Categorized | Book, Pen

物語の中の文房具〜ジョナサン・キャロル作品より

Posted on 08 2月 2012 by

『蜂の巣にキス』&『フィドルヘッド氏』より ジョナサン・キャロル

わったタイトルだなあ。『蜂の巣にキス』です。
まずこちらからご紹介。ジャンルとしてはミステリになるのだろうか。
このジョナサン・キャロルという作家さんは、作風が独特で、作品を既成のジャンルに収めることができないと、解説によくそんな風に書かれています。

えー。
この物語の主人公、サム、サミュエル・ベイヤーは作家で、物語が始まった頃、ちょっとスランプなんですが、その状態を抜け出すべく、過去、自分が関わった殺人事件を洗い直し、その事件について書こうとする、というあらすじ。

サムは万年筆派でパーカーの万年筆を持っています。
それを使わないと書けない、というくらい愛用して、大切にしているんですが、ちょっとしたいざこざから、つきあっている女性に盗まれます。
カンカンになって返せと迫り、翌日郵送されてくるんですが、万年筆は真ん中から綺麗に二つに切られていて…

すごーく、サムの思い入れがある万年筆なので、ショックを受けるんですが。
…すごく良い万年筆ですが、同じものを買えないわけではありません。ただ、「ソレでないとダメなんだ!」という思い入れ。
ずっと使っていて、どちらかとゆーと、もう安全毛布、お守り的な存在となっているもの。
そして作家というモノを書く職業で、スランプの状態、その万年筆があるなら書ける、大丈夫だ、というホントに精神的指針、意思を前向きにコントロールするための道具、として書かれています。

そして、そのつきあっている女性は、お詫びにと、サムが尊敬している作家の形見の万年筆を手に入れて贈ります。
それも、本当に良い万年筆なのですが、サムはそれを受け取ることができず…
というエピソードがおまけにつきます。

キャロルという作家さんは、ツイッターもしているくらいにはデジタルなひとですが、こういう小道具が好きらしく、短編『フィドルヘッド氏』でも万年筆について書いています。
(『フィドルヘッド氏』〜『パニックの手』収録)

万年筆というのは気難しくて容赦のない代物で、使い手の細心の注意と忍耐を要求する。だが同時に、豪華さと古き時代のエレガンスを手にする方法でもある。乾いたページを横切って流れる濡れたつややかなインクの眺め以外、何も与えてくれない贅沢な悠長さ。

ワタシも1本、ラミーのサファリ、スケルトンを持っていまして。
これでモレスキン、トラベラーズ、その他、がしがし使っています。

豪華さと古き時代のエレガンスを手にする

この一文を肝に銘じて。
万年筆、明日からはもっと丁寧に扱い、多少なりともこの一文に近づけるように、ノートブックに書く内容ももう少し考えて、充実したページを作りたいなあ、と。

何も与えてくれない贅沢な悠長さ
そうなんですね、万年筆が与えてくれるものはあくまでインクの染み、跡。
言葉を選び、文章を紡ぐのはそれを使う人間。
そういう意味では、万年筆はノートブックと同じ、
『道具が面白いんじゃなくて、使うひとが面白い』。

この文章の後、万年筆専門店での会話があります。
誰それが何を買った、何それは〜〜だ、と、登場人物たちが話をするんですが、ワタシは全く詳しくないので、さっぱりわからない。

「黄色いパーカーの《デュオフォルド》買ってったよ」
「《デキシー》の万年筆って聞いたことある?カルティエの《サントス》にちょっと似てるの」
「《シンバッド》だよ。1951年頃に、ドイツのコンスタンツにあったベンジャミン・スワイヤー万年筆工場で造られた。デザインはイタリア人の未来派芸術家アントニオ・サンテリアだって噂だが、まだ証明されてない」

《デキシー》は、キャロルの造ったきっぱりフィクションのブランドですが、ソレ以外は、パーカーとカルティエはわかるけど?な程度の知識だなあワタシ。
どなたかおわかりになる方がいらっしゃったら、解説をお願いします。

そして。
きっと、キャロル本人も万年筆好きだと思われます。
その文章がコレ。

(万年筆の店)の客には金持ちもいればそれほどでもないのもいたが、誰もがコレクター特有の燃えるような眼と中毒者特有の飽くなき欲望を持っていた。
わたしも(中略)店番をすることがある。おかげで古いベークライトと金(きん)を見て元気を出すことをおぼえた。情熱にもいろいろあることを学んだ。

い っ た い ど う い う 情 熱 な ん だ

コレクターなら、どんなジャンルでも同じだと思われますが。
ワタシも文房具好きクラスタの隅っこにいるので、中毒者とか飽くなき欲望とか、なかなかリアリティを(必要以上に)感じられ、…いやー、冗談、言い過ぎ、大げさ、とは思えないところが何とも。何ともはや。いやはや。
ポルシェのクラシックカー《風呂桶》の複製に対し、万年筆をなぞらえて、デザインの良さ、芸術性、そして『本物』へのこだわりを語るシーンもあり、えー、お好きな方はたまらんだろうなー、と。
ご本人が好きでなければ、身近に万年筆好きなひとがいるんだろうなー、そのひとを見て書いたんだろうなー、そう思わせられる文章です。

フィドルヘッド氏、『バイオリン頭』が名前? 誰? そのひとと万年筆のお店とどんな関係が?というのは読んでのお楽しみ、ということで。

Name:
Profile: あなたと一緒に歩く時は、ぼくはいつもボタンに花をつけているような感じがします。

Photos from our Flickr stream

See all photos

2021年4月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

アーカイブ