昼下がり。
旅先の高松築港で通りがかったのは、フェリー乗り場。
そこは乗り場から離れているせいか、人影もありません。
船で海を渡り、別の町へ行く、という行為は、
どこか、とてもとても、遠い所まで旅をするみたいで、
ちょっと憧れてしまいます。

普段、海に囲まれた町で、自宅の窓からも海が見える場所に住んでいるけれど、
生活する上で、船に乗ることは全く無いので。
誰もいない閑散とした港で、このフェリーに飛び乗ったら、
いったい、海の向こうの、どんな町へ連れていってくれるんだろうと考えていました。
鉄道の場合は、目的地まで、ずっと線路が繋がっているからか、
何か、連続性があるように思うけれど、
船の場合は、海を越え波をこえて、まったく違う世界、違う風景へと
連れ出してくれるような気がします。

それにしても、この前、船に乗ったのは、いつのことだっただろう、と
ふと思い返してみたり。
思い出せないほどに、遠い昔のこと?
観光船でもいいから、何か乗ってない?
記憶の底を辿って、ひとつ思い出したのは・・・
そういえば、北海道の然別湖でカヤック体験をしたっけ。
でも、それは、どこか遠くへ連れ出してくれる体験、というよりも
自ら湖へ漕ぎ出したはいいけれど、とにかく、どんなに疲れ果てていても、
自力で漕がないことには、どこへも帰ることすらできない、という教訓を
両腕の筋肉痛とともに、学んだだけでした。
やはり、自分では漕ぐ必要がない船に乗って、
海上のデッキに立ち、潮風に吹かれながら、どこまでも広がる海を眺めて
ノスタルジックに浸るのがいいですね。
そして、夕陽なんかが水平線の向こうに沈んでいく風景も見えれば、
尚更ステキなんだけどなあ・・・。
そんなロマンティックな幻想すら、フェリー乗り場で抱いてしまいます。
話は変わりますが、普段はインドア派なのに、
放浪癖もあるほうなのかな、と思います。
昔、イギリスを一人で旅したときも、ヒースローで飛行機を降りて
どこで泊まるかも、どこへ行くかも決めないまま、日本を出発して。
決めていたのは、とにかくバスだけを乗り継いで北へ行く、ということだけ。
毎晩、B&Bのベッドに寝転がって、ツーリスト・インフォメーションで
もらってきたバスのタイムテーブルを眺めながら、
翌日に乗るバスのことや、立ち寄る場所を決めてました。
今では、そんな自由すぎる旅は到底できそうにないけれど、
自分の中のどこかで、また、そんなあてもない旅をしたくて、
フェリー乗り場の看板を見ただけで、淡い旅愁が掻き立てられるのかも
しれません。

このときも、旅のお供として、わたしと一緒に旅をしたのは、
トラベラーズノートのパスポートサイズ。
以前は、レギュラーサイズを持ち歩いていたのですが、
今は、もっぱら、お留守番。
家置き専用にしています。
荷物がすぐに多くなってしまうたちなので、
少しでも、カバンの中を軽くしたくて。
小さなパスポートサイズが、最近の旅の相棒です。
旅先でちょっとしたメモを書き込むほか、
もらったカフェカードや、電車のチケットなどをジッパーケースに収納して
折れないように持ち帰ります。
旅から帰ったら、今度は留守番組だった、レギュラーサイズの出番。
縦長サイズの方眼レフィルに、旅の思い出を万年筆で書きとめたり、
写真やチケットを貼り付けたり。
そうやって、旅の思い出を一枚一枚、自分の手で書き記していくのも、
また、旅の楽しみ。
これこそ、インドア派たる旅好きが、家にいながらにして旅気分を味わえる
最たるものかも知れませんね。
もちろん、文具好きであることも必須ですけどね。

(こんな風に、トラベラーズノートに書き綴った旅日記のページは
ブログにもアップしています。良ければ、そちらもどうぞ!)