牡羊座と牡牛座〜4月と5月の星座の話

Posted on 07 5月 2017 by

、二冊の本を並行して読んでいます。
その一冊が『ユルスナールの靴』須賀敦子著 です。
この文章を書くひとが、生きていた時、世界はどう見えたんだろうと思います。
こんなふうに、ひとの心の傷や綾を感じられるひとが、現実世界をどう生きていたんだろう、とか。

 ストロンボリが、エオリア諸島のひとつで、エオリアというその名が、故郷に帰れなくて放浪をつづけるオデュッセウスに風の革袋をくれた王の名、アイオロスのイタリアなまりだということを私が知ったのは、二十年もあとのことだ。

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以上、前振り終わり。
以前、ちょっと友達と星座の話をしていて、それがオモシロかったので書いてみます。
◯月生まれだと◯○座〜という、十二星座の話です。

星座占いなどで、最初に書かれているのが牡羊座です。
この牡羊座、そして、牡牛座のエピソードはご存知でしょうか。
ギリシャ神話では、黄金の毛皮を持つ羊、ゼウスが化けた白い牡牛となっています。
その物語を紹介しようと思います。
(そして、今回、注釈をつけています。本文と合わせてドウゾー)(たのしかったわー!)

☆牡羊座の話

牡羊座

黄金の牡羊座


ギリシャ、テッサリア地方のテバイは、アタマスという王様が治めていて、そのお妃は、ネペレーという雲の妖精(※1)でした。
ふたりのあいだには、プリクソス王子とヘレー王女というふたごがいまして、幸せに暮らしていたんですが。
何があったのか、きっといろいろあったのでしょう、ネペレーが国を出ていってしまいました。
そんで、王様は後妻としてカドモスの娘、イノー(※2)を迎えます。
イノーは、ふたごをこころよく思わず。
「なんとか排除したいわー」と思っていたら、テバイがエラい不作になってしまいました。
(と、いうか、不作にしようとして、イノーが煎った小麦の種を民に与えて、それを撒かせたとか、そういう工作もあり)
そんで、王様は「なんでなんでー? 神様のご機嫌損ねたー?」と神殿に神様のご託宣を聞きにいったところ、そこもまた、イノーが手を回していて。
神官は
「プリクソス王子を生け贄にすれば不作は終わる、とお告げがありました」
と言いました。

テバイの世相は王子を生け贄にする方向へ流れている中。
ふらっと出ていった元王妃ネペレーが(なぜか)一部始終を知っていて、ココロを傷めていましたが、いかんせん『元』王妃なので、なんの力もありません。
では、と、神頼み、一番エラい神様ゼウスに「こどもたちを守ってください」と祈っていました。
その祈りを聞き届けたゼウス(※3)は、プリクソスとヘレーのところに、空を飛ぶことができる黄金の羊を遣わします。

ふたごの王子と王女は、羊に乗って逃げ出しました。
空高く飛んでいる時、うっかり、ヘレー王女が下を見ると、あまりの高さにめまいを起こし、手を離してしまい、海へ(※4)と落ちてしまいました。
王子は、どうすることもできず、ただ、羊にしがみついたまま、コルキスという国に到着しました。
コルキスの王様は(この時点では)とても良い王様で、プリクソス王子を手厚くもてなし、保護してくれました。
プリクソスは、羊を生け贄に捧げ(※5)、皮をコルキス王へ贈ったそうです。
コルキス王は、その黄金の羊の皮を、アレス(※6)の森の木にひっかけて(※7)、龍に守らせることにしました。

その黄金の羊は、ゼウスの命令を果たしたということで、天に掲げられ、星座のひとつとなったんだそうです。

牡羊座メモ

話しつつ、こういうの書くのダイスキ。


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☆アルゴ号の冒険
この黄金の羊は、生きていてふたごの王子と王女を助けた頃よりも、生け贄にされてから、というか、皮の方が有名かも知れません。
えー、ギリシャ神話の冒険譚のひとつに『アルゴ号の冒険』というのがあります。
ギリシャ、イオルコスの王子、イアソンは、イロイロあって(※8)、この黄金の羊の皮を手に入れてくるようにと、叔父であるイオルコス王に命じられます。
そんで、船を仕立ててコルキスへと向かいます。この船が『アルゴ号』(※9)。
「黄金の羊の皮を手に入れるぜー! うぇーい!!」な乗組員(※10)として、ヘラクレス、オルフェウス、カストルとポリュクス、テセウス(※11)が名前を連ねていました(※12)。

すったもんだがあって、アルゴナウタイご一行様、コルキスへ到着します。
コルキスの王様はプリクソスを保護した王様ですが、えー、やっぱり黄金の羊の皮は宝物なので「下さい」「はい、じゃー、あげましょう」とはできず。
コルキス王は、イアソンに難題を出すのですが、イアソンはその度にクリア(※13)します。
一気にケリをつけたかったのか、難題のネタが尽きたのか、コルキス王は「アレスの龍を退治したら、羊の皮はやる」とイアソンに言います(※14)。
イアソンは魔法の薬を使い、ドラゴンを眠らせ、無事に羊の皮を手に入れて、国へ持ち帰ります(※15)。

この羊の皮は海の神、ポセイドンに捧げられました。
ポセイドンはそれを喜び、この英雄たちを乗せた船、アルゴ号を天に掲げ、星座としたそうです。
(今はこの星座は、帆座、とも座、らしんばん座、りゅうこつ座の四つに分かれているようです)

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☆牡牛座の話
牡牛座にあるプレアデス星団は、和名を『昴』と言います。統(す)ばる、集まる、の意味。

牡牛座

牛は、ギリシャでは力とか豊かさの象徴だったとか、そういうのを読んだ覚えが。


ギリシャ、フェニキアの王女エウロパは、一番エラい神様ゼウスに見初められまして。
ゼウスは牡牛に化けてエウロパに近づき、エウロパがその背中に乗ると、ゼウスはギリシアその周辺を走りまくって、クレタ島へ連れていきました。
その走りまくったエリアをエウロパ(ヨーロッパ)と呼ぶようになったそうで。
この時、ゼウスが化けた白い牛が天にのぼり、牡牛座になったそうです。

牡牛座の話としては、ここで終わりなのですが。
終わらないのが、フェニキア王家のひとたちです。
王女のひとりが行方知れずになり(ねえ)、残された家族のひとたちは、そりゃー心配するでしょう。
エウロパを探しに旅に出たのが、兄のカドモス(※16)です。
このカドモスが、旅の途中、なぜかアレスのドラゴンに出会い、退治します(※17)。
その時、女神アテナ(※18)が現れ「竜の歯を地に撒きなさい」(※19)と言われます。
カドモスは言われた通りに、歯を撒くと戦士たちが現われ、殺し合い、5人になると戦いを終えました。
カドモスは、この5人と国を建ておこします。その国がテバイです。

牡羊座メモ

漢字含有率が低いのはカンベンして下さい。


そんで。
アレスは、自分の龍を殺されたことで激怒し「テバイを呪う」と発言します。
カドモスは、すぐさま謝罪し、罪を認めます。アレスは、カドモスその潔さを気に入り、テバイも良い国なので「じゃー、俺の娘をやるよ」という話(※20)になります。
アレスは、アフロディテとの間に生まれたハルモニアをカドモスに嫁がせます。
ハルモニアは、イノーという娘を生みます。これが牡羊座話に出てくるアタマス王の後妻。

あれ?(※21)
時系列としては、このようになっています。

時系列メモ

これはリーガルパッドですが、モレスキンにもいっぱいラクガキしています。


牡羊座の御家騒動>アルゴ号の冒険>牡羊座の恋愛騒動の、はず、なんですが。
あれ、イノーがカドモスの娘なら、なんか、その、時間軸が捩じれているような…
考えられるのが、アレスの龍が二匹(か、それ以上)いる?
(そう、イアソンが眠らせた龍と、カドモスが退治した龍が別個体なら、話がなんとか繋がる)(※22)

えー。『ギリシャ神話』というのは、いろいろな時代の作者が、ギリシャ周辺地域の伝説をそれぞれの解釈でまとめたものだそうで。
「これが一番正しい」というのはなさそうです。
(というか、神話なら、そのくらいおおらかであってほしい)
(本朝でも、あの牛若丸の従者、弁慶さえ存在が確定されていないそうで)
(わたしはその方が楽しい)
わたしは、いわゆるホラ話がとても好きなのですが、ひょっとして、ギリシャ神話(ギリシャでなくても)の、このちょっといい加減なトコロがその大元なのかもしれないなあ。

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◎ココから注釈◎
※1:雲の妖精って、わたし、他のギリシャ神話では読んだことないので、あんまり出番ないのかなあ、と思われます。ギリシャのイメージと言うと、曇りじゃなくて抜けるような青空だからかなあ。
あ、アンゲロプロスっていうギリシャ人の映画監督の作品は曇りだよ!すっごいすばらしー曇り空を見れるよ!
※2:ここすごいポイントです。覚えておいてください。
※3:これなんですが。なんでこんなカンタンに、自分のカノジョでもないネペレーのために、ゼウスが黄金の羊などというスペシャルなものを遣わしたのか、と思いまして。
えー、そんで調べたのですが。
イノーは、ゼウスにとって曾孫にあたるんだそうです。
曾孫の不始末を申し訳なくおも… や、たぶん、思わないだろうなあ。
やっぱり、ネペレーが好みのタイプだったから、とか、そういうんじゃないかなあ。
※4:またなんかネタでもないネタだろうと思われたかも知れませんが、ヘレーが落ちたあたりの海を『ヘレスポント』というそうです。『ヘレーの海』の意味。わー、4つ目にして、初めて注釈らしい注釈に。
※5:せっかく助けてくれた羊を生け贄? ヘレーが落ちたから腹いせ? などと思ったのですが。
Wikipediaで見てみたら、神様が遣わした獣は、神様へお返しするのが当時はふつーだったようです。へー。
※6:アレス。えー、戦いの神です。粗暴で残忍で、理性的&理知的な戦いの女神アテナとよく対にされている。って、ここでわたしはパスタを茹でていることを思い出した。わ、わー。
※7:雨とか振ったらどうするんだろう。ドラゴンが守ってくれるのかなあ。時々、見たくなったり、触りたくなったら、どうするの。王様だからって、ドラゴン、下がってくれるの。どの程度、王様、アレスのドラゴンを手なづけてるの。
※8:イアソン側の理由としては王位を取り戻すとか(イアソンのお父さんが、本来王様のはずが、弟に簒奪されたとか)、叔父さん側としてはイアソンを始末したいので、ドラゴンに食べられてしまえー、とか。
※9:この船を造ったのがアルゴスという大工。おとーさんが何と、牡羊座の双子の片割れプリクソス。
※10:うぇーい! 注釈10まできたよー(その割にはミがないのはわかっている)!
アルゴ号の乗組員は『アルゴナウタイ』と呼ばれているそうです。カッコイイなあ。人数が、えー、わりと決まっていなくて、やっぱり物書きとしては「書いてみたい」話なのでしょう。書くひとによって人数が違うそうです。
※11:ヘラクレス:力じまんの英雄。ライオンの皮を被っている(比喩じゃなくて、物理的に)。
オルフェウス:竪琴の名人。えー、力じまんでなくても、こういう冒険に参加するっていいなあ。
カストルとポリュクス:双子座の双子。星座では、明るい星がポリュクス、少し暗い方がカストルだそうです。わ、わー、ちょっと百年の孤独っぽくない? それっぽくないですか。
テセウス:時系列的にまだ生まれてないはずなんですが、やっぱり一大冒険譚だから参加させたいよね!
ギリシャ! おおらか!!
※12:注釈を書くのが楽し過ぎて、本文が進まないという本末転倒な。
※13:コルキス王の娘メディアが、この難題に対しての方法を教えてくれるワケです。イアソンに一目惚れしたから。

難題の一部(ハリーハウゼンだよー! ストップモーションだよー!!)
※14:わたし、牡羊座の話とアルゴ号の話をべつべつの本で読んだのですが。
やっぱりコルキス王、羊の皮、自由にできてないじゃーないですかー。
牡羊座話では「龍に守らせる」とかゆっておきながら、アルゴ号話では「退治させる」て。
「王、黄金羊皮はどういたしますか」
「フフフ、そうだな、アレスの龍に守らせよう」
とかゆってさー、そんで、やっぱり龍が強くて手が出せなくなるって、なにその小物感。(そもそも、最初に、そのドラゴンが守る木に、どうやって羊皮ひっかけたんだ)
※15:本来なら、アルゴ号の冒険は、※8とか、注釈のつかなかった「すったもんだのあげく」の部分がメインで、映画にするなら絶対その部分なんですが、この注釈のような、いらんコトを書く方がわたしは楽しい。そして、このアルゴ号の冒険は終わり、イアソンとメディアの物語が始まるんですが、これがまた凄惨な話で。いやはや。
(そしてこの時点で、まだパスタを食べてないことに気付いた)(作った! 作ったんだけど、今、左側に置いてある)(きっともうのびている)
※16:出てきたよ! カドモスだよ! 注釈で言うと※2だよ!
※17:イアソンに眠らされて、起きたら金羊皮ないんだもんなあ、びっくりしただろうなあ。アルゴ号では、ドラゴンについては、その後のことは書かれてないので、カドモスに会うまでは、どこかでふらふらしていたのだろうと思われます。
※18:この名前には、たぎる思いをいだくかたがいらっしゃるはずなんですが、わたし、ほとんど知らなくて。すみません。なんだっけ、世界を丸投げされた、100人兄弟の戦う義務教育就学児たち。
※19:イアソンがコルキス王に命じられた難題のひとつがコレ。竜の歯を撒くと、戦士たちが現われ、イアソンに襲いかかりますが、これまたメディアに教えられた方法で切り抜けます。
※20:神様はゆったことを取り消せないので、テバイは呪われたままです。
※21:本文にはぜんぜん関係ないんですが、※11のテセウスは、牡牛座恋愛騒動のあと、エウロパの孫として生まれるミノタウロスを退治する英雄です。時間軸ねじねじまくり。
※22:そんな推理小説のアリバイ作りみたいなことは、ギリシャ神話でしてほしくないなあ。筋が通らなくてもいい、むしろデタラメっぽいほうが、神話らしくていいと思うの。

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というわけで、何かテーマを決めて、1か月に1回は記事を書こうと自分に課しました。
次はえー、6月頃に、次の星座について書きます。次は双子座? 蟹座?

参照した本:あっちこっちのギリシャ神話の本から。

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