記録、旅の記録、読書の記録、勉強のためのノートブック、どんな使い方であっても、忘れたくないことや、残したいことが書かれているんだろうなあ、と思います。
ひょっとしたら、この本に掲載されているモレスキンの画像で、フレームアウトしたその端っこなどに。

『モレスキンのある素敵な毎日』

『モレスキンのある素敵な毎日』

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Profile: あなたと一緒に歩く時は、ぼくはいつもボタンに花をつけているような感じがします。

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