確か、ヨーロッパのアルプスとか、あの辺りの山間部の幻想譚、昔話なんですが。
ある若い猟師がいて。ものすごく弓が上手で、百発百中の腕前で、山の生き物を狩りまくっていて。
ある日、山の神様という老人が猟師の前に現れ「なんでそんなに生き物を殺すのか」と問います。猟師は「自分は土地を持っていないので、動物を狩らないと生活ができない」というようなことを答えました。そしたら老人は「これをやる。全部食べずに、ほんの少しでも残っていたら、次の食事の時にはまた器いっぱいに戻っている」と器に入ったチーズを渡します。猟師は、その日からチーズを食べますが、少し残しておくと、老人の言った通り、次の食事の時にはチーズはたっぷりと器に入っていました。そんで、猟師は狩りをしない生活をエンジョイするんですが、ある日。ふと、狩りのことを思い出します。弦のうなる音、動物の悲鳴、猟師はとうとう、弓を手にしてしまい…
という話があるんですが。今、わたしんちにある豆乳が、ぜんっぜん減らないんです。ミルクティとか、ホットミルクとか、スープとか、使っているのに、ぜんぜん重さが変わらない、減らない。つい、この昔話を思い出すくらい、夜、使った分を誰か(何か)が充当してるんじゃないかと思うくらいです。わ、わたし、別に狩りもしていないし、この豆乳はスーパーで買ったもので、山の主っぽいおじいさんに頂いたものじゃないし、だ、ダイジョウブかな…(主に賞味期限とか)。
前振り終わり。
12か月の星座を紹介しよう(ムダに注釈が多い)@1月の星座です。
(以前の記事はコチラ>>4月5月の牡羊座と牡牛座、6月のふたご座、7月のかに座、8月の獅子座、9月の乙女座、10月と11月のてんびん座&いて座、11月のさそり座があります。よろしくドウゾー)
1月の星座は山羊座です。
秋の星座で、一番早く地平線から姿を見せます。
三角形をしていて、古代ギリシャでは「神々の門」と呼ばれ、天国の入口と言われていました。
(天国の出口はかに座だそうです。へー)
山羊座はいかにして天にあげられたか、というと…
ギリシャの神々が、エジプトのナイル川岸辺(※1)で宴会をしていました。
パン(※2)も、この宴に呼ばれていて、笛を披露したりして、場を盛り上げていました。
そこへ。怪物テュポン(※3)が現われます。
このテュポンというのが、ものすごい怪物で。
見上げるような巨人で、いくつも首があり(100あるという説もあり)、目と口から火を噴き、黒い舌をべろべろさせていて、太ももからはマムシが生えていて、背中に翼があり、この羽根で風を起こすという、とにかく設定てんこ盛りの怪物だそうです。この怪物が宴に乱入(※4)してきました。
実はこのテュポンという怪物は、ギリシャの神々とは因縁がありまして。
ギリシャ神代がまだ渾沌としていた頃。
クロヌスという大地の神がいました。クロヌスは「息子に権力を奪われる」という予言をされます。
クロヌスは妻レアとの間に生まれた子を次々と呑み込みます。
最後に生まれたのがゼウスで、レアはゼウスを逃がして、どこだったか、別の島で育てさせます。
成長したゼウスは、父を倒し、呑み込まれた兄妹たちを救う、というそういう軋轢があり。
この戦いで、ゼウスは、クロヌスとクロヌスの兄弟たちを倒すのですが、クロヌスの母ガイア(※5)が激怒して、ゼウスたちに巨人を差し向けます。
この巨人のひとりがテュポンだったりします。
この戦いでも、テュポンはゼウスに倒されてエトナ山に封じられます(※6)。
そんで。Vr.A
ギリシャの神々がエジプトで宴会を楽しんでいると、テュポンが乱入してきました。
ゼウスは、神々に動物に変身して逃げるように命じます。
パンは下半身を魚に変えて(※7)、ナイル川へと逃げました。
ゼウスがテュポンと戦っているのを見て、パンが助太刀をします。
再びゼウスがテュポンを倒し、その感謝のしるしとして、下半身魚のパンの姿を天に上げ、星座とした、と言われています。
Vr.B
ギリシャの神々がエジプトで宴会を楽しんでいると、テュポンが乱入してきました。
ゼウスは、神々に動物に変身して逃げるように命じます。
パンはあわてて逃げたため、上手く変身できず、川につかった下半身だけ魚になってしまいました(※8)。
これを面白がった神々が、この姿を天に上げ、星座としました。
Vr.C
ギリシャの神々がエジプトで宴会を楽しんでいると、テュポンが乱入してきました。
ゼウスは、神々に動物に変身して逃げるように命じます。
酒の神ディオニソス(※9)が、テュポンから逃げようとしましたが、酔っぱらっていたので、頭が山羊、下半身が魚という姿になってしまいました。この姿を面白がった(以下同文)。
上記、テュポンには羽根があって風を起こす、と書きました。
台風は英語で typhoon ですが、これが、このテュポンに由来するとか。
今回、ちらりと出て来た酒の神ディオニソスですが。
この神様、パンと縁がありまして。
パンは、伝令神ヘルメスと妖精の間に生まれたのですが、母親である妖精は、我が子の姿を見て驚き、逃げてしまいます。ヘルメスは赤ん坊を神々の総本山オリンポスに連れて行きます。神々は喜んで赤ん坊を迎え(※10)、中でもディオニソスはとても喜んで(※11)、赤ん坊に「全て」を意味するパンをいう名を与えました。名付け親です。以後、パンはディオニソスにつき従います。
===以下、注釈===
※1:なぜ、ギリシャから出かけていって、エジプトなのか、という説明は一切ありません。ギリシャの神話なのに、舞台がエジプトという珍しいお話です。
※2:こちらの記事の注釈9に書いているパンです。あ、絵がない。
山羊の耳と足を持つ、歌や躍りが好きなエンターテイナーな羊飼いの神様です。
※3:獅子座の記事の注釈6に出ています。ぜんぜん説明になっていない。
※4:なぜ、わざわざギリシャからエジプトまでおいかけてきたのか、潔いほど、その説明がありません。
(わたし、こういう『理由が明らかにされない』というのがすごく好きでして。映画などでもそうなんですが、登場人物が犯罪とか事件を起こす、その理由は割とどうでもいい。(だからベッソンが好きなんだなあ))
※5:孫(ゼウス)が息子(クロヌス)を倒して、ばーちゃん(ガイア)が怒るという、なんとも。
テュポンもガイアが生んだ子でして。つまり、ゼウスには伯父(叔父?)さんにあたります。
※6:封じられたけど、脱出してエジプトまで追ってきたのかなあ、いいガッツしてるなあテュポン。
※7:パンて、上半身、ほぼ人間だから、下半身が魚になると、いわゆる男性版人魚、では……
※8:や、やっぱり、積極的に上半身を山羊に変身させないと、星図のような山羊座にならない……
※9:パンじゃなくて違う神様説もある。いいなあ、ギリシャ神話おおらか!
何度も書いていますが。イタリアの作家ロベルト・カラッソが『カドモスとハルモニアの結婚』という作品の中で「(ギリシャ神話は)異説こそ起源である」と書いています。
ギリシャ神話は、その地方、この地方でまとめたもので、いわゆる「本家」「本元」がありません。
「諸説あり」が常態というすばらしー神話群なのです。この星座の記事、あとふたつですが、えー、この「異説こそ起源」しつこく推していきたいです。
※10:赤ちゃんだったパンの何が神々のツボに入ったのか、それも書かれていません。
※11:更にディオニソスが喜んだツボも、よくわかりません。とにかく、ディオニソスのお気に入りとなったようです。ディオニソスの絵などにも、パンが描かれています。
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次は2月、水瓶座です。
トロイ王家が誇る美少年の物語です。
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