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牡羊座と牡牛座〜4月と5月の星座の話

Posted on 07 5月 2017 by せら

、二冊の本を並行して読んでいます。
その一冊が『ユルスナールの靴』須賀敦子著 です。
この文章を書くひとが、生きていた時、世界はどう見えたんだろうと思います。
こんなふうに、ひとの心の傷や綾を感じられるひとが、現実世界をどう生きていたんだろう、とか。

 ストロンボリが、エオリア諸島のひとつで、エオリアというその名が、故郷に帰れなくて放浪をつづけるオデュッセウスに風の革袋をくれた王の名、アイオロスのイタリアなまりだということを私が知ったのは、二十年もあとのことだ。

===
以上、前振り終わり。
以前、ちょっと友達と星座の話をしていて、それがオモシロかったので書いてみます。
◯月生まれだと◯○座〜という、十二星座の話です。

星座占いなどで、最初に書かれているのが牡羊座です。
この牡羊座、そして、牡牛座のエピソードはご存知でしょうか。
ギリシャ神話では、黄金の毛皮を持つ羊、ゼウスが化けた白い牡牛となっています。
その物語を紹介しようと思います。
(そして、今回、注釈をつけています。本文と合わせてドウゾー)(たのしかったわー!)
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物語の香り〜香り編◎『ハンニバル』〜「花屋はみんな泥棒さ」〜

Posted on 20 3月 2017 by せら

彼岸ですねー。徐々にあたたかくなってきております。
皆様のおすまいのおところはいかがでしょうか。
『貴婦人と一角獣』3枚目、この五感はどれでしょー。
これはわかりやすい?

貴婦人と一角獣

貴婦人と一角獣。この五感は?

====================
以上、前振りおわり。
物語の香り◎香り◎ハンニバル編(もう少し、タイトルをどうにかできないものか…)です。
前回は、物語の香り◎香料編でした。
香料編と香り編に分けよう、と考えていたんですが、香り編が以外と多く、そして書きたい物語が多いため、えー、香り編#01 トマスハリスの『ハンニバル』より、記憶と香りについて、ちょこっと書いてみようと思います。

ところで。
マルセル プルーストが書いた『失われた時を求めて』という物語があります。
この物語、主人公がマドレーヌを紅茶にひたして食べたその瞬間、子供の頃を思い出す…という冒頭がとても有名で、このように香りや味により、当時の記憶や感情を思い出す、感覚の再現を誘発することをプルースト効果というのだそうです。

このプルースト効果がとてもたくさん見られるのが、今回の香り編『ハンニバル』かなあ。
前回の香料編でも、ちょこっと書きました。
原作:トマス ハリス
アンソニーホプキンス主演で、映画にもなっています。最近はドラマにも。

ハンニバルレクター。
医学博士、そしてシリアルキラーというにはあまりにも言葉が軽い、『前例がないため名づけようがない』社会病質者です。

レクター博士、
一作目『レッドドラゴン』で逮捕され、
二作目『羊たちの沈黙』で精神病院に隔離されているのですが、世間を騒がす連続殺人事件を誰よりもよく知っていて、その事件を追うFBIの訓練生クラリス スターリングとの駆け引きと解決が描かれ、
そして、
三作目『ハンニバル』では、7年だか8年の沈黙を破って復活…と

この三作目です。
二作目『羊たちの沈黙』で訓練生だったスターリングは、現役捜査官として(セクハラ、パワハラに悩まされつつ)活躍しています。
そんで、博士はイタリアのフィレンツェへ逃亡し、正体を隠し、フェル博士と偽名を使い、とある書庫の司書として文学、芸術を満喫する生活を送っている。
スターリングが関わった、とある事件をきっかけに、怪物が復活するーーー
と、そういうようなあらすじなんですが。

『ハンニバル』文庫本で上下巻です。
これに、香り、匂いの記述がとてもたくさん出てきます。
芳香も悪臭も。
何て言うんだろう、状況の説明、補足、強調、とでも言うのか。
例えば、飛行機のエコノミー席での息苦しさ、食肉用家畜の養殖場、フィレンツェの香料専門店などなど。

前著『羊たちの沈黙』でも、レクター博士がスターリングと初めて会った時、スターリングのつけているスキンクリームの銘柄を当てたとか、そういうエピソードがあったはず…(今、『羊たちの沈黙』見つからないので確認できませんです)。

その物語の中で、印象的な香り、記憶、事件の補足的、また強調として使われている香りを紹介しようか、と。
今、これ入力していて、企画として成立するのかわたし! とちょっと不安ですが、やー、『好きなものを語るとき、それは誰かを救う』から、たぶんダイジョウブ(とじぶんに言い聞かせる)。

#01 クラリス スターリング
第一部のオープニングから。
麻薬組織のボスの逮捕に向かう途中、スターリングはバンの中で、ある匂いから、父親のことを思い出します。
以下、引用。

男たちのひしめく、この不快な臭いのする監視用ヴァンに乗っていると、身を刺されるような孤独感に包まれる。鼻をつくのは安物のアフターシェイヴの匂いーー”チャップス”、”ブルート”、”オールド・スパイス”。それに汗と革の匂いだ。ふっと不安が忍び寄ってきて、それは舌の下に含んだ一セント銅貨の味がした。
(脳裡にあるイメージが割り込んでくる。タバコと洗浄力の強い石鹸の香りをいつも発散していた父。キッチンに立って、先端が四角く割れたポケットナイフでオレンジの皮をむき、それを自分に分けてくれた父。彼が夜間パトロールに出かけたとき、しだいに遠ざかっていったピックアップトラックのテイルライト。そのパトロールで、父は落命したのだ(略))

警官だったお父さんがパトロール中に撃たれて亡くなったというのは、前作でも触れられていて(というか、スターリングの中で父親はとても大きな存在で、レクター博士にこのトラウマを弄ばれるワケです)、それがオープニングで取り上げられています。
あまり心地よくないにおいの中にいて、そこから(なぜかぜんぜん違う)父親の香り、父親の存在を思い出すーー

この麻薬組織への急襲は、スターリングにとってあまり気乗りのしない任務なので、そのやりきれなさから想起したのか、お父さんダイスキー!と懐かしむのではなくて、どちらかというと、残された哀しみ、孤独を噛み締めるような、そんな『プルースト効果』です。
引用で(略)としている後は、スターリングは、お父さんのダンス用の衣服を思い出していて、そこからの連想で彼女が現在使っているクローゼット、その中身、あまり着る機会がないパーティドレスなどを考えています。
父親と同じ(ような)仕事についた自分、そしてふたりして同じように、クローゼットにしまわれている、とっておきの衣装。
(そういう『とっておき』の衣装を着る機会があまりない、という華やかなことが少ない境遇、状況が、よりくっきりと際立つような)(切ないなあ)
香りひとつで、これだけの記憶の広がり、深くまで降りていける、そう表現できるってすごいなあトマスハリス。

この引用で、わたし、舌の下に含んだ一セント銅貨の味 ていうのがすごくリアルに感じられるのですが。
なんていうか、耳で感じる香り、口から耳へ伝わってくるような感覚(か、香りって耳から入ってこない? こないですか??)があり、感覚の共有とでもいうのかなあ、読み直していて、この一節がとても印象的でした。

#02 パッツィ警部
リナルド パッツィ、フィレンツェ警察の主任捜査官です。
レクター博士の正体に気付き、博士を(逮捕じゃなくて)(賞金欲しさに)売ろうとする人物で、えー、そういう人物です。
視覚による記憶が並外れていて、その能力を全面に押し出して仕事をしているワケです。
以下、引用。

尋問の名手パッツィは、聴覚と嗅覚に訴えながら自問していった。
(あのポスターを目にしたとき、耳には何が聞こえたっけ?……一階のキッチンでカタカタ鳴っていた鍋の音だ。では、踊り場にあがってポスターの前に立ったとき、何が聞こえた? テレビの音だ。居間のテレビ。『リ・イントッカービリ(アンタッチャブル)』でエリオット・ネスを演じていたロバート・スタックの声。料理の匂いはしたか? ああ、料理の匂いが伝わってきた。他に何かの匂いをかいだか? ポスターは目に入ったのだがーーいや、目にしたものの匂いはしなかった。他に何か匂いをかいだか? あのアルファロメオの匂いなら、はっきり覚えているのだが。車内はとても暑かった。あの熱いオイルの匂いはまだ鼻にこびりついているようだ。あれだけオイルが熱くなっていたのは……ラコルドだ。そう、ラコルド・アウトストラーダを飛ばしていたからだが、あのときはどこに向かっていたんだったかな? サン・カッシアーノ。うん、たしか犬の吠える声も聞いたな。サン・カッシアーノで。思い出したぞ、あの家の主を。あいつは強盗とレイプを重ねたやつで、名前はたしかジロラモなんとか、といった)。
記憶の断片が一つにまとまる瞬間、そう、神経の末梢が痙攣しながら連結し、灼熱のヒューズを通して一つの着想が浮かびあがる瞬間、人は何よりも鮮烈な喜悦にひたるものだ。パッツィにとって、それは生涯で最良の瞬間だった。

これはパッツィがレクター博士と会う前、別の連続殺人犯を追っていた時のエピソードでして。
最初はおぼろげな視覚的なイメージを、聴覚と嗅覚の記憶を探りながら、徐々に鮮明にしていく、犯人にたどりつく、その過程です。
スターリングの感傷的な記憶の再現とは違って、パッツィは、理論的、具体的に、そして『仕事に活かす』という前向きな方向で五感を駆使しています。
(五感の記憶を丹念にたどり直す、こういうメソッドが何かあるんでしょうか。)
(スターリングの香りの記憶の再現は、無意識、何となく、でしょう。そんでパッツィの方は、能力、スキルというカンジで)

記憶というとわたしは『頭で覚えていること』しか思いつかなかったんですが、このように

「あの時、聞こえたこと」
「あの時、見たもの」
「あの時、あたりに漂っていた香り」

五感で覚えていることというのは、より体感として刻み込まれた、というか、(アタマで覚えている)言語化された記憶よりも、丸ごとそのままの、直接的なものだろうなあ。

#03 ハンニバル レクター
以下、引用。

 まだ早い時期に、ハンニバル・レクター博士は騒々しい街路からこの世で最も香ぐわしい場所の一つ、ファルマチーア・ディ・サンタ・マリーア・ノヴェッラに入った。ここは七百年余の昔、ドメニコ会の修道僧たちによって創られた薬舗である。奥の内扉まで伸びている廊下で博士は立ち止まり、両目を閉じて顔を仰向けると、名高い石鹸やローションやクリームの芳香、作業室に並ぶ各種の原料の香りを心ゆくまで吸い込んだ。(略)
このフィレンツェで暮らしはじめて以来、身嗜みに気を配るフェル博士がこの店で購った賞品の総額は、それでも十万リラを超えないだろう。だが、それらの香料や香油はよくよく厳選され、しかも並はずれた感性によって組み合わされていた。その感性は、鼻によって生きている香りの商人たちの胸に驚きと敬意を植えつけずにはおかなかったのだ。

レクター博士、フィレンツェでの暮らしをエンジョイしております。
某書庫の司書(候補)になり、その書庫に住み、古い文献を管理し、こうして香り、香料も潤沢に使っている。
(比較として、羊たちの沈黙時代、精神病院にいた時の悪臭についても、何度か書かれています)
映画では、FBIを挑発するように手紙を送ったんですが、その便箋に、ハンドクリームの香りを染み込ませていまして。
竜涎香とテネシーラベンダーと、あと羊毛をブレンドした香り。
おそらく、原作のこの辺りの『香り』の記述から創られた、映画オリジナルのエピソードです。
このあたり、行間から、花びらやハーヴのひらひらが浮かびあがるようなイメージで読みました。
前述のパッツィ警部の負っている闇、そして博士のエンジョイフィレンツェライフの明るさ、そのコントラスト、なのかなーと思いました。

さらに引用。

 自分の鼻の形を変えるに際し、レクター博士が外面的なコラーゲン注射のみに留めて、いかなる鼻整形手術も行わなかったのは、まさしくこの喜びを保ちたいためだった。彼にとって、周囲の空気は各種の色彩と同等の、明瞭で鮮やかな香りで彩られている。彼はあたかも絵の具の上に絵の具を重ね塗りするように、それらの香りを重ねてかぐことができる。ここには牢獄を思わせるものは何ひとつない。ここでは空気は音楽なのだ。
まずは本物の龍涎香、海狸香、それに麝香鹿(ジャコウジカ)のエッセンスから成る基音がゆきわたっており、(略)白檀、肉桂、ミモザ等の香りが渾然となった調べがのびやかに響きわたっている。
 自分は両手や両腕、両の頬で、周囲に満ちている香りをかぐことができるという幻想に、レクター博士はときに浸ることがある。そう、自分は顔と心で香りをかげるのだという幻想に。

(ここも読んでいて、本当にガーリーなキラキラした空気が漂い、花やハーヴがひらひらしているような、そんな印象でした)(や、博士、シリアルキラーなんですが)
ここでは空気は音楽なのだ。
短い文章なのですが、本当に豊かな空間なのだろうなあと想像できます。
これもひとつの共感覚なんでしょうか。
音も空気の振動なので、香りと近いものなのかなあ。
そしてその香りを、肌と心で知覚する、という幻想を楽しむ。
例えば、手で、甘い香りだと感じるのは、どういう感覚なのだろうなあ。
温かさ? 色? 柔らかさ?
複数の香料の響き合いというのは、五感、どこで感知するんでしょうか。
オモシロいなあ。

ちょっと考えてみました。指先で感じる香り。
メンソール系:冷たい
ばらなどのフローラル:流れるようなほの暖かさ
ラベンダー:ちょっと固い
ムスク:ふよふよして厚みがある
柑橘系:薄めで固い
白檀:すごく固い

あれだな、例えばインク沼のひとなら、人の目で見た香り、色をノートブックに書いてみてもいいかも知れない。
メンソールはどんな色だろう。原料の色じゃなくて。香りの色。
音であれば、どんな音だろう。高い音、低い音、楽器であれば、どの楽器で奏でられた音だろう。
言葉なら、どんな言葉になるのかなあ。香りの印象ではなくて。

というわけで。
物語の香り◎香り◎ハンニバル(下巻)編に続きます。
よろしくお願いしますです……

■おまけ
チーズやトリュフがふんだんに並ぶ ”ヴェラ・ダルー1926” は、神の足のような匂いがする、とフィレンツェっ子は言う。
(『ハンニバル』上巻より)

■おまけ2
人の目が聞いたこともなく、人の耳が見たこともなく、人の手が味わうこともできず、人の舌が想像することもできず、人の心が話すこともできない、そんな夢を俺は見たんだ。
(『真夏の夜の夢』沙翁)

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今夜の月を差し上げましょう、物語売りは言った。〜ムーンプランナーと『できたことノート』を使ってみた

Posted on 29 7月 2016 by せら

月最後の日曜日は、わたしのツイッターのタイムラインではちょっとしたお祭りのようになります。
イタリアの作家タブッキが『レクイエム』という作品を書いていまして。
舞台はポルトガルのリスボン、とても暑い真夏の日、これが七月最後の日曜日なのです。
主人公は歩いて回り、生きているひと、死んでしまったひと、存在していないかも知れないひとと出会い、話しをして、また別れていきます。
それだけの物語なのですが、ファンは多く、この日、わたしのタイムラインでは、フォロワーさんたちが『レクイエム』の好きな一節を流し、登場人物が食べたリスボンの名物料理の画像をアップし、合い言葉のように『七月最後の日曜日』とつぶやいています。
去年は7月26日でした。今年は7月31日。先日、ふと思ったんですが、イースターやペンテコステと同じ、移動祝祭日だ。

今日はぼくにとって、とても不思議な日なんです。夢を見ている最中なのに、それが現実のようにも思えてくる。ぼくは記憶のなかにしか存在しない人間にこれから会わなければなりません。今日は七月最後の日曜日ですね、足の悪い宝くじ売りが言った。町はからっぽ、木蔭にいても四〇度はある。記憶のなかにしか存在しないひとに会うのは申し分のない一日だと思いますよ。

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えー、そのタブッキ祭りがもうすぐなワケですが、作品レビューの記事ではないです。
最近、ムーンプランナーのオモシロい使い方をちょっと見つけまして。
その紹介をしてみようと思います。

ムーンプランナーとできたことノートとアルテミスとSTORAGE.it

ムーンプランナーとできたことノートとアルテミスとSTORAGE.it

先日、ツイッターで、ムーンプランナー【公式】(@moonplanner)さんがこんなことをつぶやかれていました。

へー、『できたことノート』かー、と、この時はまだ漠然と「そういう本があるんだー」くらいに考えていました。

以前、こういう記事を書きました。そんで、目標を書いて、ウィッシュリストも書いて、持ち歩いていたのですが。

この7月の13、14日くらいに、ムーンプランナーを見返していて、空白がちょっと目立つなあ、この期間もできてなかったなあ、と落ち込んでいまして。
ですが、以前の記事にも書いたように「自分を責めるような使い方はしなくていい」という言葉を思い出し、また、満月が近いから落ち込むのだろう、くらいに考えて、ムーンプランナーの空白とできてないことは、ひとまず置いておくことにしました。

その時、ふ と『できたことノート』が思い出されまして。
「じゃー、見てみよう」と本屋さんへ行きました。

できないことを見ても落ち込むだけです。

これは『できたことノート』の表紙見返しの部分

これを見て、即レジへ行きました。
読んでみると、ムーンプランナーにぴったりの内容だなあ、と。
『できたことノート』、ノートに書くことは非常にシンプルです。
数日の実践、その記録、振り返り、次の期間にはどんな工夫をする? という流れで、読んだ時、ムーンプランナーの見開きページが自然と浮かびました。
やー、コラボすればいいのに、と思うくらいでした。

せっかくなので、満月の7月20日までの間、このできたことノートのメソッドを実際に試してみました。

毎日書く内容は、その日できたこと。
例えば「スッキリすること」「わくわくすること」「ハツラツヘルシー系」「時間」「習慣化」などで、具体的には
「片付けた」「ドリルを一冊終わらせた」(スッキリ)
「駅で階段を使った」「野菜を多めに食べた」(ハツラツ)
「納期を守った」「いつもより30分早く出社した」(時間)
と、本文に例がたくさん上げられています。

◎わたし的書き方ポイントとして
『できたこと』を書く。『良かったこと』『嬉しかったこと』ではない。
自分が実行したこと、身体を動かしてしたこと、AとB、自分の目的により近い方を選択すること、などが『できたこと』。初日に書いたのが「嬉しかったこと」で、あれー、これ違うよね、書き直し書き直しー、となりました。

これを一週間続けて、日曜日(日曜に限らず、いつでもいいのですが)に振り返る。その振り返りの内容もまたシンプルで、まず、その期間中にできたことを一つ、《直感》で選びます(て書きましたが、どれを選んでもダイジョウブだそうです)。

その選んだ出来事を掘り下げて書いていきます。
1)詳しい事実(具体的には何があったか)
日時、場所、誰と、何を どうしたのか。いわゆる 4W1H を書き出します。

2)原因の分析:なぜそれができたのか
以下本文より引用。

「レポートをうまく作成することができた」
・なぜうまく作成できたんだろう?
→とても良い参考資料を見てつくったからだ
    ↓
・なぜよい参考資料を見つけられたんだろう?
→同僚が紹介してくれたからだ
(略)
このように「なぜ?」を繰り返すと、「上手に作成できた理由」が見えてきます。

3)本音の感情:いま、素直にどう感じている?
できたことに対して、原因の分析をした結果に対して、どう感じているか、を書きます。
この時、無理に喜ばなくてもいいそうです。
できたことに対して腹立だしい、悲しい、苦しいのなら、そう書いてもいいんだそうです。

◎わたし的書き方ポイントとして
これ、すごくいいと思いました。自分の中に深く潜っていく感じがします。
いつもなら、流してしまう自分の意識を改めて見つめる、向き合っている実感が得られます。
それとオモシロいなあと思ったのが、本音の感情は、書いているうちに変化するということ。
手を動かして書いているその瞬間にも、どんどん変わっていきます。
自分の中に何かが流れて動いている、変化しているのがものすごく感じられます。

4)次なる行動:明日からどんな工夫をしてみる?
原因の分析や本音の感情から「もっとこうしてみよう」「これはやめよう、ここは続けてみよう」という改善点を書きます。

これをムーンプランナーで実践すると。
1)満月・新月の大きなスペースには、その期間の目標や計画を書く。これはいつものそのままの使い方。
2)日々のスペースに『できたこと』を書く(別の手帳に書いても、ふせん貼っていいかも。できたことの量による?)
3)半月に振り返る。これも別の手帳じゃないと書けないかなあ。ふせんでもいいかも。次の期間の改善点、工夫などは、満月・新月の大きなスペースに書き足してもいいし、下のメモ部分に書いてもいいんじゃないかと。
4)実践しつつ、改善点に留意しつつ、次の見開きページへ。

本当にこの『できたことノート』メソッド、ムーンプランナーのためにある、というか、そのくらいフォーマットがメソッドに合っていると思います。
空白が目立つのが気になる方は、ちょっと本を見てみて、実践されてみてはいかがでしょうかー。

あと、すごくいいなあと思ったのが、「できたこと」であれば、どんな小さなことでもいい、こと。
毎日「できたこと」を書いていて、例えば「早寝早起きできた」、これを振り返りの日に選んで、1)詳しい事実から順番に書いていると

「早寝早起きって、小学生の夏休みの目標かーー!」

とか

「こんなのできて当たり前じゃない?」

というセルフツッコミが入らなくもないのですが。(わたし、一回目の振り返りがほぼコレに近いもので、思いっきりセルフツッコミを入れました)
が、今まで夜更かしして寝坊していて、それを改めようとして「早寝早起き」を意識し、次の日、それができたなら「できたこと」として書いていいし、振り返りの日にそれを選んでいいんだそうです。
以下、引用。

中には、仕事や勉強、家事、育児などは「がんばるのが当たり前。そこをあえて見つめる必要があるの?」と考える方もいます。また「こんな小さなことをメモしても仕方ない」と思う方もいるでしょう。(略)
日々の「できたこと」を見つけていくことは、自分を「思い込み」から解き放つ準備のために必要だからです。毎日できたことをコツコツとメモしていくことで、自分を外から眺める感覚を自然と身につけることができるのです。
このように、自分を客観的に見て、プラスの評価をすることは、自分を心の底から認めることにつながり、自己肯定感を大きく上げることになります。それが揺るぎのない自信となり、前に進む力となるのです。

(『できたことノート』ここではカンタンに説明しています。本では、もっと書き方のコツや、考え方、さらに一歩踏み込んだ考え方、進め方などが詳しく書かれています。興味を持たれた方は、ぜひー)

もうひとつ、ものすごく実感したのが『時間の流れ』です。
振り返りの日に、1)具体的には 2)原因の分析… と書いていくと、1)は1)、2)は2)じゃなくて、それが一続きの流れに感じます。
書くのは、きちんと順番に1)から書いていくんですが、意識の流れとして、日々できたこと、それを順番に見てひとつを選んで、詳細を思い出し、その時に生まれた感情、本音を書き、その本音から、今度は次の期間への留意点を書く… すごく自然な流れに感じられ、この一連の振り返り作業は、とても心地良いです。

このできたことノートとムーンプランナー、わたし的には、ものすごく相性が良いようで、書いていてわくわくするコンビとなりました。次の新月が8月3日、獅子座の新月だそうです(ちなみにわたしも獅子座)、またごりごり書き込んで使っていこうと思います。またオモシロい展開になったら記事にしたいなあ。

おまけ■■■

物語売りは腕を下げ、なにかを差し出すかのように、わたしに向かって手を伸ばした。今夜の月を差し上げましょう、物語売りは言った。お望みどおりの話を差し上げます。あなたもなにか物語が聞きたいはずだ。

『レクイエム』タブッキ

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「事実は現実の中にある。幽霊を引っぱり出す必要はないよ」〜コナン=ドイルのコティングリー妖精事件

Posted on 02 5月 2016 by せら

ー。
先日、カーソン マッカラーズの『結婚式のメンバー』読みまして(村上春樹訳)。
なんていうのだろう、例えば、孤独とか空虚とか、そういうものが自分の中心にあるひとというのは、それは先天性なのかも知れない、と思いました。
育った環境ではなくて、親の影響ではなくて、えくぼがある、とか、くせ毛とか、自分ではどうにもならないところからきたものじゃないか、と。

それまでほとんど気にもとめなかったことが、彼女を傷つけるようになった。夕暮れの歩道から見える家々の明かり、横町から聞こえてくる知らない人の声。そんな明かりをじっと見つめ、声に耳を澄ませた。そして彼女の中にある何かを待ち受けた。しかし、明かりはそのうちに暗くなり、声は消えていった。彼女はなおも待ったが、そのまま何も起こらなかった。それでおしまい。自分は誰なのだろう、自分はこの世で何ものになろうとしているのだろう、なぜ自分は今ここにじっとたたずんでいるのだろう、明かりを眺めたり耳を澄ませたり、夜明けの空をじっと仰ぎ見たりしているのだろう。それもたった一人で。自分に唐突にそんなことを考えさせるものを、彼女は怖れた。彼女は怯えていた。そしてその胸の中にはわけのわからないこわばりがあった。

毎度のことながら『結婚式のメンバー』のブックレビューではないです。
『ホームズの生みの親 コナン=ドイルについて』について、です。
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「サーハビーに上がるエレベーターのボタンはいくつあるか知ってますか」(ホームズ原作の「階段が何段あるか知ってるかい」的な質問として)

Posted on 06 3月 2016 by せら

日、ガルシア=マルケスの『族長の秋』を読みまして。

子供たちの猩紅熱(しょうこうねつ)を治すために、太陽と星の光を赤く染めさせた。

もうもう、この一文に左眼を撃ち抜かれました。わたしにどうしろというんだガルシア=マルケス。
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五年目〜玉手箱に入っているもの

Posted on 24 1月 2016 by せら

2016年1月22日で、Notebookers.jp 5年目でした。
特に、こう、何かイベントや管理人さんからのコメントがあるワケでは【ない】ところが、Notebookers.jp 淡々としていて、いいなあ。
5年目もまた、たくさん得て、失って、孤独の輪郭を研ぎ澄ませて、それを綺麗だなあと見とれるような、そういう1年でありますように。

■ □ ■ □

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Happy Holiday! Notebookers! アドベント4週目☆☆多様性ばんざい☆サンタアシモフからの贈り物☆

Posted on 20 12月 2015 by せら

ニメデ、という木星の衛星があります。wikiから引用。

ガニメデ (Jupiter III Ganymede) は、木星の第3衛星。太陽系に存在する衛星の中では最も大きく、惑星である水星よりも大きい。比較的明るい衛星で、双眼鏡でも観察できる。

そして。

ガニメデは、1610年にガリレオ・ガリレイによって発見されており、そのためイオ、エウロパ、カリストとあわせてガリレオ衛星と呼ばれている。

ガリレオ先生の発見です。
そして、衛星をたくさん持ち、上記にもあるように、イオ、エウロパ、カリスト、ガニメデ、とあるこの名前なんですが。
星占いでは、木星は、ゼウス、ジュピターが司る星だそうで、そのためか、おそば近くにいる、この衛星の名前が、えー、歴代のゼウスのカノジョたちの名前だったりします。

イオ:ゼウスのカノジョのひとり。ゼウスの妻ヘラにいじめられて、エジプトまで逃げる。そして女神イシスとなる。
エウロパ:ゼウスのカノジョのひとり。ゼウスが牡牛に化けてエウロパに近づき、エウロパがその背中に乗るとギリシアその周辺を走りまくって、クレタ島へ連れていった。その走りまくったエリアをエウロパ(ヨーロッパ)と呼ぶようになったそうで。クレタ島、これで牛と縁があるのかなあ。この時、ゼウスが化けた白い牛が天にのぼり、牡牛座になったそうです。そしてエウロパは、ミノタウロスの(義理の)おばあさん。
カリスト:ゼウスのカノジョのひとり。やっぱりヘラ(アルテミス?)の怒りを買って、熊に変えられてしまう。そんでゼウスの子供を産み、すったもんだのあげく(雑な説明)、大熊、小熊として天にあげられ、おおぐま座、こぐま座となる。
ガニメデ:ゼウスに仕えていた酒杯係。水瓶座の水瓶を持っていたとも言われているそうで。トロイ王家出身の美少年。
(まったく本編とは関係ないのですが、わたしがギリシャ神話好きなので書いてみました)

■ □ ■ □ ■ □ ■ □

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アドベント第二週☆☆Date with a Notebookers Christmas book(半分Vr.)(WEB版)クリスマスの思い出

Posted on 07 12月 2015 by せら

で読んだのか、忘れたのですが、モノを考える時『枕の上、馬上、お手洗いの中』というような言葉があり(たぶん)。
枕の上というのは、いわゆるベッドの中。寝る前とか、起きてから、すぐにベッドから出ないで、うだうだしている時間のことだと思われます。お手洗いの中、は、言わずもがな。
そんで馬上、馬に乗ってゆられている時。これは、たぶん、今で言うと『歩いている時』ではないかなあ。
この、歩いている時の、考えが浮かぶ、思いつく、その力は、どこから来るのだろうなあと思います。
(そして今回も、この前フリは記事にまったく関係がない)
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Happy holiday! Notebookers! アドベント第一週☆Date with a Notebookers Christmas book(半分Vr.)(WEB版)オーギー・レンのクリスマスストーリー

Posted on 30 11月 2015 by せら

日の記事、初めてモレスキンを書いたときのことを憶えていますか。この記事での、最初に書いてみるリストのひとつ、タイの首都、バンコクの正式名称ですが。
wikiより

กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา มหาดิลกภพ นพรัตน์ราชธานีบุรีรมย์ อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน อมรพิมานอวตารสถิต สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์
クルンテープマハナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラアユッタヤー・マハーディロッカポップ・ノッパラッタラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーンアワターンサティット・サッカタットティヤウィサヌカムプラスィット

長すぎて国民も覚えられない。なので、最初の部分をとり、国民は『クルンテープ』と言っている。 タイ語は後置修飾が基本であるので、意味は後ろの節から訳し、以下のようになる。
イン神(インドラ、帝釈天)がウィッサヌカム神(ヴィシュヌカルマ神)に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、イン神の戦争のない平和な、イン神の不滅の宝石のような、偉大な天使の都。

だそうです。いいなあ、こういうのダイスキー!
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「お茶でもいかがとコニーの誘い。まあ結構よ、毒入りなのね、とメリキャット」〜物語の中のお茶

Posted on 06 9月 2015 by せら

「お茶でもいかがとコニーの誘い。まあ結構よ、毒入りなのね、とメリキャット」

関西は、まだ、日中が暑いです。いかがおスゴシでしょうか。
先日、ハングアウトのやりとりで「物語の中のお茶」について記事を書く〜云々、という話をしていまして。
(それで、最初に思い出したのが、今回のこのタイトルというのも物騒な話ですが)
コレは、シャーリィジャクソンの『ずっとお城で暮らしてる』から。
作中、殺人の容疑をかけられたコニーへの囃し歌です。
今回は、こういう、物語の中でのお茶の時間、お茶を淹れること、などを書こうと思います。
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世界の果てでも、多分わたしはお茶をしながら本を読んでノートブックを書いている番外編@座り心地は悪くても、それでもやっぱり、ソレは恩寵なのだ

Posted on 02 8月 2015 by せら

月です。お暑うございます。
映画見て、本を読んでノートブックをごりごり書いて、Notebookersな夏をエンジョイ… というか、この記事のタイトル通り、世界の涯でなくても、かつ、季節も問わず、ワタシがすることって同じなんだなあ、とシミジミしております。
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世界の果てでも、多分わたしはお茶をしながら本を読んでノートブックを書いている8@胸に押し当てたいほど愛しい物語(の、ある書斎)

Posted on 01 3月 2015 by せら

く冬を惜しんでおります、ブックレビュー8冊目。
毎回、タイトルだけが無駄に長いですが、えー、読んで頂けたら嬉しいです。

先日、Notebookers.jp 管理人タカヤさんのお題ツイートがありまして。

このお題、あんまり主旨に即していない記事になるかも知れませんが。

以前、Notebookersの本棚をテーマに、いくつかの記事があがりまして。
そのひとつ、タカヤさんの記事で『海底二万里』のネモ船長の書斎について書かれていました。
文学や芸術、技術の本、そして標本があり、政治と経済の本がない書斎、いいなあ、アコガレの書斎のひとつです。
以下引用『海底二万里』訳:江口清 集英社文庫版

そこは図書室だった。銅をはめこんだ黒檀の高い家具の、その広い棚には、同じように製本した本が、ぎっしり並んでいた。(中略)
「一万二〇〇〇冊ですよ、アロナックスさん。これがわたしを地上に結びつけている唯一の絆です。わたしのノーチラス号がはじめて海に沈んだ日に、世界はわたしにとって終わったのでした。その日、わたしは、最後の本、最後の雑誌、最後の新聞を買ったのです。そのとき以来、人類はもはや考えようともせず、書こうともしなくなったと、私は信じたいのです」(略)
わたしはネモ船長に礼を言って、書物の棚に近寄った。そこにはあらゆる国語によって書かれた、科学や道徳や文学の本が、たくさんあった。しかし、経済学の本は、一冊もなかった。それは、船内から厳重に追放されているらしかった。(略)
これらの本の中で、古今の大家の傑作が、まずわたしの目を引いた。つまり、人類が歴史の中でつくりだしたもっとも美しいもの、詩だとか、科学などで、ホメロスからヴィクトルユゴーまで、クセノフォンからミシュレまで、ラブレーからサンド夫人にまで及んでいた。しかし、特に科学が、この図書室の呼びものだった。機械学、弾道学、水路学、気象学、地理学、地質学等の書物が、博物学の書物に劣らず主要な場所を占めており、これで、これらが船長の主な研究の対象であることがわかった。

『海底二万里』どのシーンもそうなのですが、この図書室にしても、標本と美術品を置いている広間にしても、ほんっとーーにひとつひとつ克明に書かれていて、初めて読んだ時、「…見てきたの?」と思うほどで。
ネモ船長の書斎、もうひとつ、大きなポイントとしては、ここはもちろんノーチラス号の中です。
なので。
海の中、海底を動き回る、世界とは切り離された場所、に、ある書斎。

この世界から切り離されたネモ船長の書斎について読んだりすると、思い出す書斎、とゆーか、場所があります。
レイブラッドベリ『さよなら、コンスタンンス』から。登場人物のひとり、クラレンス ラティガンのコテージです。
今回は、この物語とラティガンのコテージについて書こうと思います。

Amazonより。内容紹介です。

内容(「BOOK」データベースより)
死者の名を刻む手帳。失踪した女優。連続する謎の死。隠棲する新聞蒐集家。闇に閉ざされた映画館の小部屋。嘆く神父。雨に沈む納骨堂。街の地下を吹きぬける雨の匂い。さまよう探偵小説作家。夜の抒情と都市の憂愁をこめて巨匠が贈る最新長篇小説。

内容(「MARC」データベースより)
死者と死すべき者の名が記された手帳を残して消えた女優コンスタンスを追って、探偵小説家「私」がロサンジェルスをさまよう幻想的探偵小説。ブラッドベリの最新長篇。探偵小説3部作の完結篇。

主人公が名無しの「私」、優しい、泣き虫の作家で、若い頃のブラッドベリがモデルだと言われています。
彼と、相方の刑事クラムリーが、失踪した女優コンスタンスを探すんですが、彼女の周りの人間が次々と不審な死をとげます。そのナゾを解く、んですが、えー、もう本当にブラッドベリ節の効いた、全編歌うような、流れるような文章で綴られています。

そのヒロイン、コンスタンスの最初の夫、クラレンス ラティガン。
ハリウッドのマウントロウという小山のコテージに住んでいる、元トロリーの運転手です。
彼が住むコテージには、四十年分とも五十年分とも推定される新聞が置かれていまして。

足を踏み入れたのは新聞の迷宮だった。ーーいや、地下墓所(カタコンベ)と言おうか。うずたかく積まれた古新聞の山のあいだをせまい通路がめぐっている。《ニューヨークタイムズ》《シカゴトリビューン》《シアトルニューズ》《デトロイトフリープレス》。左は五フィート、右は六フィートの高さにそびえ立ち、すり抜けようとするものなら雪崩におしつぶされそうだ。

「だれ?」私は呼びかけた。「どこにいるんですか」
「たいした迷路だろう!」ミイラの声がうれしそうに響いた。「俺が作ったんだ! 朝の号外から夜の最終版、競馬特報に日曜版のまんが、なんでもある。四十年分だぞ! 公刊に値しないニュースの博物館だ。そのまま進め! 左へまわりこんで。おれはこっちにいる!」

コテージいっぱいに積み上げられた新聞のすきまにあるベッドにいるのが、この迷宮のあるじ、ラティガンです。
彼が、あることをキッカケに新聞を集めるようになったのですが。

そのキッカケというのがコレです。

「あるとき、朝刊を捨て忘れたのがはじまりだった。じきに一週間分がたまり、そのうち《トリビューン》や《タイムズ》や《デイリーニューズ》がどんどんたまっていったよ。あんたの右側は一九三九年、左は一九四〇年だ。ひとつ後ろの山は四一年。みごとだろう?」

そして、

「日付を言ってみろ」
「一九三七年四月九日」口をついて出た。
「ジーン ハーロウ、享年二十六。死因は尿毒症。葬儀は翌日。フォレストローン墓地。葬儀ではネルソンエディとジャネットマクドナルドがデュエット」
「驚いたな!」私は叫んだ。
「ふん、なかなかのものだろう。もっと訊いてくれ」
「一九四二年五月三日」
「キャロルロンバード、飛行機事故で死去。夫クラークゲーブル悲嘆に暮れる」

ラティガンは(ネモ船長と同じく、潤沢な資金を背景に、自分から世界を切り離し)山頂のコテージで、積まれたその一紙一紙を、覚えるほど繰り返し読んで暮らしているのです。
(そして、世捨て人でありながら、多分、誰よりも世界の動きを知っていて、覚えている)

ですが。
ネモ船長の書斎とは正反対で、ラティガンのコテージには、いわゆる『本』は一冊もなく、芸術性、文学性はありません。
ただ、即時性、時事性、リアルタイムこそ命! の新聞が四十年分です。
主人公『私』の相方、刑事のクラムリーは、こう言っています。

「ばかばかしい! 印刷されたそばから死んでいく新聞記事なんかと心をかよわせようってのか」

印刷されて、すぐに紙くずになる新聞には未来がありません。
ラティガンの迷宮は、その『過去』の集積所です。
(ネモ船長の書斎も『終わってしまった世界の書斎』なので、このへんは似ているかも)

『過去のーー』というのが、この物語のナゾを解く重要なポイント、鍵になるのですが。
その歴史、積み上げられた重さと貴重さを『私』は、感じ取り、また、ラティガンとコンスタンスのために泣くのです(泣き虫だから)。

話の展開として、とあるコトが起こり、ラティガンのコテージが崩れ落ちます。
それをニュースで聞いた『私』とクラムリーは、コテージに向かうのですが…

山頂に着くと廃墟はなく、大量の新聞紙のピラミッドが、字が読めないにちがいない男の操作するブルドーザーで掻きまわされていた。自分が一九二九年の新聞王ハーストの叫びや三二年の《シカゴトリビューン》発行者マコーミックの爆発を刈り取っているとは気づきもしない。ルーズヴェルト、ヒトラー、ベイビーローズマリー、マリードレスラー、エイミーセンプルマクファーソン。ここで土に埋めてしまえば二度と帰らないのに。

「落ち着け!」
クラムリーは言った。
「でも、あれほど貴重なものなのに、あいつがしてることといったら!」
私は前のめりになって、二、三枚の紙面をつかんだ。
ある紙面ではルーズヴェルトが当選し、二枚目では死亡し、三枚目では再選を果たしている。(中略)
「まったく」私は愛しい紙面を胸に押しあてた。

初めてコレを読んだ時、ラティガンの言う『公刊に値しないニュース』という言葉がすごく印象的でして。
本とは違って、繰り返し読まれることのない新聞、そこに書かれたニュースを集めた場所。
公刊に値しない、トコロが(役に立たないと言われることの多い)ブンガクに似ているような気がしたのを覚えています。

例えば。
作者ブラッドベリは、ポーやヴェルヌ、ボーム、スティーブンソンなどの大ファンでして。
(ワタシも、この作家さんたちはとても好きなのですが)それでも、これらの本がおいてある書斎だったら、これほど印象に残るだろうか、と。
何て表現したらいいのかわからない情熱で新聞を蒐集しているラティガン、そして、その出来事を、それを記録したもの、新聞を愛しく思う『私』(≒ブラッドベリ)を、ワタシは好きなんだなあ。

それで。
この『さよなら、コンスタンス』読んだのはもう何年も前で、今回改めて読んだのですが。
ラティガンのコテージが崩れる場面なんですが、ワタシが(最初に)読んだのと違うような気が。
確か、崩れるところを『私』が万感の思いを込めて見つめているシーンがあった《 は ず 》なんですが。
どこを探しても、何度、ラティガンという文字を拾っても見つからないのです。

本を読んでいると、たまーに、こういうコトがありまして。
最初に読んだ時、忘れられないと思い、ココロに刻まれた《 は ず 》のシーンが、次に読んだ時、なかったりする。
(同じ作者の本を読んで、きっと、それで記憶がごちゃごちゃになっているんだろうなあ、とは思うのですが)

それで思いました。
ワタシの『理想の書斎』について。
広さはこのくらいで、大きな天窓があって、云々〜 というのは、あまりこだわらなくていいから。
こういった、ワタシが読んだ《 は ず 》なのに、失われたシーンがある本が置いている書斎がいい。
子供の頃に読んだ『リア王』、エドマンドが叫んだ、大人版をいくら読んでも見つからないあの台詞とか、この『さよなら、コンスタンス』で、『私』が見ていた迷宮の崩壊のシーンとか、同じくブラッドベリ作品で、いくら探しても、泣きたくなるほど見つからない、あのシーンとか。
ワタシの記憶の中にしかない、本がある、そういう書斎がいい。
そんで、その本棚の隅っこには、クローブを差したちょっとしなびたようなオレンジが置いてあったらいいな(それで(何とか)お題に即する)。

■おまけ〜ブラッドベリからのウィンク

「火の気を立てるなよ!」男は怒鳴った。
私の目の前で、五十年の歳月が大型ごみ容器にほうりこまれた。
「乾いた草と新聞紙、たちまち燃えあがるもの」私はふと考えた。「大変だ、どうしよう、もしもそんなことになったらーー」
「どんなことになるんだ」
「いつの日か、新聞や本が火を起こすのに使われるのでは?」(中略)
「うちの親父はストーブの石炭の下に新聞紙を突っこんで、マッチをすってたぞ」
「なるほど。では本はどうでしょう」
「本で火を起こす間抜けはいないだろう。待てよ、まさか百トン級の百科事典でも書くつもりか」
「いや、灯油のにおいがするヒーローの物語なら書くでしょうけど」

おまけ2■

あんたは永遠に生きるよ

「あんたは永遠に生きるよ」

■おまけ3

「ただでいい、持っていきなさい。この本を読んだ最後の人間は、恐らく、盲人イサーキウス二世だろう。いったいどうするつもりかね?」

(これまた、すばらしー本屋さんの台詞から)

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ワタシのものにならない物語を留めたいと思う〜デイリーダイアリー1冊書き終わりました。

Posted on 14 2月 2015 by せら

き終わったモレスキン デイリーダイアリーがあります。

2014年1月8日から9月13日まで(というか、最後の日付が書いてあるのが9月13日。ワタシはあんまり日付を正確には書き入れていないのです)8か月少しの間、使いました。
えー、2013年のデイリーダイアリーで、なので、1日1ページの仕様なので、ふつーのモレスキンラージより、たっぷり書ける、と思い、ふつーの雑記用ノートブックとして日付関係なく、書いていまして。

コレが。
なんとも、忘れられない一冊のノートブックになりました。
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Christmas Dictionary 2014

Posted on 06 11月 2014 by せら

リモレ、クリスマスモレスキンをご存知でしょうか。
Notebookers.jpにも記事があります。
コチラ>>クリスマス・モレスキン検索結果

「皆で、1冊の旅をするモレスキンのノートで、クリスマスブックを作る」がコンセプトで、このサイトの管理人タカヤさんが2011年から始めた企画です。
カフェや文具屋さんにモレスキンを置いて頂き、お客さんがそれを読んだり、書き込んだりして。
日本国内のみならず、イタリアのミラノ本社まで足を伸ばした、本当に『旅をするモレスキン』なのです。
これに、ちょこっとオマケのようにくっついているノートブックがあります。
Christmas Dictionaryと文字を切り貼りした表紙で、中身は文字通り、クリスマスに関するもの、ケーキ、サンタクロースのこと、プレゼントのこと、文学、映画などをABC順に書き込んでいます。
これは、2012年のモレコラ展で、クリスマスのことを調べてノートブックにあれこれ書き込んでいて、その時に「せっかくだから」と、ツイッターでフォロワーさんたちに「クリスマスと言えば、どんなことを思い出しますか」とお聞きして、その意見、ケーキから映画、小説までいろんなことを教えて頂き。
それをまとめたものです。

その2014年版を作ろうと思います。
ノートブックは、モレスキンのダイアリーのおまけ?薄いアドレス帳を使って、それに書いて行きたいと思います。
今回は音源を仕掛けてー、ポップアップ、飛び出すページも作り込んでー、と。より遊び色を強く。
皆様、えー、

『クリスマスと言えば、どんなことを思い出しますか』

子供のときの思い出、ケーキやクリスマスのごちそう、忘れられないプレゼント、デート、コイビトはサンタクロース? 雪、文学、映画、絵画、漫画、その他なんでも、教えて頂ければ、と思います。
ツイッターのアカウントをお持ちの方は、ハッシュタグ #xmas_Dictionary で呟いて頂ければ。
よろしくお願いします♪

Christmas Dictionary 2014

これから作りながら貼り足し貼り足す。Christmas Dictionary 2014

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物語の中のわんこ

Posted on 07 6月 2014 by せら

なたは犬派? 猫派ですか?

先日、ツイッターでは『犬と猫』で書こうとつぶやいたんですが、どうにも長くなるなあ、と思い、まずは『わんこ』で一本記事を書こう、と。
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物語の中の桜のはな

Posted on 01 4月 2014 by せら

月になりまして。
この季節は、一年中で一番、良くも悪くも淋しいなあと思う時期ですせらです。

この週末、図書館へ行ったところ、桜の花の本の紹介がありました。
(ワタシが利用する図書館は、毎月、こうしてテーマを決めて、本の紹介をしているのです)
桜の図鑑やエッセイ、写真集などが置いてあって、それをぱらぱらと見てきまして。
そーいや、桜をモチーフとして使っている物語とか、たくさんあったなあ、と思い出して。
そして繰り返しますが、ワタシはノートブックにこういうことばかり書いている。
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Happy Holiday! Notebookers! 〜アドベント4週目

Posted on 21 12月 2013 by せら

Happy Holiday! Notebookers!
明日、12月22日(日)、クリスマス、アドベント4週目です。

4週目は、実はもう1週目を書く前から、コレにしようと決めていました。
クリスマス! そしてワタシ! もうネタはひとつだろう!
ということで、『ナショナルストーリープロジェクト』ポールオースター編であります。
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世界の果てでも、多分わたしはお茶をしながら本を読んでノートブックを書いている6@番外編 Happy Hallow’s Eve! Notebookers!

Posted on 24 10月 2013 by せら

回の記事を、ハロウィンにしてはかなり早めに書いてしまったので、もう1本くらい書けたらいいなー、と思いまして。
ブラッドベリの作品もいいのですが、前回の記事で、ドルイド教から、冬至のサムハイン祭、ハロウィン、そんで『ダブリン市民』という作品に流れていって、ああ、これにもハロウィンのすばらしーエピソードがあったよ!と。
(多分だけど。Notebookers.jp内の記事で、最も長いタイトルじゃないかなあ、コレ)
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物語の中の図書館

Posted on 22 6月 2013 by せら

最近、図書館へ行かれましたか。
ワタシは、本を読むことも、本そのものも好きなので、よく図書館へ行っています。
本棚の間をうろうろしているだけで楽しい、ワタシにはそういう空間です。

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物語のそのウソホント。

Posted on 01 4月 2013 by せら

「はったりも才能の一つだよな。いい作り話をするためには、しかるべきボタンをひとつひとつ正しく押さなくちゃならん」
『オーギー・レンのクリスマスストーリー』
(どこまで好きなんだと聞かれたら、どこどこどこまでも好きだと言います)

せっかくのエイプリルフールなので。
物語で描かれたその嘘について、ちょっと書いてみようかな、と…
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世界の果てでも、多分わたしはお茶をしながら本を読んでノートブックを書いている4

Posted on 12 3月 2013 by せら

近、読む本読む本ほとんどが、非常に好みのものに当たっております。こういうイイ流れって嬉しい。

えー。
『幻影の書』(ポール・オースター 新潮社)を読みまして。その感想です。(ネタバレは白文字反転しております)
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世界の果てでも、多分わたしはお茶をしながら本を読んでノートブックを書いている3

Posted on 26 5月 2012 by せら

の感想@今回はコラージュではなく、文章で〜。
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