マクガフィン的な話 2

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今日の写真は、実家の廊下に飾ってあるポスターだ。背景の青空のコントラストと手前の静物の冷ややかなギャップが美しいと思う。このポスターは小さいころからかなりの影響を与えられたアイテムのひとつだ。で、写真とはまったく関係なく先日に続き、マクガフィン的な話。
このブログで過去に何度か触れた話なのだが、ビルの上のクレーンについて。

このごろ、暑い日々で、とっても青空も濃くなってきてよい感じだ。
青空を見上げながら歩いていると、いつも建築中のビルの上に鎮座する赤いカッコいいものが目に入る。ビル建築用のクレーンというやつだ。
何年も前からこのクレーンというものはどのようなタイミングで作られ、撤去されるのか僕の中ではまるで「イチコロ」って何の略なんだろう?とか、シズル感って何?という疑問と同じくらいマクガフィン的なものであった。

このクレーンについて考えてみて欲しい。
彼女は突然衝撃的にビルの上に登場し、突然のようにいつも消え去るのである。まるで銀幕に期待の新星として登場し、絶頂の中引退していく女優のようである。たとえば、建築中のビルを見かけたと思っていたら、突然気がつくと赤いクレーンはこれでもかと青空いっぱいに広がって、誇らしく空を占拠している。そして気がつくと、「別れは突然のように来るの」と言わんばかりに風と共に去る。

こういった彼女の出現について、僕は長年悩み続けた結果、「出現」については想像がついたので、書き留めておく。
考えてみたところ、鉄骨の土台を作成している段階で彼女はすでに中央にステージの中心に鎮座しているという説だ。つまり鉄骨が完成するにしたがって徐々に彼女は上に押し上げられていく方式である。

しかし、僕の中では彼女の「撤去」が問題であった。たとえば突然消えた感じがするのは、深夜皆が寝静まった後ビルの屋上で彼女は解体され、静かに恐ろしく厳粛に誰にも知られず消えていくのではないかと思い始めた。儀式的に、彼女は地上へ導かれていくのではないだろうか。そう、葬儀のように・・・。それはまるでゾロアスター教の鳥葬を連想させる。
この葬儀という考え方は悪くないと思う。たとえば、あなたは家の中で目覚まし時計が壊れたらどうします?よく晴れた夏の日であれば、ぜひとも目覚まし時計の葬儀を行ってみるのもよいかと思います。
さて、クレーンの葬儀については、「初夜を過ごし眠ったカップルの次の日の朝のベッドの中で嗅ぐ相手の口臭」のようにそれは業界(?)の中ではかなり秘密として守られておりそう簡単に情報はリークされないのであった。どのようなシチュエーションでどのように彼女は姿を消すのか。

しかし、本日人に話してみたところ解決のヒントをつかんだ。
「あのビルを建築するクレーンは一つ一つパーツから組み立てられている」という情報を得たのだ。なるほど、つまりビルが完成すると皆でバラバラにして持ち去るという説は間違いないようである。彼女の解体は、悲しい光景ではなく、むしろ葬儀的な要素は何もないらしい。そういった情報を元に考えた結果、ビル完成も関係しているのでどちらかというと祝宴的な要素が強いのではないかと考える。

流れとして以下のような感じだ。

1. ビル完成!

2. 屋上でビールが振舞われる

3. おめでたい雰囲気の中、ビルの上のクレーンをバラバラにする

4. 皆で乾杯 自分達の仕事をねぎらう
  「あの壁の塗り方いいでしょう?あそこ俺やったんですよ親方!」
  「ほう、やるなアキラ」

5. さて、宴もたけなわ。
  皆でバラバラにしたクレーンの部品を入れたダンボール箱を持ってエレベーターで降りる。各自記念品として家に持ち帰る。

6. 時は流れる。after 12 years

7. 「パパー、たんすの上にある この鉄骨って何なのー?」

8. 「はっはっは、パパね、昔若かった頃あのおっきいビルを建てたことがあるんだよ、そのときの記念品さアケミ。お父さん壁の塗り方で親方に褒めてもらえたんだ。アケミも大きくなったらビル建てるかい?」

9. 「うん、お父さんビルたてるー!」

10. 「あ、そうそう、クラスのみんなには言っちゃダメだぞ。この記念品っていうのはいつの時代でも秘密なんだアケミ。どこの部品かはヒ・ミ・ツだぞ」

11. 「ずるーいパパー、教えてよー」

12. 「はっはっは、ママご飯はまだかーい?」

この1連の作業は、世間一般的には公開されていないため深夜にこっそりと行われるのであった。さて、ここまで書いて飽きたので寝ます。おやすみなさい。

タカヤ

ヒッピー/LAMY・モレスキン・トラベラーズノート好き/そしてアナログゲーマー

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